逆恨み
要因が分かっても、その要因を取り除くことはまず出来ない。
私は再びスマホの中に戻る。
「私にとってミノルと距離を置くなんてこと出来ないしな」
そう言っている時だった。
突然、真田さんがドサっと倒れる。そして、その次にミコトが倒れた。
突然倒れた二人。ハルサメが、少し辛そうな顔をしている。
「どうした?」
「いえ……。息が苦しいだけであります……」
「きゅ、救急車!」
私はすぐさま救急車を呼んだ。
苦しそうに息をする真田さんとミコト。私は、さっきおばさんが運んできた荷物を見ると穴が空いていた。
毒ガス……?
「ハルサメ……は動けそうにないか」
ミノルが心配だ。
私はミノルの様子を見に行きたいが……と考えていると、つい先日電波で移動するものを作っていたと思い出し、ミノルの携帯に移動した。
ミノルはヘッドギアを手にしたまま、倒れていた。
「なんなんだよ畜生! ミノル、私の声聞こえてるか!」
そういうと、ミノルは弱々しく手を上げた。
まだ生きてる。すると、外からサイレンが聞こえてくる。そして、扉が開かれる音。
入ってきた人たちの叫びが聞こえる。
「ひどい有様だ……。ガスが充満してるかもしれん! ガスマスクを!」
「誰か意識ある人はいませんか!」
と、下から聞こえてきた。
人が階段を登ってくる音が聞こえる。そして、扉を開けた。ぐったりしているミノルを見て、声をかける。ミノルは弱々しく返事をしていた。
「通報者は!?」
「私です、私」
「で、電脳アバターか! なぜ倒れているかわかるか?」
「多分、違う部屋に置いてある荷物だと……」
「なんだと!? まあ調査はあとだ! しっかりしろ! 今すぐ病院に連れて行く!」
そういって、救急隊員はミノル達を運び出す。
私も救急隊員に連れていかれることとなっていた。私の場合は聴取があるのだという。
そして、2階から声が聞こえる。
「毒ガスの検知ができました! 塩素ガスのようです! 毒ガスの出ているところは段ボール! 外国から送られてきた荷物のようです」
「…………」
「君からは聴取をせねばなるまいな。なぜ毒入りの荷物が……」
「……多分ハルサメが原因です」
救急車におばさんたちが乗せられ、ミノルたちも乗せられて行く。
そのサイレンが遠くなっていった。私は駆けつけた警察の人になぜ、送られてきたかわかるか?と聞かれて。
「ハルサメは外国で戦ってた軍人で……。その、言いたくないのですが、ハルサメ自身戦争でたくさん人を……」
「その遺族や他国の逆恨みの線が濃厚か……。一人狙うならまだしも一家全員を巻き添えにするとは……」
「…………」
「君は、災難だな」
「…………」
「電脳アバターになって、一人だけ無事だというのも辛いだろう」
周りは倒れて行くのに私だけ無事。
電脳アバターだから外の空気なんて吸うことがない。だから無事。
……だがそれが逆に嫌だった。ミノルたちは無事だろうか。
「……とりあえず、家の換気をしたまえ! 家の毒ガスを外に出そう」
「…………」
「とりあえず君は運ばれた子の病院に送っていこう」
そういって、私はパトカーに乗っかった。
病院に入り、私はミノルのそばに置かれる。ミノルたちは解毒治療を行なっている。
意識は完全になくなっており、あとは本人の気力次第だという。
ハルサメも、ミノルも、ミコトも、真田さんも。全員倒れてしまった。
お前らが死んだら……私はどうやって、生きていけばいいというんだ。死ぬんじゃねえ。私みたいに、死ぬんじゃねぇ。




