447:新年明けて神社にて
「かしこみかしこみ申す……」
本日は2025年1月3日。
俺の誕生日であるが……まずは新年の初詣であり、お祓いである。
学園内にある神社で。
と言うわけで、俺は正座し、指示通りに頭を垂れたりなんだりして、俺の心身に付いている悪いものを払ってもらった。
実感は無いが……効果があるのは信じたい。
「しかし……神社とお寺と教会がお隣さん同士って大丈夫なのか?」
「さあ? 大丈夫かどうかは私にはちょっと分からないかな」
「マリーも同様ですネ」
「それぞれの施設の為に土地を貸している方が同じだそうなので、その方は良しとしているのでしょう」
そうしてお祓いが終わった後。
俺たちは学園の生徒が巫女のアルバイトをしているのを見つつ、お守りなどを購入。
それから境内を見て回るのだが……うん、神社とお寺と教会がほぼ同じ敷地にあるって、凄いカオスな状況だと思う。
神様に怒られたりしないんだろうか?
そんな事を思っていた時だった。
「あーでもそうだね。うん。アビス曰く、場はキレイに整えられているが、何かが居る気配はしない。新築の空き家のようだ。らしいよ」
「「「……」」」
スズが小声で、俺たちにだけ聞こえるように囁く。
その言葉が意味するところは……神様が居れる場所にはなっているけれど、神様当人は居ない、と言う事になってしまうのだろうか。
え、俺のお祓い、意味あったのか?
「お祓いの方は大丈夫だと思うよ。場をキレイに整える事が出来ているって事は、宮司の方にちゃんと力があるからこそだろうし」
「そ、そうか。そうだよな」
俺の疑問については、スズが心を読んだかのように返してくれた。
「うーん、実はこの前アビスが言っていたんだよね」
そして、続けるように、スズが先日アビスから得た情報を話してくれる。
それは神様が居たという痕跡がこの世界の何処にも無いという事実。
神話の描写から読み取るのなら、あって当然のものが無いという違和感。
なるほど、女神以外の神様が今現在居ないのは、人間が魔力を失ったとされる期間に何処かへ去ってしまったで話が通るけれど、痕跡すらも残っていないというのは……確かに気になる話だな。
「思えば女神は外宇宙から来た説とかあったか。そうなると地球の神々は……自分たちの痕跡を徹底的に消した上で、逆に外宇宙へと出て行った?」
なんとなくの思い付きだ。
根拠なんてない。
おまけにこの説が正しかったとしても、なんで痕跡を消す必要があったのかと言う、非常にシンプルなツッコミどころがある。
「何故神々は居なくなったのか。神々は今どうしているのか。分からない事って世の中には沢山あるよね」
「いっそのこト、世界5分前仮説でも持ち出してみましょうカ。本当の意味での創造神なラ、それぐらいできるでしょうシ。痕跡がない事の説明も簡単ですヨ」
「知識・記憶も含め、世界の全ては5分前に出来たものである。と言う哲学の思考実験の一つでしたか。否定は出来ませんね。肯定も出来ませんが」
マリーの言う通りなら……確かに簡単ではあるな。
ただ、この場合、今度は女神の存在がノイズになりそうな気はするな。
どうして女神はやって来たのか、どこからやって来たのか。
と言う具合で以って。
ただまあ、とりあえず言える事はある。
「この話は止めておこう。何か頭が痛くなってきそうだ」
「哲学あるあるだね。でも、答え合わせも出来ないから、それで正解かも」
「そうですね。止めておきましょう」
「ですネー」
この手の話は深く考えても頭が痛くなるだけなので、ほどほどの所で切り上げた方が良い。
これだ。
「それよりも、おみくじだ。折角だから引いておこう」
「分かった。何が出るかなー」
「マリーは大吉が欲しいですネ」
「おみくじは狙って引くようなものではありませんよ」
俺たちは4人順番におみくじを引いていく。
えーと、結果は……。
「俺は末吉」
「私は吉だね」
「マリーも吉ですね」
「イチは小吉ですね」
まあ、まずまず。
えーと、願い事や待ち人と言った細かい部分の話となると……。
特に気になる部分は無いな。
学問に励めとかは毎年言われる事だし、恋愛は無理すんなも毎年の事だし、転居は止めておけは……そう言えば、去年の地元のおみくじだけは、しても問題ないぞと言われていたな、今年は止めろと書いてあるが。
ちなみに病気関係は安心しろと言われるのもデフォだ。
案外、おみくじの文章って何処の神社に行っても、年が変わっても、そんなに内容が変わらないよな。
それだけ俺が安定しているというか、外からの影響を受けづらいのかもしれないが。
「ふうん。商売で譲るな、突き通せか」
「全体的に慌てず為せる事を為せと言われている感じですネ」
「……。注意しろと書かれていますね。気を付けます」
でもこうしてスズたちの様子を見る限り、スズたちのおみくじに書かれている内容は俺のものとはまるで別物っぽいんだよな。
こう言うのを見ていると、本当に神様が居ない状態なのかをちょっと疑いたくなってくる。
「さて、これで神社でやるべき事はやったわけだし、『ナルキッソスクラブ』に行って、俺の誕生日会と行きますか」
「うんそうだね」
「ですネー」
「はい」
こうして俺たちの初詣は何事も無く終わったのだった。




