カモン!夏休み
村での歓待、マスタークエストの達成。
いろんなことがあった。私は満足しながら空を飛んでいると、運営からのメッセージが届いたのだった。
内容はというと、夏休み応援企画ということで、夏休み中にしか出会えない特別な魔物を各地に配置しましたということ、その魔物から確定で一つドロップする「夏休みの思い出」というものを集めたら景品と交換できるらしい。
そして、その思い出交換リストを見ると、一番下には進化の秘宝と書かれたものがあった。
これは進化になにか関係があるのか? 分からないが、大体の人はこれを欲しそうではある。
正直私は興味はないが……。
「でも、気になる商品もちらほらあるな」
進化の秘宝のちょうど上に何か気になるものがある。
完全体への稀石というもの。これはもしかすると煌雨の矢を完全体にするために必要なモノじゃなかろうか。
「へぇ。今日の午後十二時からか……」
地上の方を見ると、小学生だと思われるやつや、中学生っぽい子もそのお知らせを見て進化してーと意気込んでいた。
元気だな。私は進化したので余裕の笑いを浮かべる。私って性格悪い。
まあ、私の運の良さはここでも多分健在だろうからな……。
確定で一つ、ということは、一つ以上ドロップすることもあるってわけだ。確定で落としてくれる辺りは優しいな。
クソゲーとかそういうのに分類されると、確定で落とすことはないからな……。
めちゃめちゃレアな素材で高ポイントが設定されてるくせにそのポイントとなるものが100%でドロップしないんだよな。
で、そういうゲームって大体課金してポイント買う。
「ま、どこにでも出没するってのも嬉しいポイントだな」
これもクソゲーとかであると思うんだが、たまーにだけどこういう魔物。出没する地域が限られていて、その狩場に人が密集して狩れないというのもあるんだよ。キャラのモチーフとかを重要視しすぎるとこうなる。
そして、下にスクロールしていくと、その夏休みの思い出を落とす魔物のリストがあった。
海や水辺系にははさみが巨大化しているカニや浮き輪揺蕩う亡霊、浜辺にはスイカマンというスイカの頭をした男の姿をした魔物。
平原の昼間にはファンファンという扇風機をつけたパンダの魔物。
平原の夜には爆裂花火丸という花火玉の頭をした魔物、そしてじぞー様という石像。
森の方には昼間にはミーンミンセミ。夜にはオオツノカブト、ギロチンクワガタという魔物が出るのだという。
どれも夏休みの思い出だな。
浮き輪で海に浮かんだり、カニ釣りしたり、砂浜でスイカ割り。
扇風機でアーと声を出すこと、花火、お盆。
蝉の煩さ、カブトムシ採り。どれも夏の思い出足りえるものだ。どれも私はやったことないし見たこともないけど。
「…………これ全部やれるのか」
ちょっとワクワクしてる。
小さい頃は勉強漬けで、親の期待に応えるために必死こいてやって失望されての繰り返しだったからこういうことって聞いたことあれどやったことはない。
まあ、金持ち学校だからこういうことはせず、○○へ行きましたとかいう旅行系が多いが。
「私も夏休み満喫しよう……」
私だってまだ子どもなのだ。
ミノルとか私をよく大人だとかいうがそんなことはない。ブラックコーヒーを飲める人は大人とは限らないんだ。
「夏休み満喫しなきゃ損だろこれはな……。クックックッ……」
思わず不気味な笑みが浮かぶ。
「カモン、夏休み! 私たちの夏休みはこれからだ!」
テンション高まって来た。
※投稿されている日は冬休みです。




