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発明家イルル ①

 崇拝から解放されたのは一時間後のことだった。

 ひたすら祈られ続け、私は少し気分的に参っていたのだった。私はそろそろあいつらも昼ご飯を食べ終わって昼寝も終わったころだろうと思い帰ろうと羽を広げて空を飛ぶ。


 空はいいよな、誰にも邪魔されなくて。そう思っていると。


「わわ、あぶなーーーい!」


 と、私の前方不注意で誰かとぶつかってしまった。私は思わず頭を抑えるが、その少女は墜落していくのだった。

 私は落下していく少女をつかみ上げる。


「ごめん。前見てなかった……」

「い、いいんですよ。それより重くないですか?」

「重くはないかな」


 私は地面に……と下ろした時疑問が生じた。


「……なんで飛んでたの?」


 と聞くと、ゴーグルをつけた金髪の少女がよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに目を輝かせていた。

 少女は背負っているリュックのような機械を指さす。


「これですよ! これで空を飛べるんです!」

「これぇ?」

「私が開発したロケット君です! 空気を勢いよく下に発射し続けると飛べるんですよ。この法則は誰も知らないみたいで私が発見したんです! すごいですよね!」

「作用・反作用の法則か……」

「知ってるんですかぁ!? 私が発見したわけじゃなかったんだ……」


 と、少女はがっくり来ていた。

 作用反作用の法則というのはロケットなどに主に使われている。反対方向に力を向ければ逆の咆哮にも力が働くという……。


「でも、知ってるだけで凄いですよ! これって周りからは魔法使ってるんだろって言われるんです! 私は魔力がないのに!」

「まぁ、科学は魔法みたいなものだからな……」

「あなたはこれを科学と呼んでいるんですね!」


 この世界って科学技術がそこまで注視されていないのか。

 そりゃ一つの文明が栄えていたら片方の文明には注目しなくなるわな。魔法という便利な文明があるからそっちを利用するのは当たり前で、法則や作用などを研究する必要がないと考えているんだろう。


「すごいです! ぜひ私のラボへ来ませんか!」

「いいよ。の前に名前を教えてもらっていい?」

「私はイルルっていいます!」

「イルル。私はシグレ。よろしくね」

「はい! ではどうぞどうぞこちらへ!」


 といって、私は街の奥深くにあるらしいラボに連れていかれる。

 ラボについた。外装は機械仕掛けのようなものだった。トタンの壁があり、煙突からは煙が出ている。

 ラボの扉はどこだろうと探していると、なんだか不思議なドアがあった。


 その扉の前に近づくと、ウィーンと扉が開かれる。


「自動ドア……?」

「はい! センサーで人を感知して自動でドアが開くんです! これも私が開発しました!」

「へぇ」

「でもみんな魔道具で扉の鍵とか閉めますし、電気というエネルギーは誰も使わないんです」


 魔力という誰にでも持っているものがあるからな。


「……電気ってどうやって?」

「えっとですね、川の上流にこう、くるくる回るものを作ったり、この家の上には太陽の光を吸収して電気を! あとあと! 海にも発電する機械がありまして!」

「水力発電に太陽光発電に波力発電……? 思ったより技術があるな。それ全部ひとりで?」

「はい! 試行錯誤しながら頑張りまして!」


 こいつはすごいな。すごい科学者だと言える。

 一から電気というエネルギーに着目して利用している。この世界だとそういう概念はほとんどなさそうなのに。


「今お茶だしますね!」


 そういって、イルルは奥のほうに向かっていく。

 ソファは少しくたびれてはいるがふかふかとしたソファだ。


「発明家イルル、ねぇ」


 この世界の特異点だな。









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