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これも人助け ①

 次の日を迎えた。

 マスタークエストを達成するにはあと100個クエストをクリアしなくちゃいけないので、私はひたすら困っている人を探し続けた。

 クエストを受けていたらグループも存続するからな……。クエストをやってないとグループが強制的になくなるっていう話もあるし。


「はい、頼まれてた薬草です」

「すまないねぇ」

「いえ」


 早く達成するためにせっせと働いていた。

 この歳で労働の苦しみとか知りたくないんだけど。天使ってそういうもんなのかね? 考えてみると天が使うって書いて天使で、熾天使ともなると中間管理職じゃね?

 うわ……。嫌な事実に気が付いた気がする。


「まだ残り89クエストもある……」


 先が長い。

 私は次のクエストを探していると、目の前に女性三人が立ちふさがる。その女性は歌舞伎のような隈取をしており、胸にさらしをまいている。

 NPC、ではないようだが。


「ちょっと待ちなぁ」

「なんだよ」

「お前、心無き天使のシグレだろ? ちょい面かしな」


 ……なんか嫌だなこいつ。

 逃げようとしても、取り巻きがうっとうしい。かといってここでPKするわけにはいかないし……。しょうがない。


「なんだよ。私忙しいんだから……」

「頼む! 私と共に来てくれ!」


 と、頭を下げてきたのだった。


「は?」

「お前、幸運なんだろ? 私もそれにあやからせてくれ!」

「いや、どういうこと?」

「私もお前のような特別な種族になりてえ! だからこそ、お前の運を借りたい!」


 ということだった。

 そういえばカイザーとかも言っていたな。私の幸運に……とか。たしかに私は運がいいが、人様があやかるほどはないと思う。ミノルとか割と不運だし。


「この通りっす!」

「お願いしやす!」

「えぇ……」


 と、この状況、少しまずい。

 私は辺りを見渡すと、ばっちり注目を浴びていた。これで拒否したら本当に悪者な気がするな。こいつこれが狙いでこんな大通りで……。


「わあったよ……。で、どこに行けばいいのさ」

「来てくれるのか……! お前いいやつだな……!」

「ありがとよ……」

「姉さん、よかったっすねぇ!」

「やったなぁ!」


 なんなんだよこの喜びようは。

 私は頭を掻く。


「とりあえず名前教えてよ。さすがに名前知らない奴と行動するのは嫌だし」

「あ、私はゴエモン! 武器はこの拳!」

「うちはネズミコゾーっす! コゾーとか呼ばれてるっす!」

「あたしゃアルセエヌだ!」

「何で全員泥棒の名前なんだよ」


 石川五右衛門に鼠小僧にアルセーヌ・ルパン。一人だけ海外だしな。こいつらそういうもんが好きなのかね? 割と不良っぽい恰好だしそうかもしれない。悪さに憧れるお年頃ってやつか。


「ま、私は知ってるだろうけどシグレ。多分あんたらより年下だけど……ま、敬語はそんな好きじゃないしこういう口調でやらせてもらうよ」

「構わないぜ! さて、さっそく行くとしようか! 閻魔になりに!」

「閻魔……? 閻魔って、あの閻魔か」

「そうだ! 一応イベントらしきものは起こした! だがしかし、ダンジョンを攻略して装備一式を用意しろということでな!」

「なんとなく読めた」


 多分ドロップする素材が落ちないとかそういうのだろう。レアドロップは本当に出ないときは出ないからな。

 幸運にあやかろうとするのもわかる。


「周回はしてるんだがよ……。本当にでねえんだ」

「……そう。じゃ、私もその周回に参加しろってことね」

「そうだ! 助かるぜ!」

「ま、これも人助けか」


 私はゴエモンに案内してもらうことにした。周回しているということならばボスは私たちが倒せるようなものだろうな。









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