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天蘭高校にて ②

 三美は小鳥遊さんを呼ぶと、小鳥遊さんはびくびくとしながらやってきた。

 少し恐怖心を抱いているようだった。いじめられているのは本当のようで、小鳥遊さんは三美に対して何か用ですか、と震えた声で話す。


「その、今まで申し訳ありませんでした」


 と、三美は全力で頭を下げていた。

 その状況がわからず、小鳥遊さんは「え?」と戸惑いを隠せない様子。これもまぁ、仕方ないことだろう。三美はいじめて、小鳥遊さんはいじめられて。

 急に謝罪に来たということに疑念を抱くのはたしかだ。


「え、えと」

「申し訳ありませんでした」

「あ、頭を上げてください」


 と、小鳥遊さんが言うと三美は顔を上げる。

 だがしかし、小鳥遊さんは少し涙目だった。小鳥遊さんは少し制服が違う。一般で受けてきた子だろう。

 三美は、その顔を見て少し戸惑う。


「謝ったからってやったことは消えませんよ……! 私はっ……」

「……ほら三美。やっぱりこうなった。なんで私がいないとお前ぐれるのかなぁ」

「……どこから声が?」

「……このスマホからです」


 と、私を見せつけてきたので、私はどうもと手を振り返す。

 小鳥遊さんは私に近づいてきた。


「あ、あなたは?」

「夜桜 時雨。ま、こいつの友達。友達が悪かったよ」

「時雨さん……。え、これテレビ電話じゃないですよね?」


 どいつもこいつもそれを疑うのか。


「違うよ。私はこの中にいんの……。電脳アバターって知ってるでしょ。それ」

「……ってことは」

「まぁ、予想している通りだとは思うよ」


 電脳アバターであることがどういうことかは理解しているようだ。

 

「それに、夜桜 時雨って名前もこの学校を調べたらわかるんじゃないかな」

「えっと、暴行事件を起こした人ですよね?」

「知ってるの?」

「はい……。天蘭高校の付随中学で暴行事件があったという話はテレビでもやってましたし、主犯は転校したという話は聞きました」


 悪いほうにはやっぱ有名だよな。私って。

 わかっちゃいたけどこの学校での私の評判って暴行事件を起こした人って感じかな。バカだと笑われるかもしれない。


「えっと……でもものすごく落ち着いた雰囲気の人ですし本当にやったんですか?」

「ん、まぁ、事実だけど……」

「……理由とかって」

「そりゃバカにされたから」

「な、なんか天蘭に通っていた人ってお嬢様のイメージあったんですけどバカにされたからって理由で暴力ってお嬢様っぽくないですね……。今もそんな感じです」

「あんた意外と辛らつだな……」

「私なんか余計なことを言うことが多いんです」


 本当に多いぞ。

 まぁ、昔はともかく今はお嬢様っぽくはないかもな。アバターでは髪をまとめ上げてるし、お嬢様という雰囲気ではまずない。

 みんなからダウナー系ギャルって言われる。そこまでギャルか私は。


「あの、私を無視しないでくださいませ。その、視線の高さに合わせるのが意外ときつくて」

「あ、ごめんなさい!」

「手がプルプルしてる」

「この状態でいつまでもいられるわけないでしょう!」


 そりゃそうだ。


「ともかく、謝りましたから! チャラにしろとは言いませんが、私が謝ったってことだけは! 覚えておいてください!」

「……はい」

「では、ごきげんよう!」

「ごきげんようってのは古くないか?」


 どこのお嬢様だ。








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