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増えすぎたネズミ

 ペスト。それは過去にわたり、幾万の人たちを苦しめてきた病気だ。

 ペストによって一億人、死んだという記録も残っており、極めて致死率が高い感染症だとも言える。インフルエンザだとかそんなのとは非じゃないくらい致死率が高い病気。


「感染源は主にネズミです。最近、ネズミの死体とか目撃しませんでした?」

「そういえばハピナも王もネズミの死体に近づいていたであるな……」


 王? まさか、王様も感染しているのか?


「……その、ペストとやらの致死率とかわかっておるであるか?」

「…………」


 王が感染しているのなら……致死率を告げるのは酷ではないだろうか。

 異世界という設定のゲームなので、現実とは耐性も抗体も違うかもしれないが……。言っていいものだろうか。

 いや、言うべきか……。変に希望を持たせたくはないな。


「えっと……ペストは60%から90%の確率で……」

「なんと……!? そんな危険な病気なのであるか!?」

「はい……。あくまで治療しなかった場合は何ですけど……。ただ、治療といっても私は専門家じゃないので投与する薬とかはわかりませんし……」

「むぅ……」

「ただ、ペストの恐ろしさはまだありまして……。その、感染しやすいんです」

「感染しやすい?」

「なるべく患者の体液とかに触れないようにしてください。そして、患者が咳込んでいたり、くしゃみしたら感染する可能性もあります」

「なっ……」


 ペストというのは看病するのも厳しい病気だ。

 飛沫感染も余裕でする。なのでくしゃみとかを吸い込んだから肺ペストというものになる。


「私がわかっているのはこのぐらいです。この王都でそれが広まっているなら王都から人を出さないほうがいいので……」

「先ほどの封鎖は賢明な判断だったということであるな……。わかった。情報感謝するである……。このことを王妃などに伝えるのである。貴殿にもまだ頼みたいことがあるのだ」

「頼みたいこと?」

「王都の学園区域にいる王子に王が危篤だと伝えてほしいのである。先ほどのことを聞いて危機だとは知っておるだろうが……どんなのまでは知らぬのだ。王が死んだことも考えねばならないのである」

「そりゃそうか。わかった。名前は? 顔の特徴は?」

「名前はキース・ティターン。特徴は……金髪で短髪、釣り目の男といえばいいだろう。キースを呼んでくれと学園の大人に言えば呼んでくれるだろう」

「わかりました」

「お使いに使うようですまないが……。騎士団や王城で動ける人材がいないのだ。この状況であるからな……」


 そりゃそうだ。対応に追われているだろう。

 都市を封鎖したとあらば、この王都に住む人たちは文句を言うだろうし、流行病の対策を練らなければならない。

 ペストは国を滅ぼしかねない危険な病気なのだ。どう乗り切るのか、それを思案することが必須となる。


「それと、ネズミの死体が原因だというのなら、そのネズミの大量発生の原因も探ってほしい。これはそなただけではなく、冒険者など全員に頼もう」


《緊急クエスト:増えすぎたネズミ が発生いたしました》


 と、そういうアナウンスが流れたのだった。


「では頼む……。私はまだやることがあるのだ……」

「任せてください」


 私は詰め所を後にして学園区域のほうまで走って移動することにした。








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