代弁者
ゲームは一日離れていたぐらいなんだが、その間でも王都の様子は少し様変わりしていた。
ペストの元凶を取り払ったこともあり、ネズミの死体を見なくなったという。まだ感染者はいるために油断はできない状況だけれど、あと少しの辛抱だということだった。
そして、王騎士たちに頼まれたのは、そのことを私に演説してほしいということだ。
「今の民衆は王の言葉より、神の使いであるとのたまっている私の言葉を信じている。私が作り上げた偶像を崇拝している……。これは国としてもまずいことだろうな」
このままいけば私が力を持ってしまう。
私を王にするという動きも出てきそうな感じだ。それも牽制しておきたいが。そううまいくいくだろうか。
それも含めて今の演説にかかっている。
私が噴水広場の噴水の上に立つと、ぞろぞろと人が集まってくる。
「皆の者、聞いてほしい」
私は、事実をまず告げることにした。
「今の病気の感染源はなくなった! 元凶はすでに討伐した。だからこそ、あとは体力勝負。終わらせるには君たちの体力が必要だ!」
「おお!」
「神がこの戦いを終わらせたのだ! 神に感謝を!」
そういうと、多数の人が祈りをささげる。
「だがしかし、この感染症の功労者である王にも感謝せねばなるまい! 王による賢明な判断で周りの街への侵攻を防ぎ、被害を少なくしたのだから」
「はいっ!」
「身内がかかってしまったもの、友だちや恋人が感染者になってしまったもの、それぞれいるのだと思う。だが、国を恨むな、病気を恨め! 天災は誰に対しても等しく起きるものである! 国を恨むのはお門違いといえるだろう!」
こうでもいっておけば大丈夫だろう。
「ああ、天使様……。ありがたや……」
「私に感謝する必要はない。私は代弁者にしか過ぎない」
「ひゅー! 代弁者様ー!」
「ぶっ」
奥を見ると、ミコトがいる。ミコトは私にぶんぶんと手を振っていた。茶化してんのかあいつ。あとで絞めてやろうか。
私は咳払いし、気を取り直す。
「ま、まぁ、そういうことだ。今日の演説は終わり! 解散!」
私はそういって、翼を広げ、ミコトのほうに向かっていく。
そして、ミコトを一発ぶんなぐった。
「な、なにするのだ!」
「茶化したからむかついて」
「横暴だろう! ああ、可哀想な僕……」
「うっせえこら。てかなんでいるんだよ。学校は?」
「はっはっは。今日はなんだか欠席者が多くてね。臨時休校となったのさ」
「なんで?」
「わからない! だが、ミノル君も休んでいたがなにかあったのかい? 君の体の復旧は終わったんだろう?」
「んー、まぁ、徹夜明けってのもあったから休ませたんだけど、そのあと階段からこけて足にひびが入って今病院かな」
「なんと……」
ミノルも割と間抜けなところあるからな。
「まぁ、お見舞いはあとでいけばいいか。それより、これからどうするんだい? まだ王都から出られないんだろう? 王都内でやれるクエストは限られてるんじゃないかな」
「ま、適当に何か受けようよ」
「そうだな、ではゆこう!」
私はミコトと共に歩き出した。




