475:冬季合宿三日目・ナルVS子牛寮 -決闘後
「「「ーーーーー~~~~~……」」」
マスカレイド解除に伴う転移によって舞台の外へと飛ばされた俺の耳にまず入ってきたのは、観客たちのざわつきだった。
うんまあ、ざわつくのは分かる。
俺が人前で負ける事自体がまず滅多に無いし、それが一年生相手となると本当に少ないと言うか、想像すらしていなかった生徒が大半だろうしな。
「よう。気分はどうだ。翠川」
「どうと言われても……特に何もないが?」
「あー、まあ。お前はそうだよな。裏ではちょくちょく負けているとは聞いているしな」
と、ここで縁紅が近づいてきて、声をかけて来るが……うん、目眩とかは一切ないので、何もないとしか返しようがないな。
さて、それはそれとしてだ。
「煙幕の中、ゴールドバレットが背後から近づいてきて、至近距離で俺の頭に向けてぶっ放した。これは合ってるか?」
「合ってる。と言うか、普通に反省会に入るのか」
「そりゃあ。この手の反省会は、最初のは出来るだけ早くにやるべきものだしな」
反省会の時間だ。
俺にトドメを刺した攻撃はゴールドバレットのスキル『ペネトレイトショット』によるもので間違いない。
しかも、ただの銃弾ではなく、ゴールドバレット自身の『チャージ』と『ピアースバレット』に、バラニーの『C・射撃強化』まで載せた、貫通性能に特化した銃弾である。
ここまではいい。
問題は……何故、あの距離で攻撃されるまでゴールドバレットの存在に気づけなかったのか。
この点だ。
「視覚はバラニーの『C・煙幕生成』で塞がれていた」
「そうですね~」
いつの間にか羊歌さんと吉備津も来ているな。
観客は……残って俺たちの声に耳を傾けている人も居れば、早々にこの場を離れた人も居て、人それぞれだな。
「聴覚は……思えばサンコールの『ラウドボイス』だったか。アレで幾らか阻害されていたな」
「そうだね」
「でもそれだけじゃないな。これだけだったら、ゴールドバレットのスキルを発動するための声を隠せないし、移動音だって出る。となると……その辺りはバラニーとゴールドバレットのスキルか」
「そう言う事ですね~」
「まあ、詳細は明かさないけどな」
つまり、三人がかりで俺の聴覚による感知も防いでいた、と。
ついでに魔力や気配の類も感じていなかったので、その辺りの阻害も働いていた可能性もあるな。
「要するに、俺の防御を突破できる攻撃を不意打ちで急所に撃ち込む事での即死狙い。これが、縁紅たちの戦術だったわけか」
「正解。ま、決闘前に言った通りだな。三対一の時点で無様なんだから、使える手段は何でも使う。これだけの話だ。誇る気なんてねぇよ。と言うかだな、翠川」
「ん?」
なるほど。
色々とやっていたが、俺の守りを突破するためにどうするかを考えた結果がアレだったわけか。
となると、次に同じような戦術を取られた時にどうやって対処するかを考えないといけない訳だが……それを考える前に縁紅が少しだけ語気を強めて声をかけて来た。
「ナルキッソスの頭の堅さはどうなってんだよ、アレは。不意打ちで、至近距離で、貫通特化の弾丸を更に貫通特化させるスキルで撃ち込んでなお貫通せずに、ナルキッソスの頭部の内側に留まっていたぞ」
「?」
「何を言っているんだって顔をしているが、マジでそうだったぞ。一瞬防がれたかと思って、俺は内心では少し焦ってたぐらいだった」
「へー」
どうやら、あれだけ強化を重ねてもなお、俺の防御を破れるかギリギリのラインだったらしい。
と言う事はだ。
「じゃあ、反応さえ間に合っていれば、魔力を集める事で防げてたか。後は脳みそを鋼鉄みたいな質にするのもありだったか? 脳みそだって全部の部位が生命活動に関わっている訳じゃないしな」
「翠川。それで生き残ったら俺はお前を化け物扱いせざるを得ないんだが?」
「ははは、流石に冗談……だよね?」
「どうでしょうね~。なにせ~翠川さんですから~」
守り方次第では防げていたかもしれないな。
まあ、脳みそを鋼鉄にしたら、仮面体の物とは言え脳みそなので、何かしらのデメリットはありそうだけども。
そして、それを口にしたら、縁紅たちから揃って化け物を見るような目で見られた。
うーん、決闘中に吉備津に対して言ったけれども、仮面体である以上は全ては魔力で出来ているのだから、イメージ、技術、それに魔力が十分に揃っているのなら、別に問題なく出来ると思うんだよな。
現に麻留田さんのシュタールなんて生身の部分があるか怪しい状態だけれども問題なく動いているし、『パンキッシュクリエイト』の面々だってアンデッドと言う生命活動を行っていない仮面体なのに問題なく動いているのだから。
「うん、コマンダー戦で相手がどう動くかも含めて、いい経験は積ませてもらったな。ありがとうな、縁紅たち」
「おー、そうか」
「うーん、今回は三対一だから勝てたけれど……」
「次に戦う時はどうしましょうかね~。次回は~今回より~絶対にきつくなりますよ~」
とりあえず今日の決闘は結果こそ負けであるが、経験については非常に良い物だったな。
そうして俺は縁紅たちと握手をしてから、この場を離れた。




