女王と茶会 2
「『余の質問に、全て正直に答えよ』……其方の父親が、魔力持ちを集めているのは何の為?」
「知らないですわ」
私と会うというのに魔法を相殺する側近がいなかったのは、やはり彼女が何もしらないからか。
メラニアの回答に、つい、落胆が隠せない。
「ならば、メラニアよ。其方の屋敷で、魔力持ちの子ども達を見たことは?」
「ありません」
「他、子ども達が閉じ込められていそうなところは? 何か、人や物を隠せそうな場所は知らぬか?」
「……屋敷に地下室が、あります」
「……その地下室に行ったことは?」
「ありません」
「では、話を変えよう。そのルビーのネックレスはどうした?」
「お父様がくださったの」
「では、メラニア。其方の父親は、誰とよく会い、誰とよく手紙を交わしている?」
「会っているのは……領官の方と、父の側近たち。それから、アドコック伯爵とスコット伯爵と……あとはカメオ商会の方たちにも会っているかしら。手紙は……会っている方とよくやり取りされているみたい。それから、セルデン共和国の方ともよくやり取りをしているみたいね」
ああ、やっと聞きたい話が出てきた。
「……何故セルデン共和国と連絡を取っているか、其方の父親は何と言っている?どんな内容のやり取りをしている?」
「スレイド侯爵領に安寧をもたらす為には、国交がなくとも隣国と連絡を取り合うことは必要だと言っていました。手紙の内容は……流石に教えて下さいませんので、知りません。ですが、お父様の努力は実り、随分と親しくさせていただいているのですよ?このルビーも、元はセルデン共和国から贈られたものと伺っています」
……やはり手紙の内容までは、彼女も知らないか。
とは言え、ルビーがセルデン共和国のものだということが確定したのは大きい。
「そうか……『もう、良い。其方は忘れていた扇を持って、帰れ。余と話したことは、忘れよ』」
メラニアは、私の言葉通りにそのまま何事もなかったかのように去って行った。
「……聞いていたな、トミー」
私は誰もいないところに向かって、呟く。
瞬間、その場にトミーが現れた。
「はい、バッチリ」
「……スレイド侯爵領に、不自然に子ども達が増えた痕跡は無かったのだな?」
「ええ。まさかと思いますが、ルクセリア様は……」
「セルデン共和国に魔力持ちの子ども達を送り込んでいるのではないか?屋敷にもいない、領地にもいないとなると……その可能性が高い」
「商品として送り込まれるまでの間は、地下室に監禁しておけば誰の目にも触れない。……そういうことですね?」
「ああ。そして魔力持ちの子ども達の対価として、金やらルビーやらを貰っていると考えられる」
「……屑ですね」
「ああ。……セルデン共和国とエトワールの調べを強化せよ」
「セルデン共和国には既に何名か潜らせています。彼らに今回新たに判明したことを伝えておきます」
「うむ、任せた」
トミーが部屋から去った後、私も自室に戻る。
「本日は、お疲れ様でした。ルクセリア様」
アリシアの出迎えに緊張の糸が途切れると共に、力が抜けた。
深呼吸をしてから、カウチに深く腰掛ける。
「ありがとう、アリシア。貴女も、今日はお疲れ様」
「いえいえ。無事、最後までいれて良かったです。何だか、今日はご令嬢たちが大人しかったですね」
「あら、アリシアもそう感じた?実は、私も」
「やっと、ルクセリア様の素晴らしさを皆も分かったようで、嬉しいです」
アリシアの感想に、思わず笑みが漏れる。
「……と、言うよりも。最初から喧嘩を売るべきではなかったのよ。誰に喧嘩を売っているのか自覚も無く、喧嘩を買われる覚悟もないのに、ね」
私の小さな呟きに、アリシアは首を傾げていた。
「何でもないわ。それより、アリシア。少し、甘いものを持ってきて貰えない?折角の茶会だったのに、何も食べられなかったから」
「畏まりました!すぐに、お持ちしますね」
「ええ。お願い」
記憶を無くしても、変わらぬ笑みを浮かべるアリシアを見送りながら、私は襲い来る眩暈と戦う。
……段々と症状が悪化している気がする。
今日、魔法を使ったのは数度だけ。
それでも立っていられない程の、激しい目眩が襲っていた。
自分でも、分かっている。この目眩の原因は、魔力回路が壊れているせい。
魔法を使い続ける限り症状は悪化し続け、治ることは決してないと。
……けれども、それでも。
それでも、私は自分の魔力を使うことは止めない。復讐劇に、必要な限り。
……お願い。
お願いだから、もう少しだけ保って。
全てが終わったら、後はどうなっても良いから。
そう言い聞かせながら、私は呼吸を整えるべく息を吸った。




