徹夜明けのミノル
昔のことを思い出しているうちに、なんだか目の前が明るくなっていった。映像が途切れ、気が付くと私は天井のようなものを見ていた。
私の体が元に戻っており、横ではぐーっと豪快ないびきをかきながらミノルが寝ている。時刻は朝の7時。今日は平日だから学校に行かなければいけない時間だけど……」
「さすがに徹夜させておいて今起こすのはあれだな……」
ついさっき終わったばかりなのだろう。
さっき目が覚めたばかりということはそういうことだ。私は自由になった自分の体でこのスマホ内の空間を飛び回る。
「お疲れさん、ミノル」
「シグレぇ……。シグレはぁ……うちがぁ……」
寝言いいながら必死な顔をしていた。
そして、昼の12時。
「ミノル。そろそろ起きなさい」
「んぐ……」
ミノルの母さんが起こしに来た。
ミノルはよだれを垂らしていた口をぬぐい、起き上がる。そして、開口一番に言った言葉は。
「学校いかなきゃ!」
「今日は体調不良で休むって連絡入れておいたわよ」
「え!? ほんとに!?」
「だってあなたシグレちゃんの体を直してたんでしょう? 徹夜してたのも知ってるわ。さすがに起こすのもかわいそうだしねぇ」
「ありがとー!」
「シグレちゃんも、そうだったみたいだしね」
「……まぁ」
さすがに今起こすのはどうかと思ったからな。
「ハルサメちゃんだけ言ってるわ。ほら、昼ご飯よ」
「はーい! きょーの昼ご飯はなーにかなー!」
ウキウキしながら下に降りていった。
その時、ミノルは何かに気づいたのか、私のスマホを持ち上げて、ヘッドギアにつなげる。ゲームにつながる扉が現れた。
「シグレもゲームとかできなかったから暇だったよねっ! 先やってていーよ!」
「わかったよ」
「きょーのおひるー」
ミノルはワクワクしながらいくと。その瞬間悲鳴が聞こえてくる。
「ぷぎゃっ!」
という間抜けな悲鳴。だがしかし、その叫びは悲痛だった。
「いたーーーーーーーー!!!」
「なにしてるの! って、ミノル!」
「ちょ、マジ痛い! なんかマジ痛い!」
「うわ、なんか紫色に……。とりあえず病院いきましょ!」
なんか下で大事になっているようだった。
ミノルが階段かなにかでこけて、なんか足が紫色に変化していっているという。もしかして骨が折れたんじゃないのかなと思っていると、私のスマホに連絡が届く。
ミノルからだった。病院行ってきますということ。
その通知というか、ミノルが心配で、ゲームにログインできず数十分ぐらいミノルの連絡を待っていた。
すると、ぴこんという甲高い音が響き、ミノルからメッセージが届く。
『骨にひびが入って松葉杖生活になりました! ついにうちも松葉杖でびゅー! ひゅー!』
と、ミノルの自撮りと共に送られてきた。
のんきにもほどがあるだろうに。ま、大したことなさそうでよかったよ。私はそのままゲームにログインするのだった。




