マスタークエスト、達成
天使ミカエルは村人たちに歓待されていた。
女神アルテノス様の使いというのならばそれは当然信仰心が高い人はもてはやすだろう。ミカエルも悪い気はしていないのか、出された食べ物を食べまくっている。
私も一応は食べてはいるのだが。食いっぷりはミカエルのほうがすごい。
「ん、これ自然薯ですか?」
「んだ。とろろっていうんですべ。とってきた自然薯をすりおろしてだなぁ」
「ねばねばだーー! あははっ!」
私は自然薯がたっぷりかけられたとろろご飯を口の中にかっこむ。
出汁と塩で味付けされたとろろは素朴ながらも美味しかった。生きていた時、初めて隣の人からもらって、自分で擦って出汁を混ぜて醤油を垂らして食べたのは美味かったなぁ。その時から自分一人でもなんとでもなるものだと、甘ったれたお嬢様考えから抜け出せた気がする。
うんうん。美味い。
すんなりと口の中に入っていくとろろご飯は一番好きかもしれないな。
「シグレすごい食べっぷりーーー! 私も負けてられないねーーーー!」
「ふぅ……」
とろろご飯を食べ終わり、ちょっと満足。
とろろご飯でだいぶ満足したので、あとはミカエルの食べっぷりを視るだけになっていた。ミカエルは割と大飯ぐらいなようで、鳥の丸焼きなどに手を伸ばしては一瞬でたいらげていた。
そして、卓上の料理がなくなったところで満足したのか、ごちそうさまと満足げに言っていた。
「あ、そうだ。シグレ! アルテノス様が呼んでるって! それを伝えに来たの!」
「……」
「よし、じゃ、今から私と行こーーーー!」
と、私の手を握り、どこかに転移させられたのだった。
目の前には女神アルテノス様が立っている。アルテノス様は無言でミカエルに近づき、頭にチョップを食らわせていた。
「ぎゃふっ」
「誰がパーティに参加してこいっていいました」
「いや、参加したくなりますっしょ?」
「あなただけずるいんですよ」
さすがミカエルとうぇーい仲間って言ったぐらいの女神さまだ。嫉妬してるぞミカエルに……。
「ともかく、あなたの最近の活躍は聞いてますよ。マスタークエスト合格おめでとうございます」
「えっ」
まだ百もクリアしてないけど。
私がそう思っていると、アルテノス様はふふっと笑う。
「王都にはびこった感染症……。人々の願いはたくさんありました。早く解決してほしいという願いなど。それをすべて叶えた功労者ですからね」
「あー」
あれも加算されるのか。積極的に動いておいてよかったな。
「ということで、褒美として新たな天使の技能を授けましょう」
《スキル:清廉なる天使 を取得しました》
というアナウンスが聞こえる。
効果は状態異常や悪い効果にかからなくなるという効果。敵の攻撃で麻痺や拘束状態、毒状態にも絶対ならないらしい。
これはスキルを無視するスキルでも無効化できないスキルだということだった。
「よし、じゃ、次はここでパーティしましょうか」
「うぇーい! アルテノス様それ待ってたーーーーー!」
「他の天使も呼びましょう」
「あ、私はこれで……」
「行っちゃうのですか?」
「ちょっと用事があるもので……」
「……わかりました。では、送りましょう」
と、突然また視界が変わる。
先ほどの家に送還されたようだった。よかった。あのうぇいうぇいは私の苦手とするところだからな……。




