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アイツらのために

 ミーンミンセミを狙ったのは悪すぎた。

 時間は夜になる。モンスター交代の時間は七時からということらしく、七時になると見張っていたミーンミンセミが地中に潜り、オオツノカブトとギロチンクワガタが出て来た。


 オオツノカブトはヘラクレスオオカブトのような立派なツノを携えた大型のカブトムシ。怪力そう。

 ギロチンクワガタは、そのハサミがギロチンのように鋭い。攻撃性高そう。


「セミはちとキツイがカブトムシなら行けるだろ」


 私はとりあえずカブトムシに攻撃してみる。

 カブトムシの装甲は硬く、矢が突き刺さらなかった。カブトムシはこちらに振り返ると、羽を広げてこちら目掛けてやってきたのだった。


 私も羽を広げる。

 普通の攻撃は効かないか。ならば私は上空に飛び上がったのだった。

 そして身を焦す流れ星を使用した。私の落ちる速度は速くなっていく。そして、体がカブトムシにぶつかり、共に地面に落ちたのだった。


 自身の体力を犠牲にする大技なのでそれ相応の威力がある。私の体力もごっそりもっていかれ、瀕死寸前だった。死ななかっただけでもいい方だと思うが。

 カブトムシもタダでは済まなかったようで、そのまま動かなくなり消えていく。


「ただ、こうでもしないとダメージ与えられないのはキツイな……。夜の魔物は昼より強いのか?」


 わからない。カブトムシと戦っただけなのだがもう満身創痍。カブトムシの防御高すぎて話にならない。

 レベルはこれでも60近くあるのに全くダメージ入ってなかったぜ?


「夜は基本的に効率悪いのが多いのかもな……」


 そう思いながらアイテムからポーションを取り出して使用する。

 こんな死ぬ思いするなら諦めて翌日を待つしかないな。


「今日のところは……と」

「あ、シグレさん」


 駆け寄ってきたのはリンドウ。

 

「何してるんですか?」

「カブトムシ狩り……と思ったけどね……」

「つ、強いんですか?」

「防御が以上にあるって感じ」


 そういうと、リンドウはちょっと嫌な顔をしていた。


「うへぇ、防御高い系魔物ですか」

「厄介でしょ?」

「そうですね……。僕はあくまで生産職ですし火力に乏しいというか……」

「私はある方だとは思ってるけど……。一発撃って本当にそこまでダメージが入らなかった」


 弓は火力に欠けるが、心亡き天使の効果、煌雨の弓の素の攻撃力。割と火力は出るのに。

 私はまだまだだ……。だと、その前に。


「あー、リンドウ。頼みたいことがあるんだけどさ」

「頼みたいこと?」

「この夏休みのポイント景品で完全体への輝石ってあるじゃん?」

「ああ、なんなんだろうねこれ。見たことない鉱石だけど……」

「私はそれはこの煌雨の弓を完全体にするための素材だと思ってるんだよね」

「……あっ、それまだ未完成品なんだっけ」

「そう。だから終わったら、ちょっと試してみてくれないかなって思ってさ。もちろんその分の金は払うし」

「いいですよ。たくさん助けてもらってますし。値段はフレンド価格ってことで」


 うむ。やっぱ持つべきものはフレンドだな。


「ま、そのためには死に物狂いでポイント集めなくちゃいけないんだけど……。リンドウはなにか欲しいものあるの?」

「僕はやっぱり進化の秘宝でしょうか。進化したことないですし……」


 やっぱりか。

 まあ、流石にそれ狙いか。私はみんなそうなんだな……なんて思っていると、ふとアイツらの顔が思い浮かぶ。

 アイツら……いつまで入院するんだろうか。

 やれなかったらアイツら……悲しむかな。


「…………」

「どうしたんですか?」

「いや……」


 進化の秘宝……アイツらの分も……。

 だがしかし、それだと手間が……。なにせそこまで集めるのは困難を極める。四人分集めるとして8000ポイント……。そして私が欲しがっている完全体への輝石は最低でも三つ欲しいから1800×3で5400。

 13400ポイント集めなくちゃいけない。


 今あるポイントは900ポイント。


 半分にも届いていない……。


「ま、しょうがないか……」


 私はアイツらの分も集めてやろう。










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