マスタークエスト
目を開けると、そこは真っ白な空間だった。
まるで私がいつもいるスマホの中のような感じの空間。え、私戻ってきたのか? だがしかし、それなら隣でハルサメが寝ているわけがないんだよな。
「目が覚めましたか」
と、ハルサメが目を覚ましたかと思うと、目の前から女性の声が聞こえてくる。多分考えるにここに連れてきた張本人だと考えていいだろう。
私は警戒を解かない。
「そんな警戒しないでください。私は悪い神様じゃありません」
「……」
「天使とあろうものが神を目にして警戒するというのはいかがなものかとは思いますが、天使に生まれ変わった存在であるのならば仕方のないことでしょう」
「…………」
「……うぇーい」
うぇーい?
「あなたたちの話は先ほど帰ってきたミカエルから聞きました。あなたたちはうぇーい仲間だと」
「すごいねじ曲がって伝わってますけど」
「ミカエルと私はうぇーい仲間。ならばあなたもうぇーい仲間だということです」
「まいったな、まるで意味が分からない」
なんだようぇーい仲間って。この女神お茶目なやつか? ミカエルとうぇーい仲間? だから仲間? 私はうぇーい仲間じゃないんだけどもさ。
「本当はこんなかたっくるしい感じでいたくはないんですけどね。一応女神だということなので……」
「女神?」
「そうです。私は女神ワロス……じゃなくてアルテノス。この世界を創った神様であり、すべての始祖。あなたたちの飼い主です」
「ナチュラルに人間見下してる系の人か」
「見下してなどおりません。ただ……少し嫌気がさしているだけです」
嫌気がさしていたらそんな嫌味な言い方してもいいのですか。
「それで、その女神さまが何の用ですか」
「熾天使となったあなたと話したかっただけですよ。ほかの人は邪魔だったので吹き飛ばしたのですが……そこの女性はなんとも強いのですね」
「鍛えておりますから」
鍛えてるだけで耐えられるもんなの?
「人間というのは嫌だけど面白い一面もやはりありますね。ふふ。あ、どうです? 何か食べます?」
「いや、いい……。それより話したいだけならもう帰りたいんだけど」
「せっかちな人ですねぇ。ただで帰すのもアレですし、私からクエストを課しましょうか」
と、アルテノスさんはそう笑い、こほんと咳払い。
「クエストをクリアしたら私から報酬を差し上げますよ。内容は……そうですね。クエストを100個以上解決すること。人々の悩みに寄り添い、解決するのが天使としての宿命です」
天使として、ねぇ。私は別になりたくてなったわけじゃないけれど。
《マスタークエスト:天使としての宿命 を受理しました》
マスタークエスト?
マスタークエストというのはなんだろうか。
「ふふ。マスタークエストとはなんだ、って考えておりますね?」
「えっ?」
「マスタークエストというのはその道を究めたマスターが課すクエストのことです。剣士ならば熟練の剣士が、種族ならばその種族の頂点が課すクエストのこと。私は天使の長でありますから。100個以上クリアしたらまた来てください。神兵たちにもあなたは通すように言っておきます。では」
そういうと、私たちの体が光り始め、光景が変わる。
「どこいっていたんだ、シグレ」
「ハルサメもぉ!」
「ん? あー、いや……」
マスタークエスト、ねぇ。




