信仰心は高すぎるくらいが
ヴァルハラの港に船が到着した。
私は船を飛び降り、港に飛び降りる。そして、そのまま奥のほうへ向かう。
「この港町しか解放されてないんだよな……。ちょっと探索してみるか」
私は一人で港町の探索に向かう。
ここは山に囲まれており、山で区切られているようだった。どこかへ通じるような道は整備されているのは一本のみ。
だがしかし、この港町だけでも結構な広さがあり、空を飛んで移動しないと本当に時間がかかりそうだ。
「そこの山を越えたら魔物が出るみたいだ。となるとダンジョンも探したらあるかもな」
一応探索可能範囲の境界線まで飛んで向かってみると、平原にドラゴンがすやすやと眠っていた。ちょうど境界線のあたりなので、あのドラゴンが移動するか、討伐されるかしないと次の街への道は解放されなさそうだ。
私は街に戻り、噴水の前に降り立つ。
その瞬間を、NPCの一人が見ていた。
「あなた様は……」
「…………」
「天使様……! 天使様だ……! 我々に天使が舞い降りた!」
と、過剰なまでに私の翼を見て涙を流す男の人。
男の人が叫んでいると、なんだなんだというような見物人が家の中から出てきた。すると、私の姿に驚き、かしずき始めた。
天使様、ようこそ我が国へ、というような歓待を受ける。
「…………」
「天使様……。毎日ありがとうございます……」
「……えっと、状況がわからないのだけれども」
何で私が祈られる対象となっているんだ?
考えられるのは宗教。この国の宗教では天使を神聖視するのかもしれない。そりゃ神様の使いっていう認識の仕方だから無理もないだろうけど。
「天使様……。もしよければ歓待のおもてなしをさせていただきたいのですが」
「まぁ少しくらいなら」
そういうと、私はぜひこちらへと連れていかれた。
連れていかれた先は教会だった。ステンドグラスから光が差し込み、私たちを照らしている。神官服を着た男の人も驚き、歓待の準備を始めていた。
私はなにやら台の上に立たされている。
「天使様。これはお貢物ですが」
と、果物が手渡される。
「いや、いいよ……。なにこれ」
こんなかたっ苦しいの?
私は少し頭を抱え込む。
「毎日幸せに暮らせるのは天使様と神様のおかげであります」
「ありがとうございます」
……天使がやったんじゃなく、あなたがたのおかげでは?
私としては神様というのはゲームでいることは確認している。が、そこまで人間を贔屓するはずもないと思う。
多分あの神様だってゲーム感覚でこの世界を創ってるはず(偏見)
『ふっふっふ。どんどん天使としての役割を果たしているようですねシグレ』
「アルテノス様?」
『人々の祈りこそ私たちの力なのだ! ありがとうって伝えておいて』
「そんな伝言を頼むみたいに軽くでいいんですか?」
『いいのいいの。お礼なんて軽く言えるんだから』
語りかけてきたそのアルテノス様はありがとうと伝えろと。
「あー、その。神様がありがとうだって……」
「なっ……」
「なんというありがたきお言葉……」
と、一斉に涙を流し始めた。
「信仰心高すぎじゃない? バカじゃないの?」
私は一方で神を冒涜していた。




