水は蛇を追い出した
状況が解決する兆しはいまだ見えず。
私たちプレイヤーも王都の人たちと共に閉じ込められている現状だった。私たちの気分は曇天。もう少しで大雨が降ってきそうな空。
この今にも落ちてきそうで、危なっかしい気分をどうにかしないとな。
「演説も効きが悪くなってきているし……。そろそろなんとかするか……」
私は天使の羽を広げ、空に飛び上がる。
王都の門を超え、マッキンリー山に向かうと、たくさんのプレイヤーが蛇を倒そうとしているが、装備がそろっていないもの、揃ってはいるけどお世辞にもうまいとは言えないもの。頑張ろうとしてくれる心意気は買うけどね。
大体のプレイヤーが王都にいたせいでこうなっているのかもな。
「まぁ、あの蛇を初心者に狩れというのは……」
と、私が呟くと、見慣れた人の姿が。
「ちぃ!」
と、剣で蛇の尻尾攻撃を防いでいるのはグライドだ。グライドが剣で何とか防いでいるという感じ。グライドで苦戦するということは本当に強いんだな……。
私は地面に降り立ち、グライドの後ろにつく。
「よっ!」
「シグレか! いいところに来た! この蛇……予想以上に強え!」
ということだった。
凶悪そうな顔をしている。私のほうを見て威嚇して来ていた。その巨大な蛇は尻尾を私たちめがけて振り下ろしてくる。
私は躱すが、その巨体は躱しきれず、少し足が当たってしまいダメージを受ける。
「なんつー当たり判定……」
「こりゃきついぜ……。体力も相当多く設定されてやがる」
「団体で戦うこと前提だな」
この巨大な蛇……。実物は本当に大きかった。
私は光陰の矢を構え、矢を放つ。光の矢はその蛇の巨体に刺さり、皇帝スキルで雷が降り注ぐが、そこまで大ダメージというわけでもないようだった。
こんなん絶望するしかないじゃんか。
「こんなの序盤に相手していいのか!?」
「知らねえ! とりあえず俺らでやれる範囲までやろうぜ!」
「了解!」
私は煌雨の弓に切り替え、影魔法を使用。
尻尾が飛んできても躱す必要はない。私はそのまま一矢を放つ。一閃。喉元に突き刺さり、再び雷が落ちる。
蛇のうろこが多少焦げた程度であり、蛇にとっては辛くもなさそうだった。
「全力でスキルフルで使ってんのにこんな感じなのかよ……」
「無理ゲーじゃない?」
いや、クエストな以上、どこかにクリア方法があるはず。
そう思っていると上空に影が差しこむ。雨が降ってくる。
「雨……? まさか」
そのまさかだった。
私の背後に降り立ったのは雨神レインオルト。龍に分類される超強いドラゴンだ。そのレインオルトは蛇を見下ろしている。
ちらっと私のほうに目を向けると、少し笑ったような顔を見せる。
「キュアアアアア!」
レインオルトは足で蛇の体をつかむ。レインオルトと蛇の体格は同じくらい。だがしかし、蛇はなすすべもなく上空まで持ち上げられていた。
そして、そのままレインオルトは蛇にかみついた。
「シャアアアア!」
「キュアアアアア!」
レインオルトは吠え、ブレスを放つ。そのブレスは凍っていき、蛇の表面が凍る。
だがしかし、蛇もレインオルトの体にかみついて抵抗をしているが、蛇の鱗よりドラゴンの鱗のほうが固く、思うようにダメージが与えられていないようだった。
そして、レインオルトは空中に放り投げ、そして、上空に飛び上がり、そのまま急速に落下していく。
「キュアアアアアアアアア!」
レインオルトは水を体にまとう。そしてそのままぶつかり、爆発を起こしたのだった。爆風が私たちを襲う。
蛇はそのまま地面に落ち、消えた。
「倒した……?」
「すげえ……」
「キュア」
レインオルトは私のほうを見て、にやりと笑った気がした。




