オオツノゾウヘラクレス ③
それからというもの、割とダメージを与えてはいるのだが、倒れるそぶりはなかった。
夜も更けてくる。リンドウもログインできるようにはとっくになっている。だがしかし、リンドウが来る気配はない。
そりゃ地面を抉ってぶん投げてくる奴とは戦いたくないだろう。
「もう夜の三時か……。タフだなこいつ……」
私は、もうあきらめることにした。
次の一発で倒れなければ……。潔く死ぬとしようか。集中力はそう長くは続くわけがない。私は矢を構え、オオツノゾウヘラクレスの頭の付け根めがけて発射。
オオツノゾウヘラクレスの急所に当たり、ひるんだ。だが、倒れるそぶりはない。
「なら、特攻するしかないかな」
私は弓をしまう。
そして、空に飛び上がった。はるか上空でオオツノゾウヘラクレスを見下ろす。オオツノゾウヘラクレスもこちらめがけて飛び上がってきた。
空中戦で決着を付けようとする魂胆だろうか。だがしかし、今からするのは捨て身の特攻だ。私の中で最も攻撃力が高い大技。
私は勢いよく落ちていく。魔法陣を蹴り、爆発で加速。
私の体が音速を超える。再び魔法陣を蹴り加速。私の体がオオツノゾウヘラクレスの体に当たる。オオツノゾウヘラクレスはさすがに耐えられなかったのか、私と共に音速で落ちていく。
「倒すためなら身を焦がしてやるよ! 相打ちといこうじゃないか!」
「ギ……」
じたばたともがくオオツノゾウヘラクレス。
だがしかし、超高速で落下していく私からは逃れるのは至難の業だ。地面が近づいてくる。私はそのままオオツノゾウヘラクレスと共に、地面に突っ込んだ。
オオツノゾウヘラクレスは、ぴく、ぴくと足を動かし、そして、消えていく。倒せたようだった。金のメダルが一気に20個落ちる。400ポイント……。ま、まぁ稼げた、な。だがしかし、拾う気力はなかった。
私はそのまま倒れ……。
「オラァ!」
と、私めがけて瓶が飛んでくる。私の頭に当たると、0だった体力が回復し始めたのだった。
「あ、あれ?」
「ふぃー。危なかったねー」
と、声の方向を見る。
ツインテールの女の子が立っていた。キラキラのステッキのような杖を持っており、衣装は魔法少女のようなファンシーさがあった。
「えっと、ありがとう」
「いえいえ! すごいもの見せてもらったから!」
「すごくはないと思うけど……。あ、私シグレです。本当にありがとう」
「あ、私マホカ! 職業は魔法少女でーす☆」
ま、魔法少女……?
「魔法少女って職業にあるの?」
「ないよん! ただー、私は魔法少女に憧れているのです! なのでゲームで魔法少女を名乗ることにしたのです!」
「…………」
「ささ、メダルを拾ったほうがいいと思いますよ! 私はとらないので! さぁ!」
というので、メダルをとりあえず回収。
「魔法少女に天使、ファンタジックで素敵ですねぇ!」
「いや、ジャンルが違うだろ」
天使は神話、魔法少女は現代SFみたいな感じだろ。
「ふいー。なんかテンション上がってきましたねぇ! この調子でもっと戦いましょう! あ、フレンド登録します?」
「……ま、するか」
「わーいわーい、天使様とフレンドになったー!」
「天使様はやめろ」
「天使ちゃん?」
「そこまで可愛くねえよ」
ちゃん付けされるようなほど可愛くない。
私はマホカとフレンドになった。ちょっとうるさそうだが、蘇生してもらった借りもあるし、借りは返さないとな。
魔法少女マホカ☆マギカ




