472:冬季合宿三日目・ナルVS子牛寮 -決闘前
「レディースエーンドジェントルメーン! それでは本日一番の決闘と参りましょう! まずは東より……『玲瓏の魔王』ナルキッソス!」
「「「ーーーーー~~~~~!!」」」
「おー……」
さて、今日もやって来た決闘の時間である。
昨日から変わらず照東さんが司会を務め、観客席は満員御礼……見学する生徒でいっぱいである。
うん、やっぱり俺の決闘はもう教材扱いだな、これは。
ただ、今日の俺が驚いている理由はそこではない。
「続けて西より……子牛寮の三人、ゴールドバレット! サンコール! バラニー!」
「「「ーーーーー~~~~~!!」」」
「本当に持ってきたのかって顔をしてるな」
「そうだね。まあ、そう言う顔をしたくなる気持ちは分かるけども」
「頑張りました~」
マスカレイド用のデバイスを身に着けた縁紅と吉備津がの二人だけが舞台上に移動し、羊歌さんは舞台に接続された機械の台の方へと登る。
そう、機械の台……コマンダー戦用の設備である。
「そう言うゴールドバレットたちだって、正気か? って感じの空気が言葉に滲み出てるぞ」
「俺たちの気持ちが分かっているようで何よりだ。まさか朝一番でいきなり作戦やら何やらを言われるとは思っていなかったからな……」
「僕もゴールドバレットも驚いたよね。まあ、それと同じくらいにナルキッソスがコマンダー戦にする事を認めたのも驚きだけど」
現状、コマンダー戦は専用の機械が必要になる上に、双方が事前に合意する事が必要となっている。
また、コマンダー役とは別に決闘の舞台に立つ決闘者が必要と言う事で、基本的に一対一の決闘しか行われない予定であった今回の冬季合宿では出番など無いはずだった。
が、俺と子牛寮、一対三の決闘を行う事になった羊歌さんは家の伝手を利用して、『ホテルアバランチ』には無かったコマンダー戦の為の機械を朝一番で搬入。
その足で縁紅たちの許可を得て。
更には俺の許可も得る事で、今この場にコマンダー戦を持ち込んだのであった。
なお、言うまでもなく教師陣には事前に許可を得ている。
で、俺がコマンダー戦を認める事にした理由だが。
「俺もコマンダー戦……特に片方にだけコマンダーが居るような状態の決闘をしたことは無いからな。経験は積める内に積んでおきたかったんだよ」
「なるほど」
まあ、冬季合宿だし、今後の俺の事も考えると、コマンダー込みの多人数の経験は欲しかった。
ただそれだけの話である。
俺の能力的にこの先もありそうなことだしな。
「後、バラニーの能力と俺の相性を考えると、コマンダー役にでもしないと空気になりそうな気がした」
「言ってくれますね~」
「ヒュウ。言うじゃねえか。流石はナルキッソス」
「言ってくれますね~男性陣三人ともに~」
「待って!? 何で僕も巻き込まれてるのかな!? 賛同したのはゴールドバレットだけだろう!?」
「止めない時点で同罪と言う事ですよ~何もおかしくはありませんね~」
それはそれとして、失礼にならない程度には挑発もさせてもらうが。
ま、羊歌さんの声の調子からして、今この場で一番動揺しているのは吉備津っぽいが。
「ナルキッソス」
「なんだゴールドバレット」
と、ここで縁紅が声をかけてくる。
「先に言っておく。三対一の時点で無様極まりないんでな。俺たちはこれ以上の恥の上塗りは何とも思っていない。だから、俺たちは勝つためなら、ルールの範疇内で何でもさせてもらうぞ」
「へぇ」
「その上で言わせてもらう。あの時の俺と同じとは思うなよ」
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ」
あの時……入学した直後の決闘騒ぎの頃か。
あの時と一緒?
そんな事思えるわけがない。
直接の対峙は無くても、色々な場面で縁紅の力は見かけているんだ。
あの時の縁紅と今の縁紅とでは、実力も何も別物に決まっている。
勿論、今の方が圧倒的に強いと言う形で。
「三対一で何を言っているんだとは言われそうだけども。僕も先日のリベンジをさせてもらうよ」
「来い、返り討ちにしてやるよ」
吉備津も油断は出来ない。
先日のガミーグの件で圧倒できたのは、一対一の上に、吉備津の守る対象がガミーグとか言うどうしようもないものだったからだ。
「それでは~そろそろ始めましょうか~」
「おう」
「だね」
「そうだな」
羊歌さんも当然厄介だ。
決闘者として舞台に上がるのなら、得意とするデバフは俺には通らないし、速攻で落としてしまえば終わりだけれども、コマンダーとして動いてくるのなら、何をしてくるか分かった物じゃない。
つまり、この三対一は全く油断ならないと言うか……。
ぶっちゃけ、俺が負ける可能性の方が高いと思うくらいである。
だが、それでも俺がやる事は変わりない。
全力を尽くして、目の前の相手に対処するのみである。
「さあ、場も整ったようです! それでは始めましょう! 両者構えて! カウントダウン! 3……2……1……0! 決闘開始!」
そうして決闘が始まった。
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「マスカレイド発動! 魅せつけろ、『玲瓏の魔王』ナルキッソス! 『グローリードレス』!」
ナルがマスカレイドを発動し、バニーガール衣装を身に着けたナルキッソスが姿を現す。
そして即座に発動したスキル『グローリードレス』の効果によってバニーガール衣装は仄かに輝き、ナルの脚力を強化すると共に、攻撃する度にランダムな属性ダメージを与えるバフを得る。
「マスカレイド発動! ぶち抜け! ゴールドバレット!」
「マスカレイド発動! 輝き照らせ、サンコール!」
「マスカレイド発動~メェメェとおいで~バラニー~」
同時にゴールドバレットたちもマスカレイドを発動する。
三人の仮面体は常見かけているものと変わらない。
そして、マスカレイドを終えると同時に、ゴールドバレットたちは直ぐに動き出す。
つまり……。
「『ハイデクスタリティ』『エンチャントフレイム』『ラウドボイス』……さあ、まずは僕の相手をしてもらおうか!」
「!?」
手に持つ軍刀に炎を纏わせたサンコールが、妙に大きな音と共にナルに向かって切りかかった。




