シグレ班、ダンジョン攻略
私の班は始まりの街付近にあるダンジョンにやってきていた。
始まりの街の近くにあるにしては高ランクのダンジョンで、始めたての時にこのダンジョンに入ったら秒で負けたという話もよくあるくらいには強いらしい。
だがしかし、今は夏休みの思い出にすり替わっているので難しさは多少は和らいでいるだろう。
「ククク……。久しぶりだね。ここも」
「来たことあるんだ」
「一度だけ、ね。マホカが行こうと言い出したのさ」
「あんときはひどかったよな」
オーツが思い出したかのように笑う。
「めちゃくちゃ強い敵が出てさ、アレスタとかやられちまったのよ。ハムレットとウルフがいったん退こうつったんだけどな、俺の悪い癖とマホカのあきらめの悪さから全滅した」
「君の悪癖には困っているよ」
悪癖?
「俺は勝ち目のねえ敵でも一抹の希望にかけて戦ってんだよ。もしも勝てたら、なんてものすっごくゾクゾクするだろ? 少しでも勝てる未来があるならそれに賭けなきゃギャンブラーじゃねえよな」
と、嬉しそうに語るオーツ。
オーツは生粋のギャンブラーのようだった。少しでも勝てるのならあきらめずに戦うパターンか。バカといえばいいのか、それともかっこいいと称賛すればいいのか。
「っと、敵が来るようだよ。索敵スキルに引っかかった」
「っしゃ、やるとしようぜ」
と、オーツはメイスを取り出した。
杖でもありハンマーでもあるメイス。一応は打撃武器だ。私も弓を構え、敵を待っていると、スイカ頭の男、スイカマンとハサミが巨大化しているカニ、ビッグクラブという魔物だった。海のほうに生息している魔物だ。
スイカマンは懐からスイカを取り出すと、こちらめがけて投げつける。
それをかわし、オーツはスイカマンにメイスを振り下ろした。私もビッグクラブめがけて矢を放つ。
「スイカ割りは夏のだいご味だぜ!」
「カニ釣り……。夏のだいご味なのか?」
ビッグクラブとスイカマンは一撃で沈んだ。
「ふいー。スイカマンは見慣れたから手慣れたもんだぜ」
「さすがだよ。さ、先を急ぐとしよう」
そうだな。時間も惜しいし。
私はメダルを回収する。今集まっているポイントは3500ポイント。結構集まっている。オーツたちもものすごく集まっているといっていたな。
「オーツって今どれくらいポイント持ってる?」
「俺が持ってるポイントは2000くらいだぜ。マホカも2000とか言っていたな」
「となると、4000と3500足して……7500か。あと5900必要だな」
半分は超えたらしい。
「あともう少しだな……。っと、その前に。お前らに聞きたいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「イベントに興味ないっていうのは、本当なの?」
私はそう問いかけた。
信用できればまだいいんだけれどな。会ったばかりだし、イベントに興味ないってのは少し疑問がある。だからこそ尋ねたのだが。
「愚問だね……。私は本当に興味ないよ。進化なんてしてもしなくても一緒だからね」
「俺も別に興味ねえよ。ギャンブル性もねえしな。イベントには面白そうだから参加したかっただけだぜ」
「ならいいんだけど。引き換えの時に裏切られたらたまったものじゃないからね」
「疑心暗鬼だね。どうしてそこまで疑うのかな」
「私の性格ってだけ」
「信じられてなかったのか。俺らじゃねえと悲しまれていたな」
「悲しませたくなかったから君たちに聞いたんだよ」
マホカとか、泣きそうだしね。




