神殿
私たちは神殿に続く石段を登っていく。
本当は飛んでいきたいが、飛べるのは二人しかいないのでみんなで行くという以上そんな勝手なことは許されないだろうな。
なので私は最後尾で歩いていく。
「ながぁーい! 疲れたぁー!」
「うぇーいモードが解除されてしまったか」
先ほどまでうぇいうぇいモードだったのにもう解除されたか。こうなるとわがままが多くなるぞ。
「はは、もうすぐさ! 天高くそびえるその神殿は神に一番近いとされる。その神殿を訪れる機会はそうそうないのさ! ここは運営側から行くのを禁止されているんじゃなく、国から行くのを禁止されているところだからね! ここらは聖域と呼ばれる場所なのさ」
聖域ねぇ。
なるほど。だから兵士が守っていたわけか。だとしてもそれでも疑問があるが。たかが一神官のミコトを通してくれるのか?
ミコトだけならまだしも私たちも通してくれるのは疑問だな。
「おや? シグレはなにか疑問に感じているようだね! いいだろう、教えてあげよう! 僕は偉い神官の人からの紹介さ! それに、みんなが入れているのはシグレのおかげさ」
「私の?」
「君の翼はどう見ても人ではなく天使なのさ。天使が近くにいるということでみんなも許可されたのだ! はっはっは! 持つべきものは天使の友達だね!」
「なるほど」
そりゃ聖域だから天使の私は許可されるって話か。
「さて、そろそろ神殿さ! 神の導きを君たちへと!」
「あんた神様信じるたちだっけ」
「都合のいい時だけ信じるクチさ」
それはだれしもそうだろ。
私たちはそう話しながら石段を登っていく。数十分経ち、ようやく頂上が見えてきた。飛んでいけたらどれだけ楽だったことか。
ミノルはつまんなさが勝ってきたのか、帰りたーいと言っているし。
「はーっはっは! 到着さ! 神を崇める総本山、神官としてここにたどり着けたら優秀だと言っていた!」
「長く険しい道だったぜ……。うちは試練を乗り越えた」
「帰るときは空飛んで帰るわ」
「私もそうします……」
「あー、ずるーい! うちら飛べないのにー!」
帰りも同じ道は正直嫌だ。
私たちは神殿にたどり着き、中へ入っていく。神殿内部には誰もいない。祭壇のようなものはあるが、人の気配はない。
それにしても祭壇か。あの遺跡を思い出すな。
「ここ、魔物とかでないよな?」
「聖域には魔物は一切でないのさ。だから普通は行くようなものではない。が、僕は睨んでいるのさ。聖域にはなにかがあると」
「ふぅん」
「手始めに神殿になにかあると思っていたが……」
特に何もなさそうだ。
先ほどのミカエルイベントぐらいで、なにもない。
「人一人もいなさそうですし、先ほどの石段がつらいっていうぐらいしかないですね……」
「ふむ。見当違いだったか」
「ねぇ、シグレー。本当になんもなさそう?」
「私に聞くなよ」
「……ん?」
と、ハルサメがきょろきょろと辺りを見渡していた。
「どうした?」
「いえ……。何か気配を感じたものですから」
「気配ぃ?」
「あちらのほうです」
と、ハルサメは祭壇のほうに向かっていく。私たちも後を追うように祭壇に登ると、突然松明がともった。
すると、突然強風が。
「おわっ!」
「落ちますぅ!」
「強い風だ……」
吹き飛ばされそうな強い風。私は必死に耐える。だが、祭壇の上には私とハルサメしかいなくなっていた。ほかは吹き飛ばされたようだ。
すると、私とハルサメの体が浮き上がっていった。
「な、なんだ?」
私たちはどこかへ連れ去られていくのだった。




