隣の国へ
カジノでありったけのお金を稼いだら、VIPパスというのをもらえた。
VIPパスというのは、VIPルームに挑めるというもの。クレジットカードのようなものを手渡され、これをカジノの運営に見せるとVIPルームに入れるのだという。
取得条件はカジノで1000万以上の利益を得た方だという。
「…………なるほど」
たしかに今日一日がっぽがっぽ稼いだけれども。
そんなに稼いでいたのか。私は所持金を見ると本当に一千万ちかくのブロンが所持金として表示されていた。
「……ギャンブルの才能あるじゃん」
「そう? 割とこれは普通じゃないの?」
「いやいや、土壇場であのメンタルの強さは正直ないよ……」
「そうですね。平気な顔でブラフまいてたりとかしてたじゃないですか」
「そりゃ心理学とかは一通りやってはいるし、カジノとかだとそういう心理が働きやすいからね。普段だったら無理だよ」
みんな金が欲しいからこそギャンブルに手を染める。
ハイリスクハイリターンで、ハイリターンをとれば心地よいから。一度勝ってしまえば沼にはまってしまう。パチンコと同じだな。
「とりあえず、当分の資金とかは大丈夫かな。私の」
「……くれないの?」
「この金の元手は全部私の金なんだけど。それに、ゲームじゃそういうのないけど現実だと、ギャンブルで得た金って青色申告ではないからね?」
「……うちもやってくる!」
「やめておいたほうが良いと思うでありますが」
「そうそう。こういうギャンブルとかは正直者が馬鹿を見るんだよ」
こういうのは性格悪ければ悪いほど割と勝ちやすい。
私も性格は悪いほうだと自覚はあるから、多分勝てるんだろうな。
「むうう……。うちいま金欠なのにぃ」
「さっきのダンジョンで得た素材は全部やるから……」
カジノを出て、私たちは一度宿屋のほうに向かう。
カジノに熱中するあまり、時間は昼。それぞれ昼ご飯があるのだという。私は食べなくてもいいので、ログアウトすることはない。
「それじゃ、またあとでね! 今度はメモリーロックかかるようなこと考えないでよ!」
「はいはい」
そういって、ミノルたちはログアウトしていったのだった。
四人を見送り、私は地図を開いてみる。新たに行けるようになったエリアは始まりの街からかなり下にいった砂漠地帯、そして、海の向こうの国の港町。
以前行った港町、アクエリオ。そこから船が出るようになったらしく、隣の国ヴァルハラへ行けるようになったのだという。
どっちに行くか、という話になるんだが……。私としては暑いのはそこまで好きじゃないので海を渡って隣の国に行くとしようか。
私は翼を広げ、空を飛ぶ。
そして、船には乗らず、そのままアクエリオを通過すると、しばらく海の景色が続くようだった。
海は汚れが少ないのか、綺麗な青に染まっている。
海底まではさすがに見えないが、魚が泳いでるのが上から見ても丸わかりだった。小魚や、タコのような軟体動物、イルカにシャチ。温暖な気候だからかイルカのような哺乳類もいるようだ。
すると、船が見えてきた。
つい数時間前に出航した船のようで、隣の国へ行くための連絡船だからかプレイヤーが多数乗っている。
私の飛ぶ速度は割と速いのですぐに追いつけたようだ。
「ちょっと乗り込もう」
私は甲板の上に着地した。
すると。
「よぉ、飛んで登場とは羨ましいぞ」
「飛べるのは羨ましいっす!」
ゴエモンたちが乗っていた。
「よぅ、シグレ。お前も隣の国にいくのか?」
「……グライド?」
「シグレ。よぅ」
「久しぶり」
と、シンゲンとマサという男たちまで。勢ぞろいだなおい。
「……その、前はごめん」
「いいよ。気にしてない。それよりお前らも行くの?」
「あ、ああ。そりゃ気になるからな……」
「俺もねー。新天地ともなると気になるでしょ」
「ふぅん」
そういうものか。
「で、お前らまだ学校行ってないの?」
「……ずっと休んでるとねー、休み癖が」
「それに、出席日数足りていないから留年しているだろうよ。父さんも母さんも学校に行けとは言われてるんだが」
高校ともなると義務教育ではないからねー。
「いつまでネチネチ引きずってんだか……」
「……女々しい、よね」
「うん」
お前らは女々しいぞ。
「知り合いなのか?」
「あ、うん。中学の時の知り合い」
「へぇ。俺はグライドだ。よろしくな」
「シンゲンです。よろしく」
「マサでーす」
フレンドがフレンドになった。
私は仲を取り持つキューピットではないのだが。
すると、船の汽笛がなる。
港が見えてきた。
「あそこがヴァルハラか」
「どんな冒険があるのかな!?」
ワクワクドキドキだな。




