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 ボスという存在はただの火の鳥だった。

 フェニックスのなりそこないというだけの魔物。サクッとゴエモンたちが倒していた。


「周回してたらコツとか掴むモンよ!」

「うわぁー、手慣れてんなぁーー


 ボスは倒れ、そのまま地面に墜落。

 素材がドロップしたのだった。獄炎鳥というらしく、地獄の炎を身に纏った鳥という。

 素材は、獄炎鳥の羽、獄炎鳥の目玉、そして業火羽(ごうかう)というものだった。


「あークッソ! 私の方には出なかったぜ!」

「うちもっす!」

「私もだ! なあ、シグレは!? シグレは業火羽でたか!?」

「あ、それレアドロなんだ」


 この羽がね……。


「出たけど」

「なんつー豪運……!? マジかよ、一発とか萎えるぜ……!」

「あー、その、いる?」

「「「いる!!!」」」


 と、手を握られて懇願された。

 私は別に今は必要としてないしいいんだけどさ。私は業火羽をゴエモンに手渡す。

 

「うっはぁあああ! ありがとな!」

「いいよ別に。なんかお礼したいならゲーム内で美味しいお店教えてくれよ」

「いいぜ! 私らがめちゃくちゃいい店知ってるからよ! 好き嫌いはあるか? 豆腐は好きか?」

「大好き」

「ならこの後食べに行こうぜ! 私の奢りだ!」

「まじで?」


 豆腐か。豆腐といやぁ、冷奴に揚げ出し豆腐、麻婆豆腐に湯豆腐がある。

 豆腐は美味いよなぁ。


「豆腐専門で店出してる変人なんだがよ、味は確かなんだ。行こうぜ」

「うん」


 そういって、私は帰ろうと踵を返すと。


「帰るのはこれ使うだけでいいんだぜ?」

「え、なにそれ」

「穴抜けの魔法書だ。これを使うとダンジョンからすぐに出られる」


 と、ゴエモンは穴抜けの魔法書を開いた。すると、私たちは山の麓にワープしていた。

 すっげえ便利。でも。


「この道具見たことないけど」

「当たり前だ。私の友人がレシピ見つけて独自で開発して秘密にしてんだからな」

「あー」


 レシピを秘密にしてるから広まらず、見たことがないのか。こういうのは誰か見つけて広めると思っていたが独占するのも一種の手ではあるな。


「お前さんなら紹介してやってもいいぜ? 私の友人の錬金術師」

「いいの?」

「ああ。ま、極度のコミュ障なんだけどよ、悪い奴じゃねぇよ」


 コミュ障か。そちらの方がありがたい。騒がしくしない分マシと言えるだろう。


「ま、の前に飯だな。ゲームの中は最高だよなぁー。飯いくらでも食えてよ」

「そうだな。味も感じられるのがいいね」

「飯も、旅も、何もかも自由だ……。私は現実で物も食えねえからよ……」

「それって……」

「電脳アバターってやつだ。こいつらは肉体あるけどな。私は肉体がないんだ」


 私と同じ……。


「それ私もだけど」

「え、まじ!?」

「マジマジ。一人暮らししてたら誰にも気付かれなくてさ、一人寂しく肉体朽ち果ててたらしいんだよ」

「うっはぁ! こんなところで同じ境遇のやつと! 嬉しいぜ!」

「あはは……。ま、これで私が出会った電脳アバターの子は二人目か」


 たしかオリエンテーション合宿で出会った七原詩音という女の子。あの子は今何してるのかね。

 それにしても、女の子が多いな。少しくらい男の子の電脳アバターがいないんだな。


「よっしゃー! 親睦会も兼ねて楽しくやろうぜー!」

「そうだな。じゃ、さっそく」

「ああ、いこうぜ!」


 私たちは会場へと向かう。







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