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ミノルよりは・・・

 モンスターハウスを切り抜けた私たちはとりあえず先へ進んでいることにした。

 ハルサメの消耗が激しい……かと思っていたが、涼しげな顔をしており、問題ないと判断した。まぁ、消耗しているのは私だけだからいっか……。


「……あのー、シグレ殿」

「なに?」

「その、これが終わってからでいいのでありますが」


 と、語りづらそうにハルサメが頭を抱えている。


「ついてきたのもちょっと頼みたいこともあるからでありまして」

「頼みたいこと?」

「……自分に勉強を教えてください」


 と、私と面と向かい、頭を下げてきた。

 

「……勉強って、それならぽんぽこのほうがいいんじゃ」

「その、ぽんぽこさんにも頼んで教えてもらったんですが……。ちょっとレベルが違うので……」

「それほどまでやばいってこと?」

「……はい。自分、これまで戦いのことにしか身を置いてなかったものでありますから」


 ……しょうがない。

 私は今すぐログアウトしてやろうと告げる。ハルサメはいいのでありますか?というように見てくるが。


「私も疲れたし、ハルサメとならまたモンスターハウス攻略できるだろ? そうやって頼んでくるってことはテスト赤点だったんだろ。急いで対策しないと覚えられないぞ」

「申し訳ないであります……」

「ログアウトしたらミノルの部屋で私のスマホをもってお前の部屋に連れてくこと」

「了解であります」


 そういって、私たちはとりあえず宿に戻る。

 ログアウトして、数分待っていると春雨がこっそりと部屋に入ってきて、コードを取り外し、自分の部屋に持っていくことに……。

 と、初めて春雨の部屋に入った。


 春雨の部屋には軍隊の頃の制服が飾られ、軍刀が壁に掛けられている。


 そして、極めつけはというと、なんだか電子黒板のようなものが壁につけられていた。

 リモコンで操作するものらしく、春雨はその電子黒板と私のコードをつなげる。


「なにこれ?! 日本のものじゃないだろこれ」

「祖国のものであります。通信機能もあってたまにこれで上官と話しているのであります」

「へ、へぇ……」


 すげえハイテク。

 私は電子黒板の中に移動する。空間が狭く、背後の壁に書き込める仕様となっているようだった。ペンもご丁寧に置いてある。

 私はペンを持ち、背後の白い壁に書き込んでみた。消すときは手で拭うようにすればいい。


「なにこれ、すっげえハイテクじゃん……!」

「軍で作戦会議の時にも使用されていたものであります。さすがにハッキングなどには気を付けてばれてはいけない機密情報はデータごと削除しておりますが」

「へぇー」

「それでなのでありますが……。さっそく授業をお願いしたいのであります」


 授業か。


「まず何の教科ができないんだ? テストを見せてみろ」

「了解であります」


 春雨がカバンから五枚の解答用紙を取り出した。それを私に見せつけてくる。私はそれを見て、一言漏らす。


「み、ミノルより全然いいよ……」


 赤点が一つに赤点ぎりぎりが三つ、満点が一つ。これならまだ救いようがある。ミノルは勉強させないと赤点だから困る。

 国語だけは割かしできているようには思える。情景や心情を答える解答はかけており、敵は漢字。書きなれていないのか、漢字で得点を大体失っている。


 そして、英語は満点。

 考察するに、春雨がいた国の公用語は英語だったのだろう。ただ、イギリス英語なので、ちょっと危ない。イギリス英語だとたまに×つけられることもある。

 学校で教えているのはアメリカ英語だというのが主な要因だ。


「理数系がだめなのか」

「国語もだめであります……」

「国語は漢字だけだし、漢字だけなら大丈夫。あとで漢字書き取りドリルとかで勉強したら大丈夫なはず。理数系を対策しないといけないな」

「申し訳ないであります」

「大丈夫だよ。春雨はきっと数字を考えるのが苦手なんだと思う。論理的に生きてるわけじゃなく、多分思ったより感情的に生きてるから理系が苦手に感じるんじゃないか? とりあえず、基礎からみっちり教えていこう」


 これならまだ大丈夫。ミノルよりまし……。

 ミノルは本当に興味ないことは覚えないから。プログラミングとか出来るくせに計算とか出来ないから……。謎なんだよな。






 

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