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NPCがわたしを"推す"! VRMMO (あれ? 推してるのわたし!?)  作者: 麻莉
シーズン1 2章 絶望は断ち切れ、希望は繋ぎ紡がれる
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好奇の視線よりも信じた主を見る

保存し忘れて、データが消えていた麻莉です。


「ティーグル」


 中世ヨーロッパのような文明をモチーフにしているエリアとなっている。「ティーグル」は城を中心に建設された城塞都市。巨大な岩壁に覆われている都市でファンタジー全開の世界となっていた。



「首が痛い......」


「そんなに上げるからだよ」


「だって、城だよ!!」


 私たちは「ティーグル」のメインストリートを歩いている。


「それにしても......ユミナ。そろそろ教えてよ」


「うん、何を?」


 ()()()()()()は親指と人差し指を使って輪を作る。


「あの人たちにいくら払った」


「やっぱり言うと思った」


 私と()()()()()()の目線の先には......


「お嬢が首を痛める理由が分かるぜ!」


「お城ですか......あんな頂上にあって大丈夫なんですかね」


「まぁ、敵からは丸見えですね。何かしらの対策はあると考えられます」


 タウロス、アリエス、ヴァルゴ。三人とも物珍しそうに周りにある数々の建造物を眺めている。

 そして、案の定とでも言うのか。目立っている。ヴァルゴが好奇の視線はどうでも良いのは知っているけど、タウロスとアリエスも同様だったとは驚きだった。

 意外と星霊たちって鋼の精神を持っているんだね......


 ヴァルゴたちを見ている人々。主に女性陣は目がハートマークになっているのが見えた。

 勇気を振り絞って話しかける女性陣。三人の周りには人だかりが形成されていく。


「模範解答みたいな受け答えしている。ユミナの仲間は芸能人だったのか」


「いや、あれは......なんでもない」


「まぁ、確かに声を掛けたがる容姿だよね。スパダリ・清楚・ケモナーが好きな人には天国みたいな光景だろうな......あれ」


「もう慣れたよ......それよりも休憩したい」


「じゃあ、あそこに行きますか!」


 私は三人に声をかける。

「三人とも行くよ!」


 私の声に反応したヴァルゴに腕を引っ張られた。今の私はヴァルゴに体を預けている状態。



「皆様のご好意は大変嬉しいですが、私には心に決めたお方がいますので」



 ヴァルゴは微笑み、柔和な表情が溢れていた。


 急に何を言い出すんだぁあああああああ!!!?!??!? この騎士は……

 ヴァルゴの発言と私を凝視する女性プレイヤーたち。

 彼女たちは段々、羨ましい表情を私に向けていた。


 いたたまれない状況に耐えれず、ヴァルゴの腕を引っ張り、その場から離脱することにした。

 皆さん、私たちを温かい眼差しで見送っていた。









 タウロスとアリエスはアクイローネへついていく。

 その後ろを私とヴァルゴが歩いている。


 私はヴァルゴの鎧を、腕の上下運動でポコポコと叩く。


「バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ」


「地味に痛いので止めてください、お嬢様」


「敢えてやっています。罰です」


 自分の行動に意味がないとでも思っているのか。



「何、公衆の面前でアホなことを言うのよ」


「......お嬢様が長い眠りにいる間、私は考えたのです。今まではお嬢様に黙って攻められる不甲斐ない私でした。しかし、今度からは私から攻めようと考えたんです」


「だったら、他人がいないところでやってよ!!」


「実は先ほどの方々から”せふれ”? だったり、私のぺっと? になりたいなどと言われてしまって......」


 あの人たち、私の従者に何余計な知識を与えるのよ。最近のVRゲームには優秀なAIが搭載されているらしく

 NPCが私や他人の言葉を理解しようと勝手に動くとか。今度は厳戒態勢をしかないと、私の従者が変なことに興味を持ってしまう可能性が出てくる。


「言葉では解決できない状況でしたので......」


「それで、私を使って事を納めたのね。免罪符的な......」


「彼女たちは誰もが魅力的でした。ですが、私が見ているのはこの世でたったお一人です」


 眩しい表情を浮かべるヴァルゴ。

 その顔はやめてよ......恥ずかしいから。本当に油断するとこっちがどうにかなりそうだよ。


「あのような行動をした理由は分かりました。ですが、今度からはダメですからね」






 私は歩を進める。


「ダメなんですか」


 振り返る私。ヴァルゴと目が合う。


「あ、あ、当たり前です。ほ、ほら、行きますよ!!」


 ヴァルゴの口角が微かに上がる。

「..........................................はい」



 実の所、小道にいるがその場でログアウトしたい。そして、早くベットに入って静かに過ごしたい。

 頬が染まるのを感じる。頬へ集まった熱量はアバターの体を鎧のように覆ってみせた。

 口を開くが腕で塞ごうとした。少し遅かったらしく、発した言葉が漏れた。

 幸いだったのが誰にも聞かれていない点だった。


「..........................................ばかっ」

























 ()()()()()()に案内されたのはメインストリートを抜けて小道を進むとあるカフェだった。カフェのテラスで休憩する私たち。


「落ち着きますね」


 紅茶を飲みながら風で揺れる木々を眺めるアリエス。流石は元聖女様。非常に立ち振る舞いが綺麗。

 なんてことのない風景にちょっとしたスパイスがかかることで一枚の絵画になったみたいだった。


「酒が置いてなかった......」


「ここはカフェです。そもそも置いてないし、他のお店でもこんな明るいうちからお酒があるわけないでしょう、タウロス」


「アタイのエネルギー源は酒だから〜」


「酒乱はほどほどにしてください。昔、タウロスとレオが酔って、周りの物を破壊していたでしょう」


「そんなこともあったな〜 まぁ、若気の至りってやつだ」


「”若気”が適用される年齢でしたっけ。あの時の私たち......」


「言わないでください......悲しくなります」


 コーヒーを一口含むヴァルゴ。


「お嬢......ユミナ様。いかがですか、私が選んだコーヒーは」


「美味しいわ。ありがとう、ヴァルゴ」


「コーヒーのことでしたら任せてください!!」


「あとさぁ〜 良い加減に私を”お嬢様”か”ユミナ様”のどちらかに呼び名を統一させてよ。ここままじゃあ、私の名前が”お嬢......ユミナ様”になるんだけど......」


「は、恥ずかしくて......えへへへ」


 ニヤニヤしながら体をくねくね動いているヴァルゴにタウロスとアリエスが呆れ顔になっていた。


「キモいぞ、ヴァルゴ。これがあの冷酷騎士だとは慣れないな.....」


「ここにはアタシたち以外がいるんですから。アタシたちの行動一つでユミナ様の顔に泥を塗ることになります」


 アリエスの言葉に我を戻したヴァルゴ。咳払いをする。

 ヴァルゴは()()()()()()に挨拶をした。


「ゴホンッ。失礼しました。改めて私はヴァルゴと申します。お嬢......ユミナ様の従者をしています」


「同じくアリエスと申します。ユミナ様の従者です」


「アタイはタウロスだ。お嬢の従者をやっている、よろしくな」


「タウロスは言葉遣いを学ぶ必要がありますね」


「良いだろう、堅苦しいことは苦手なんだよ」


「数秒前のアタシの言葉が意味を成していない」


 三人の痴話喧嘩? がまた始まった。



「ねぇ、ユミナ」


「いちいち驚くと疲れるよ〜」


「どんな手段で美女・美少女を侍らせたのよ。コツとかあれば教えてよ」


「”従者”ね。これ大事なこと、変に曲解しないでよ」


「私だって、美人NPCと冒険したいのよ」


「そのうちね。で、これからどこに行く?」


「もう決めている」


 ()()()()()()は地図を取り出し、指を指した。

「夏ってことで......お化け退治しましょう!!」


 地図上に名前が表示される。

「......叫棺(きょうかん)の洋館」


 なんともお化け屋敷に相応しい名前だこと。

 ため息の私。だけど、ヴァルゴたちは別だった。


「お化けですか、面白そうですね!」


「アタイ、洋館行くの初めてかも!」


「洋館って、内部は普通ですよ。でも楽しみ!! もしかしてお化けなら......」



「ユミナの女たち。意外とノリ良いわね」


「”女”じゃない、”従者”......はぁ〜」


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― 新着の感想 ―
[一言] ユミナはもう乙女座ちゃんの魅力にハマってます
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