広場での騒ぎ事
ウルフの圧倒っぷりはちょっとすごかった。
というのも、戦いが超激しく、そして、すごい上手だった。武闘家を職業にしている彼女は拳だけで戦っていたのだが、削れ具合が私の比じゃなく、巨大なファンファンがそのまま倒せてしまっていた。
私もなるべく援護はしていたが。上手だといってもたまに被弾しそうなときもあったから。
「っし、楽勝!」
「つ、疲れた……」
私はメダルを回収する。
「メダル、三つでいいか?」
「いらねえよ。あたしもイベントには興味ねーし。あたしのグループ全員そうだぜ」
と、彼女はそういって拒否した。
珍しいやつもいるな。イベントに興味ない、か。割とそそられる景品ばかりだとは思うが。それでも興味ないとはな……。
「じゃ、ありがたくもらうよ。ありがとな」
「気にすんなよ。困ったときはお互い様だろ? というわけであたしが困ってたらあたしを助けろよな。あたしは慈善事業じゃねえし」
「わかってる」
もちろん助けられたままでいたくはない。
マホカのいるグループには今回助けられてばかりだな……。マホカとの出会いがこの縁を生んだんだろう。マホカと出会ったこと、それ自体がこの幸運に繋がっているのかもしれないな。
「っし、じゃ、ほかのファンファンってやつも狩るかぁ? さっきのようなバカでかいやつじゃねえんだろ?」
「そうだよ。さっきのはボス個体だったから」
「ボスか。道理で手ごわかったわけだぜ。っし、じゃ、二人でまず狩ろうぜ!」
「……の前に、ちょっとポーションとかを買っておきたいんだけどいい?」
「そうか。事前準備は大事だもんな。あたしもついてくぜ」
といって、私は王都に舞い戻った。
道具屋でポーションなどを多数購入し、自分のMPも回復しておく。電脳アバターだからこそ徹夜は割と楽なのだが、人間寝ないとやはりどこか集中力が欠如するものだ。
私たちは道具屋を出ると、なんだか騒ぎが起こっている。
「なんだぁ?」
と、ウルフがそちらのほうを向くと。
なにやらプレイヤー同士のバトルが起きているようだった。
「テメェ……マジ死ねよ!」
と、怒っている男が女の子に向けて剣を振り下ろす。
「わりぃ、あれうちのグループのやつだ……」
「……じゃあ止めないといけないじゃん」
「アレに関しては百パーうちのが悪い」
そう断言していいのか?
私は見ていると、その女の子は口を開く。
「嫌だねぇ。ちょっと煽っただけじゃないか。そんなにムキになるなよお馬鹿さん」
「おちょくりやがって!」
と、剣を振り下ろす。
女の子はその身で受ける。
「ふむ、ちょっとダメージを受けたが、まぁこんなものだろう。次はこちらから……」
「何してる馬鹿!」
と、後ろからウルフがぶんなぐっていた。
私もその男の前に入る。男は私の前で剣を止めた。
「し、シグレさん? 退いてくださいよ」
「あ、私のこと知ってるんだ? じゃあ、私に任せて剣を収めなよ。PKしてもいいことないぞ」
「ですが……」
「PKしたらそれ相応の報いがある。PKはなるべくしないことに限る」
「……わかった」
と、剣を収めたのだった。
「ちょっとこいアレスタ! てめえ、何度騒ぎを起こせば気が済むんだ!」
と、元凶の女の子はウルフが連れて行っていた。




