エピローグ
「お父さん、むしっ! むしっ! お母さんが呼んできてって!」
「はいはい、今いく今いく」
俺は読み終えた新聞紙を軽く丸めていく。
一面トップを飾っていた、月の内側に創られた都市との、国交樹立の記事の写真。
そこに写っていた、あだむと緑川さんの握手をかわしている姿が、新聞紙を丸めるにつれ隠れていく。
「──で、虫はどこに出たって?」
「台所っ! お母さんは逃げてるー」
「そうかそうか。ちゃんとお父さんを呼べて、偉いぞー」
不思議なことに生まれながらに銀髪の娘の頭を、俺は片手で撫でながら褒めると、丸めた新聞紙を手にして、台所へと向かう。
「あー、あれか」
「ね、ね。あれってレアなの? もしかしてモンスターだったりする?」
「あー。確かに普段見ないような形をしてるよね。それにしても、モンスターだなんて、よく知ってるな?」
「昔は、モンスターって、いっぱいいたんでしょ! 動画で見たの」
「そうかそうか。そうだね、確かに昔はダンジョンもモンスターもいたんだよ。ただ、残念ながら、それはレアでもモンスターでもなくて、ただの害虫っ」
そう、娘に告げながら新聞紙を掲げ、次に一気に振り下ろす。
その速度は、俺が若かった時の何十倍も遅い。
しかしながら、寸分違わず狙い通りに振り下ろされたそれは、一撃で害虫をとらえ、息の根を止める。
「わぁ、お父さんすごいすごい──でも、気持ち悪いかも……。お母さんに、お父さんが倒したよーって言ってくる!」
倒した害虫の残骸を見てしまったのだろう。そのまま、逃げるように走り去る娘。
その後ろ姿をやっぱり母親似だな、と苦笑しながら見送ると、俺は倒した害虫の残骸が妻の目に触れないうちにと、片付け始めるのだった。
fin
ここまでお読み頂きありがとうございました。
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「冷蔵庫にダンジョンができたけど、俺は潜りません。スキル【創成AI】で創った探索者さんたちにお任せしてます」
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