流行り病
ミノルがオタサーの姫アリアを受け止める。
そして、ガルルと威嚇するような声を出すと、ごめんなさーい!でもぉ、とか言いながら弁明。
「あっちいけー!!」
と、ミノルが追い払ってくれた。
「助かった。ありがとな」
「シグレが感謝するなんて……! 素直に感謝するなんて……!」
「泣くほどか?」
それに、感謝しただけでこんな意外なの?
「で、テストどうだった?」
「…………」
「なんか言えよ」
「…………」
ダメだったんだな……。
「そ、それはそうとね! なんか王都の様子がおかしいんだよ」
「話変えたな……。ったく。王都の様子がおかしいってなにが?」
「はーっはっは! なんだか今日は人通りが少ない気がするね! やぁ、シグレ」
「ミコト……。人通りが少ない?」
言われてみればたしかに……。いつもならもっと人だかりがあるはずなのに。
どうしたのだろう?
私たちが考えていると。
「ここにいましたか。ミノルさん、シグレさん!」
「イオリさん?」
イオリという王騎士が所属する騎士団の副団長がやってくる。焦ったような顔をしていた。
「どうかしたんですか?」
「君たちに、頼みたいことがある」
「頼みたいこと?」
「実は……最近原因不明の病が流行っているんだ」
原因不明?
「その病に感染した者は足などが黒くなって、膨らんでいく……。そして……数日後に死ぬんだ。そんな病気が流行っている」
「ほへー。怖いねー」
「怖いってものじゃないでしょ。言いたいことは私たちに原因を探ってほしいと?」
「そういうことだ……。必ずどこかに原因があるはず。それを……」
「わかりました」
《クエスト:流行り病の原因調査 を受けました》
これはいち早く取り掛かる必要があるかもな。こういう流行り病は早くしないと手遅れになる。
ただ、心当たりがないわけではない。黒く膨れ上がる症状はどこかで聞いたことがある。
「頼んだ! わかったら詰所に来て欲しい」
「わかりました」
といって、イオリさんが再びどこかに走っていく。
「流行り病か……。黒くなって膨れ上がるって……どういう病気なのだろうな」
「心当たりはある。ただ、その心当たりが本当なら割とやばい病気」
「どんなの?」
「……ミノルは多分知らないものだ。とりあえず、原因であろうネズミを探せ。死体でもなんでもいい。見つけて……そうだな。一応もってこい」
「了解だ。ネズミだね」
「ちゅー、ちゅー!」
ミノルは呑気に鳴き真似しているが、そんな場合ではない。
「まさか……。うーん。本当にあの病気だろうか」
私の考えは合っている気がする。
私たちは路地裏などにいくと、目にしたのはたくさんのネズミの死体だった。
あちこちに死んでいるネズミの死体。不気味だ。なぜこんなたくさん死んでいるのだろうか。
『緊急警報、緊急警報』
と、大きな声が聞こえる。
『王都で流行っている病の侵攻が早く、また、人から人に感染することが確認されました。王都の門を閉じ、外は持ち出せないよう皆様を隔離いたします。しばらくの間、王都外には出られません。繰り返します……』
この警告……。対応が早い。ロックダウンか。
それに人から人に感染することが確認された。ということは私の考えは合っている。
私はミノルたちにネズミの死体はいいとメッセージを送り詰所までいくと、騎士たちが慌ただしく動いている。
「ルベルさんさん!」
と、団長であるルベルスさんが出てきた。
「どうしたのであるか?」
「その、多分病気の名前がわかりました!」
「なんと……!?」
「原因もおそらくでありますが、わかりました……」
「聞かせてくれたまえ!」
私は中に連れられて、椅子に座らされる。
「どんな病気で、原因はなんであるか?」
深刻そうな顔で尋ねてくるルグレス団長。私は深く息を吐く。
「……ペスト、という病気だと思います」




