布教
私はどちらかといえばネガティブな性格だ。
これはもう自覚してあり、ミノルたちを妬んだり、今の状況に嘆くだけしかしなかったり。自分の悪いところ、粗を探せばいくらでも出てくる。
こういう性格になったのは誰のせいというわけでもない。自分のせいだ。
「さっさと集めましょー! 夜が狩り時ですよー! 大体のプレイヤーは生身ですからねー! 人間跳寝なくちゃいけませんからねー!」
「そうだな……」
ネガティブになってる暇はないか。
私は森の中を歩きだす。ギロチンクワガタと再び出くわし、私は矢を放つ。メダルは銅メダルを二個ドロップしたのだった。
私は一個手渡そうとすると。
「私いらないので全部もらっていいですよっ!」
「……いらないの?」
「進化とかに興味ないですし、欲しい景品がそこまでないですからねー。魔法少女に似合うアクセとかあれば引き換えてましたけどね!」
「人間の上位種にはなりたくないと?」
「当たり前田のクラッカーですよ! 魔法少女は人間がなるから面白いのであって! 超人みたいな人間が魔法少女になったって力ある超人がさらにパワーを手に入れるってのは好きじゃないんです! 人間が魔法少女になるのがいいんです!」
そういうものなのか?
変なこだわりがあるんだな。
「他の異世界アニメで例えますと、異世界でチートで無双してた男が死んで、神から再びチートを与えられるようなものですよ!? そんなのクソゲー通り越して虚無ゲーじゃないですか!」
「わかるようなわからないような……」
魔法少女=チートって認識でいいのか?
「強い人に与えたらさらに強くなるだけなんです! 魔法少女ってのは虚弱な人間が超人並みの力や能力を手にして強さを補完してるんです! 鬼に金棒なんていらないんです!」
魔法少女の力説が止まらない。
だがたしかに、納得できるものもある。魔法少女は虚弱な人間に与えられる強さというのは納得ができる。
それでしか抗うことができないので、魔法少女になるしかないのだろうか。
「現代の文明は科学で、魔法はなんでもできるって認識じゃないですかっ! そりゃ今の人間には魔法なんて言葉は夢のまた夢。非科学的なものであり、信用性に欠ける現象です。それを使いこなせるんです! 初見殺しが躱せますか? 力学や自然の法則に逆らうようなものに勝てますか!?」
「勝てないよな……」
「それです! 力を虚弱な人間が手に入れるってのが最高に面白いんですよ! 仲間に裏切られ、敵にやられても何度でも立ち上がる……。あー、かっこいいですよねぇ魔法少女ウルルン!」
「魔法少女ウルルン?」
「知らないんですか!? あの国民的人気魔法少女アニメ!」
知らないな……。
「ついこの間第三期が発表されたばかりだというのにっ! ウルルンは知名度もあるはずなのに!」
「そういうのにはちょっと疎いからな……」
「国民的ブームにもなったのに!」
「まじで?」
「こういうキャラです!」
と、地面にイラストを描き始めた。
木の棒で描いているのだが、こいつ無駄に絵が上手い。金髪で背中くらいまであるロングヘアの女の子が主人公という。
これ……。
「たしかに見たな。ショッピングモールとかでコラボした服が売られていたような……」
「それです! 知ってるじゃないですかー」
「いや……アニメの名前は初めて聞いた」
そうか。そうなのか。
私はもうちょっと現実を勉強しないとな。
「私が不勉強だったよ。魔法少女ウルルンね。見てみる」
「ぜひ!」
と、約束を交わした。
マホカは布教成功という言葉をつぶやいていた。




