思い出そうか ②
ゲーム、ということなので戦う要素があるらしい。
私の武器は弓だということ。弓というのはやったことがないな。弓道なんて勉強してないし撃てるのだろうか。
私はそういう不安をぽんぽこに言ってみた。
「そうですね……。知識だけは覚えているような感じですが、技能までは覚えているかはわかりませんね……」
「シグレってめちゃくちゃノーコンだったんだよ最初!」
「えっ」
と、急にミノルが登場し、そういってきた。
「私がノーコン……?」
「ボール投げたら予想外のところ行くし、弓だって最初めちゃくちゃ外しまくってたんだ!」
「そうなんですか?」
「前作の話だけどね! 前作でめちゃくちゃ頑張ってノーコン克服してたよ!」
……不安になってきた。
「ちょっと試し打ちしても、いいかな」
「い、いいですよ。なら、王都郊外の弱い雑魚敵を倒しましょうか」
ということで、王都の郊外という場所にやってきた。
そこには、普通よりでかい蟻がいる。あれが魔物というものか? 私は弓を構えて撃ってみると。その弓は思いっきり蟻に当たるわけがなかった。
何度も何度も撃ってみるが、全部不発。
「……どうやら技能だけは無理なようですね」
「……クソ」
「シグレさん?」
「頑張るかなぁ……。命中しないってのは弓使いだとすると本来はあるまじき姿なんじゃないの……?」
「そう、ですね」
「狩人って……あ。今シグレ皇帝だもんね」
「……ちょっと一人にしてもらっていい? 特訓する」
「わかりました」
「うちはみてるー」
というので、引き続き魔物を狩ることになった。
煌雨の弓という弓に矢を継ぐ。そして、弦を弾き、狙いを定める。が、当たらない。
なんとしてでも当てなくては。弓を選んでいるのだから当てられないというのはご法度だろう。私は少しムキになりながらも、蟻を見つけては矢を放ってみる。
100回、討伐したころには少し命中もあがってきたが、まだまだ足りない。百発百中を目指さなくちゃいけない。
「シグレ、努力家なところは記憶なくなる前と同じだね!」
「……そりゃ記憶なくなる前も私だから性格は多分同じだろうよ」
「そっか! でも、シグレってめっちゃ頑張るのすごいよね! うち、頑張ることなんて続かなくてさー」
「これぐらいは普通だよ」
「……普通じゃないと思うけど」
足を引っ張らないためには普通のことだ。
「普通じゃないよ。本来は合わない武器があったら変えるでしょ」
「…………」
「自分に合う武器を探して、戦うのが普通なんだよ」
「それもそうだけど」
「でも、シグレって変な意固地があるせいか一度決めたら武器変えないんだよ。努力して使えるようにするっていうのはすごいことなんだよ!」
「……そうかい」
多分私の場合は変えないんじゃなくて、変えれないんじゃないかな。
知らんけど。
「……っし。まだ頑張るか」
「ふぁいとー!」
「おー」
私は敵を見つけては矢を放つ。
討伐していると日が暮れていく。夕暮れになったときは、ほぼほぼ外さなくなってきた。魔物は軟体討伐したのだろうか。
当たるようになってからは基本一撃だったので、どんどん倒せていった。
「もう夜だよシグレー」
「そう」
「明日にしよー」
「……先にログアウトしていいぞ」
「シグレは?」
「私はもっと精度あげてからログアウトする」
ただ、外さなくなってきたといっても十発に一回は外す。もうちょっと命中率を上げたい。まだコツを掴んでおきたい。
ピンポイントに狙って狙撃できるように。
「……記憶失くした後もシグレ変わんないじゃん」
「…………」
「変に意固地で、努力家で……。うちなんかよりもっとすごいよ。なのになんで……」
「価値観の相違だろう」
私は、そのことについて回答を出す。
「さっきの会話でなんとなくわかった。私は努力をすることは普通だと思っているんだ。それは記憶失くす前も同じ。でも、普通だと思っているからこそお前らに憧れるんだろうよ。すごいとか、そういうこと失くす前に言ってなかったんじゃないか?」
「……そういわれてみれば」
「努力することは至極当たり前で、それ自体が普通となっていた。だからこそ自分には何もないからと思い込んで羨望が強くなったんじゃないかと思ってる」
もとより、私は自尊心がそこまで高くないらしい。
「それまで記憶の隅に寄せ解いたものがつい先日に一気に押し寄せて、耐えきれなくなったって感じだと思うんだよ。私の考察だと」
「…………うん」
「私はもとより自尊心が高くない。だからこそ認めるような言葉が欲しかったんだと思う」
私の家庭環境とかは忘れているのだから知らないが。
「じゃあ、思い出したらもっと褒めてあげることにする」
「そうしてくれ」
私はそういって、敵を倒していくのだった。




