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第24話 魅惑の牛娘

 おかしい、どうしてこうなってしまったのだろう。俺は何度目になるかわからないため息をついた。


 その後に縛られて身動きが取れない現状を嘆き。そして、先ほどのことを振り返ってみた。そう、あれは俺がいつもどおり、美女モンスターを追いかけていた時からはじまったんだよな。


★☆☆


 慌てたように駆け寄ってきた牛人の女。いや、実際に慌てているのだろう。彼女は顔を歪めて早口に、


「族長、侵入者っす」


 と主人に報告をする。相当に警戒するべき相手が来ているようだ。見ているだけで報告にきた彼女がうろたえていることがわかる。


 その気持ちはわかる。だって、地下迷宮の最下層まで侵入者である俺が既に来ているのだからな。


「そんなに慌てるな。我は聞いておるぞ。侵入者はただの人間だろ?」


 返事をする牛人。彼女がこの地下迷宮の主人だ。体型はまさにホルスタイン。興奮してきた。おっと、涎が出てきた。って、落ち着け、落ち着け、クールなサイゾウよ。今回の依頼は彼女と楽しむことではないんだからさ。


「それがただの人間ではないっす。あの伝説のハンターと言われている魔物に狂った男っす」


「西の迷宮族長を引退に追い込んだあいつか?」


 部下の牛人の話を聞いていたホルスタインの女は顔を真っ青にしてそう言う。ついにオレの名前はこんな辺境の魔物にまで恐れられる伝説の存在になったのか。照れるな。


「はい、族長を捕まえて、いかがわしいことをしようとしたあの化け物です。幸い、スルサールの街の認定勇者エリオスが彼を武力で止めて事なきを得ましたが…」


「知っておる。あの化け物は勇者に全治10ヶ月の怪我を負わせたのだろう? しかも、4対1の戦いで辛うじて勇者が勝利したという化け物」


 くっ、思い出したくない事を話しやがって! あの時はあと少しであのかわいい子を口説き落とせたはずなんだ。そうしたら、今頃のオレは大人の階段を登っていただろうに。今、思い出しても人生の最大のチャンスだった。だと言うのに勇者というバカ野郎の所為で! 


「あの時に馬鹿エリオスが邪魔さえしなければ!」


「男の声!? もしかして、もう侵入者がここまで来ているの!?」


 馬鹿エリオスの所為で心の声が漏れてしまったじゃないか。オレは奴らの会話を聞きながら族長が1人になる時を待っていたのだ。


 今回の依頼内容的にどうしてもホルスタインに話をつけなくてはならなかった。もちろん、そこら辺の牛娘を複数捕まえてハーレムを作るっていうアイディアも捨て難いけどさ。それは依頼に関係がないからいつか機会があったらだな。


 実際に奴ら全員と戦って勝てるような体力は人間のオレにはないからな。そうなると戦略的に美人ボスだけを相手にするのが最も効率が良いのだ。


 フフフ、それに見ろよ。あの褐色の肌に今にも零れ落ちそうな双丘そうきゅう。あれが噂に聞いた牛魔王。もとい、ホルスタインな牛娘のホル子ちゃんだな。いや、俺にとってはもう奴はホル子ちゃんだ。そうホル子ちゃんだぜ。いい響きだ。


「イタっす! 族長、天幕の裏にイタっす」


 そう言って、部下の牛娘が双丘をプルプル震わせながら、俺を見て言う。


「モーたまらん。いや、もう我慢ならんと心の中でがんばって耐えてきたのに! まさか、見つかってしまうなんて! 仕方がない。こいつを襲って、いやだめだ。エモノは大きい族長だ!!」


 俺は再び、ホル子ちゃんの双丘を睨むように見る。うん、実にすばらしい! きっと、あの双丘には男のロマンが詰まっているに違いない。さぁ、俺のロマンを満たしてくれ!!


「族長を守れっす! みんな、早く来るっす!!」


 大声で救援を呼ぼうとした牛人をオレは素早くじょうで殴打し、気絶させる。まさに神業と言っても過言ではないほどの素晴らしい速度。いや、本当はあのモンスターも、モノはそこそこにいいものがあったので後で拝みたい。もちろん、時間があればだ。何をとは言わないぞ。


 本当はもっと楽しみたかった。だが、やはり、ホル子ちゃんの双丘の魔力の前には全て他はただの肉塊に成り果てるのだ。って、いかん。いかん。今回は依頼できていたのだ。しかし、それは裏返すと依頼を忘れてしまいそうになるほどにホル子ちゃんのアレが魅力的なのだ!!


「雑魚はそこで固まっていろ!」


 オレはそう言ってターゲットであるホルスタインに駆け寄り、


「さぁ、おとなしく俺と一緒にきて貰おうか。逆らうと言うならばオレは今からおまえの実った果実をたっぷりと味合わせてもらうことになるぞ」


 と口を動かして言ったら、凄まじく蔑んだ目で見られましたよ。後でよく考えてみると正義のハンターというよりも悪役みたいなセリフだ。やはり、ハンターにこのタイプの仕事が来るのが間違っているのだ。普通の依頼と違って特殊過ぎる。


 だから、いつものオレの馬鹿な願望が出てしまったのは御愛嬌という奴だな。そんなことを思いながら、この後にどうやってホル子ちゃんを説得しようか考えるのであった。


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