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チンチロ

 夜が明けた。太陽の陽射しが私たちを包み込む。

 朝になり、カブトムシたちは地中に潜っていった。そして、セミが飛来してくる。


「ふいー。疲れますねー! 私の拠点で休憩していきませんか?」

「拠点で?」

「そろそろ私のメンバーもログインしてる頃でしょうしね! ね!」


 ということで、私はマホカのグループの拠点に行くこととなった。

 マホカは王都に拠点を構えているらしく、マホカはたでーまー!と大きな声を張り上げて拠点の扉を開いていた。


「ふふ、帰ったかマホカよ……」

「ん?」


 と、テーブルに座っているスカジャン姿の女の子の前にはお椀が置かれており、その横にはサイコロが置いてあった。

 もしかしてこれって。


「チンチロ?」

「やるか?」

「やる」


 私はその女の前に座る。


「ふふ、まあやる前に自己紹介といこうじゃねえか……。俺はオーツ。ギャンブラーさ……」

「シグレ。よろしく」

「シグレ。あんたの噂はこの耳でよく聞いてるぜェ」


 まあ有名だからな。


「どっちが親?」

「俺でいいだろ。マホカ、てめえもやるか?」

「やるー!」


 ということで、私はチンチロリンをすることになった。

 チンチロリンのルールは至って簡単で、サイコロをお椀に投げるだけだ。役というものがあり、四、五、六の目が出たらシゴロ、ゾロ目のアラシ、一、二、三のヒフミ。

 シゴロ、アラシは無条件の勝ち、ヒフミは無条件の負け。


 あとは五、五、四と出た場合、役は四となり、親より低かった場合は敗北。

 ションベンと呼ばれるものには気をつけなくてはな。

 ションベンはサイコロがお椀の外から出てしまうこと。無条件の負け。


「よし、じゃ、まずは金を賭けようじゃねえか。俺は手堅く1万ブロンだ」

「私も!」

「じゃ、ま、手始めに1万かな」


 私は1万ブロンを机の上に置く。

 そして、オーツはお椀にサイコロを投げ入れた。出目は四。また一回投げると、出目は六。そして、この場合無条件で親の勝ちとなる。


「っし、じゃ、またやるぜ!」


 オーツは再び、サイコロを投げた。

 最終的に五の目で勝負することになり、最初はマホカからサイコロを振る。すると、サイコロの一つが外に出てしまった。


「マホカ、ションベンー!」

「えっ!? すればいいの!?」

「そういう言葉があるんだよ。じゃ、私が振るか」


 私は三つのサイコロを手で振って、お椀の中に入れる。

 サイコロがお椀の中を転がる。そして、出た目は。


「っしゃあ! ピンゾロ! 十倍付か!?」

「マジかよテメェ! い、イカサマは使ってねーだろーな!?」

「使ってないっての! 金は払えよ!」

「ちっくしょう……」


 付けた金額の十倍。10万ブロンが親のオーツから支払われる。

 儲かるねぇ。


「まだやる?」

「いや、いい! テメェとやるのは嫌だぜ!」

「はっはっはっ」


 一発でピンゾロ出すのは気持ちがいい。

 私の豪運は未だ健在なり、と。私は気持ちよく笑っていると。


「それにしてもあんた噂と違えんだな」

「噂?」

「心なき天使ってやつだよ。全然笑うじゃねえか」

「それ周りが勝手に言ってるだけだから」

「だろうな。とりあえず、マホカが連れてきた客人だろ? 歓迎するぜ。俺以外はまだログインしてねーけどよ」

「……おい。マホカ。お前メンバー全然ログインしてねえじゃん」

「一人はしてた!」


 いや、まあ確かにしてたけど。

 

「んで? お前らは何してたんだよ」


 と、オーツが問いかけてきたのだった。











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