風化した遺跡 ⑤
私は影魔法を解こうとすると、異変に気がついた。
というのも、MPが減っていない。影魔法は使っている間MPが減っていくはずなのだ。
なのに減っていない?
「バグか?」
「バグ?」
「いや……影魔法を使っている最中はMPが減るはずなんだけど……」
私が疑問に思っているとミミクが答えを言う。
「それ俺様をテイムした恩恵や」
「恩恵?」
「変異種をテイムするとテイムした本人に特別な効果があるんや。俺様の場合は主人様の消費MPの肩代わりや! 俺様のMPがガンガン減ってってるで」
なるほど。肩代わりしてくれているのか。それは助かる。天使という種族は耐久がそこまでないがMPは多いから気にしてなかったが……節約できるのはありがたい。
「ただ俺様を召喚している状態でなきゃ肩代わり出来へんのやで」
「なるほど。じゃあMPに困ったら呼ぶかな」
私は影魔法を解いた。
黒く染まっていた私の体が一気に鮮やかになっていく。
「さてさて、先を急ごう。ボス部屋はまだ遠いからね」
「そうだな。ミイラ男は任せっきりだったしそろそろ俺らも活躍しねえとなあ!」
と、意気揚々と歩き出していくカイザー。
「あれ熱血でしょ。時折うざいよね」
「うちにもそんなのいるから慣れてる」
「お互い大変だな」
熱血っていうか感情豊かなやつだけど。
「おーい! 階段あったぜ!」
「今行く」
私たちはカイザーが手を振っているので少し小走りで向かっていく。
カイザーがよし、行こうか!と言ったところで。
「どけよ、おっさん」
と、つい先ほど道を塞いでいた男たちがカイザーを見てそういった。
カイザーは従い避けると、連れの男がぷーっと笑っていた。だっさと言う声が聞こえた。
「……ダサいのはどっちだっての」
「ああいうのは嫌なのか?」
「そりゃね……」
「見た目ならシグレはあっち側だと思うけど」
「見た目はね……」
私の見た目はギャルっぽいとは言われる。
「ダウナー系のギャルだよな」
「性格がそうだからな! まあさっきの奴らは気にしないで行こうぜ! 感じ悪いやつなんてこの世にごまんといるさ!」
「エンカ率が私やばいんだよそういうやつと」
やっぱ見た目のせいかねえ。
私たちは階段を登っていく。階段を登るとさっきの男たちがまだそこにいた。
私はミミクを連れ歩いていく。
「どきなよ」
と、私が言うと。
「ひっ……」
「は、はい」
と、何故か避けられた。
私はそのまま横を通り過ぎる。
「やべー可愛い女だ。天使の羽なんかもってるぜ」
「あれ心なき天使だぜ……。下手に喧嘩売るなよ」
「聞こえてるけど」
私は顔をそっちに向けると。男たちは直立する。
「言っておくけどさっきださって笑ったの、私の仲間だからな」
「えっ……」
「あの影に隠れて私見えなかった? こんな目立つ翼があるのに」
「す、すんませんした!」
「ああいうのマジでウザいからやめなよ。そういうの、モテないよ」
「はいっ!」
聞き分けがいいな。ったく。恐れるくらいなら最初からやるなって話だよ。
面倒くさいやつら。
「あと、私心なき天使じゃないから。ちゃんと心ある」
「はい!」
こんな小娘に説教されて恐れるなんてダサい奴ら……。
「さ、カイザー。いくよ」
「おう!」
「ボスまであと少しや!」
ミミクがそういうのならそうなのだろうな。




