天使ミカエルと集落
クリスマスだからね。せめてもの天使イベント
ルーソ王国、ルメル伯爵領についた。
ルメル伯爵領にあるちょっと高い丘から領都の様子が見える。それ以外にも、ぼちぼちと人がいそうな集落もあり、畑がたくさんある。
よくある田園風景というものだ。畑だけでなく、田んぼもあるってことはここで稲作もやっているのだろう。
「自然豊かですね」
「ははは。そう褒めてくれるだけで光栄だな」
と、伯爵は苦笑い。
「私の領は御覧の通り何もなくてね。隣の公爵領なんかは温泉を売りに出していたり、また隣の侯爵領は鉱山を所有していたりいろいろと特産品はあるが……。うちはこういった農業しかなくてね」
「農業できる土地っていうだけでもすごいと思いますが……」
「はっはっは。そういってくれるだけでもありがたいね」
私たちは丘を下る。
領都に入り、伯爵様の屋敷の前についた。
「ここまでありがとう。この護衛領はすまないが後日にしてくれないか」
「いいですよ。あ、私観光していいですか?」
「好きに観光してくれて構わない」
「はーい」
というので、私は伯爵様の護衛を離れ、この領の探索にいそしむことにした。
気になるのはまずやはり農業だ。フレンドのヴァルゴがやってるのと、たまに教えてもらって一応知識だけはあるつもりではいるのだが。
だがしかし、まだまだ農業は未知数だからな……。机の上で出来ても、やってみてできないという知識もある。それに、この世界には現実のようなトラクターなんていうものはないだろうし、畑作や稲作は人力だろう。
今の時期は夏なので、もうすでに種植えなどは終わっているころだろうが、雑草刈りとかの仕事はあるだろうしな。
見学、見学ーっと。
私は領都から出て、ちょっと遠くの畑作をやっていそうな集落まで飛んで向かっている時だった。
下を見ると、鍬をもった男がイノシシの魔物に襲われている。鍬で必死に防御しているが、力負けしそうな勢いだった。
私は矢を構え、狙撃。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ、あ……」
と、男は助かった安心からか、その場で気を失っていたのだった。
すると、ぞろぞろと人がやってくる。それぞれ武器を構えていた。鍬だったり鎌だったり。武装した男たちが私を見る。
「あんれぇ、魔物はどこ行ったんだべ」
「それよりあんた、なにもんだ?」
「あ、私はシグレって言います。いろいろこの領を見て回ろうとしてたら襲われてたのを見たので魔物を倒したんですけど……ダメでした?」
「なんも! あの猪の魔物倒してくれたんか! いいやつだなぁ! どれ、おでの家にこい! うめえ料理振舞ってやる!」
「あんた、どこからきたんだい?」
「あ、王都から伯爵様の護衛で」
「伯爵様! あんのすんげえ優しい伯爵様の! こりゃいいめぐりあわせだなぁ! いい人の周りにはやっぱいい人がいるんだべ」
いい人の周りにはいい人がいる……。
いや、多分それは違うんだよな。麻の中の蓬っていう感じで、悪い人でもいい人にかかわるといい人になっているのだと思う。
私は別にそこまでいい人ってわけでもないし。
「ささ、集落は近いべ。若え衆はこいつ運んでやり」
ということで、私は近くの集落に移動することになった。
集落に入り、まず目がいったのは集落の真ん中にある女性像。
「なんですか? これ」
「それは女神アルテノス様の像だ! この領都じゃアルテノス様を信仰する人が多いんだ」
へぇ……。
宗教はどこにもあるっていうことか。女神像に祈っている女性もいる。
その時だった。
「シグレちゃんうぇーーーい!」
「へぶっ」
私の上空に誰かが降ってきた。
「やっほー! シグレちゃん! ミカたんだよー!」
「……どういう登場の仕方だ」
天使ミカエルがやってきてしまったのだった。




