side オボロ
──体が重い。中途半端な受肉のせいか。はたまた御主人殿から離れているせいか。
オボロの手には一振りの刀。緑川を通してダンジョン公社から借り受けたものだ。
──これも、御主人殿のお持ちの新聞紙ソードに比べると心許ない。青級ダンジョン産の宝物らしいが、加減せねばあっという間に壊れてしまう。円殿曰く、現存する最高の一振りらしいからの。壊すわけにはいかん。
制限された肉体。ベストな時の半分以下の力しか発揮できないコンディション。しかしそれでも紫級ダンジョンから溢れ出た通常個体のモンスターであれば、オボロが軽く刀を振るだけで、触れるそばから倒れていく。
「円殿はヘリとやらで待機していてもよいのだぞ」
一振りで周囲に群がるモンスターを殲滅したタイミングで、着いてきていた緑川へと声をかけるオボロ。
「足手まといには、なっていないはずですっ! 私がここにいることに、意義があるはずかとっ」
そう叫びながら手にした薙刀を振るう緑川。確かにその刃筋はオボロから見てもなかなか鋭い。そして確かに緑川のいう通り、その存在はオボロにとっても有り難かった。
──ハードラックは確かに秀逸なユニークスキルじゃ。進化律の手のひらの上で転がされているようなのだけが気にくわないがの。
そのときだった。スタンピードの主が現れる。
それは巨大なスライム。オボロが刀を振るうと、きれいに真っ二つに裂けて、そのまま二体のスライムとなって襲いかかってくる。
「厄介な相手のようだな……」
そのときだった。急にオボロの体が重くなる。
襲いかかってきたスライムの攻撃を避けようとして、僅かに間に合わない。
「オボロさんっ!?」
「っ、すまぬ」
とっさに緑川に庇われてしまうオボロ。
──我は、どうやらクロのボディとの相性が悪すぎるようだの。徐々に体のキレが落ちてきているっ。
強ばる体を無理やり動かし、再び刀を振るうオボロ。スタンピードの主たるスライムがさらに裂けて四体になる。
その時だった。急に体が温かくなる。誰かの気配を背後に感じるオボロ。
──これは、御主人殿っ!? いったいどうやって?
オボロの体が、中から作り替えられていく。
一切の痛みも、不快感もなく。
ただただあるべき自己へと。正しい姿へと。
自身が変貌していくのが、オボロには理解できる。
そしてそれらがすべて、ユウトの力だということも。
オボロの真の力が、溢れ出す。




