VS機械生命体 ②
◇◇◇◇◇◆
海。視界に広がるのは母なる海。生物皆、初めは海の生命体だった。が、生まれながらに海を必要としない存在もいる。宇宙からの落下物。機械生命体からの侵略者が1体。
銀色の卵は海中に沈み、海の中で身体を形成した。その際、周りに泳ぐ生命体を採取。自身の身体に吸収していった。他の機械生命体同様、二足歩行の巨大な機械。しかし、既に他の機械生命体とは違うフォルムとなっている。
水棲生物を大量に取り込んだ機械生命体、破壊界:【破娯十三饗】の13位:ユーズゥ・マクスカ軍所属、アボドカ・チキチーズン。アボドカ・チキチーズンの腕、脚、胴体、頭、背中に至るまで、吸収した生物が造形として付与されている。
サメ、クジラ、エイ、タコ、イカ、カニなど様々な海の浮き物を模した機械生命体となった。アボドカ・チキチーズンは索敵タイプの機械生命体。分析、解析、調査を得意とする。
機械生命体の身体に使用されている金属は、あらゆる惑星に適用できる素材となっている。機械生命体星にはない”水”でさえも、特徴を読み取り、自身に反映。
脅威となる外的存在を極力排除。本隊の部隊にも同様の処置を施すためにデータとして転送。同じ宇宙に本隊が入れば、情報集積を送るのに時間は掛からない。しかし、アボドカ・チキチーズンと本隊との距離は遠い。データを送るにはさして問題ではない。
が、やはり本隊に惑星オニキスで採取したサンプル、環境への適用などのデータが到着するのは時間が必要となる。アボドカ・チキチーズンの目的は本隊を待つことではない。与えられた任務の一つは完了している。アボドカ・チキチーズンが与えられた任務は3つ。
一つは惑星オニキスのサンプル採取、本隊へ情報転送。アボドカ・チキチーズンが立っている”水”の情報は送信した。遠くに見える機械生命体星にはない物体。別惑星に侵攻した際に入手した物体に酷似している。”グランド”と別惑星では呼称されていた。酷似しているからと言って、任務を放棄する訳にいかない。アボドカ・チキチーズンに自律した行動は許されていないのだから。
任務2つ目、3つ目は先発隊5体全員に与えられたモノ。特殊な役割を持つ機械生命体は他に追加で任務を受ける。2つ目の任務内容、『惑星オニキスの侵攻』。破壊界全体の総意。他者を喰らい、他者を支配する。
3つ目は破壊界の王に望み。そう、ユーズゥ・マクスカから伝えられている。『星霊を回収』。これこそ3つ目の任務内容で、最も難易度が高い。
下の方が騒がしい。見下ろすと”水”に浮かぶ物体の上に人間が立っていた。”人間”の情報は大昔の侵攻時に採取済み。数体のサンプルを持ち帰り解析は済んでいた。
が、どうやら以前の情報と大幅に修正する必要がある。一切の怯みがない。注入された記憶では、人間は機械生命体に怯え、恐怖し、逃げ惑うしかできなかった。
しかし、アボドカ・チキチーズンに近づく者は浮かぶ物体を操り、こちらへ攻めてきた。明らかな敵意。アボドカ・チキチーズンの情報集めも増えていく。腕を伸ばし、摘んだ。
不運な小型船に乗っていたプレイヤーたちは空中高く持ち上げられる。逃げる気配はない。それどころかアボドカ・チキチーズンの顔面に向かって果敢に攻撃を繰り出していく。
アボドカ・チキチーズンは人間をじっくり観察した。自分の顔が攻撃を受け続けているのに。人間の表情が違う。口を大きく開き、瞳は絶望とは真逆の動き。身体から溢れる平和界と同等の力。平和などを謳い、笑顔が絶えない忌まわしき同胞であり、粛清対象。
頭のクジラ部分が稼働する。船に乗っていたプレイヤーたちは丸呑みされた。プレイヤーがいなくなった船を興味深く眺めるアボドカ・チキチーズン。宇宙船を”水”でも使えるようにした道具か。
小さいが、人間には十分な道具ということか。入手した小型船も頭部に食わせた。取り込んだ人間と小型船の情報を整理し、本隊へデータを転送した。
「......以前の人間とは言語形態が違ったのか」
アボドカ・チキチーズンは口を開いていなかった訳ではない。寧ろ下にいた人間と会話をしていた。アボドカ・チキチーズンは惑星オニキスの情報を集めるのが任務。情報集めには対話も必要だ。
が、アボドカ・チキチーズンが話しても相手からの返答がなかった。侵襲してきた相手との会話など不要だと敵は考えたのだろう。アボドカ・チキチーズンは敵を確保することに行動を移していた。吸収した人間を分解、解析、適用した事で、現在惑星オニキスで使われている言語の取得に成功したアボドカ・チキチーズン。
実際は入手した言語とは異なっていただけというシンプルな答えだった。
下で今尚、アボドカ・チキチーズンを攻撃している人間の声も聞き取れる。
『あら、意外と良い声しているのね♪』
空中に漂う女。人間のメス。情報に誤りはない。が、一部訂正が必要だった。下半身の生物体系が異なる。アボドカ・チキチーズンが吸収した海の生物の尾に似ている。
『吸収した生物を取り込んだ結果だろうね!』
海から迫り上がる水柱。その頂上に仁王立ちしている女。先ほどの空中に浮かぶ女とはやや幼く見える。
ピスケスは周囲を見渡した。
「あれ? キャンサーは?」
「『当機、濡れる、ヤダ』とか言って別の機械生命体討伐に行ったわ」
「何故に片言。ってかアイツが一人称変えるの、めんどくさい役回りを回避する時の常套句じゃん」
「ま、良いんじゃない。競争相手が減るに越したことはないわ」
「そんなにユミナ様と子を成したい?」
アクエリアスはそっぽ向く。
「べ、別にイモナちゃんは何れ、このわたくしとの間に愛を結晶を育むのですから。早いに越したことはありませんわ」
明らかな動揺。アクエリアスの純真さは衰え知らずって所。
「まったく僕の質問に反論できていないし、お前も一人称おかしくないか」
「そ、そういうピースはどうなのよ!!?」
「う〜ん、僕はいつかの為に手段が欲しいだけかな〜 思い立っても手段がなくちゃ道は開けないし〜」
海中から飛び出したのは、2匹のクロノサウルスを模した魔獣。ピスケスは2匹の魔獣を撫でる。
「ま、最終的にはユミナ様との”愛の契り”は欲しいけど......今は友情の方が大切かな!」
アクエリアスに聞き取れない声量でピスケスは言葉を発した。
「と、とにかく......」
アクエリアスは律動の星奏を装備。ピスケスは右手に嵌めている魚座専用手袋母なる海種の星印で新たな生物を召喚。生きたアンモナイトを模した魔獣を大量に呼び寄せた。
「機械生命体討伐が最優先事項!!」
「星霊としての任務は全うしないと......後が怖いからね」
アボドカ・チキチーズンは聞き慣れた単語に反応を示した。身体の部位が蠢く。アボドカ・チキチーズンが吸収した生物を模した部材がアボドカ・チキチーズンに同調して武器として拡張されていく。
「お前らを回収する」
大海原での戦火が開戦された。海は暴れ、波は荒れ狂う。プレイヤーも、星霊も、機械生命体も、海中に棲まう知性ある水棲生物たちを巻き込んだ大戦争が勃発した。
一方、リリクロス大陸砂浜にて、機械生命体がプレイヤー&NPCの戦闘を眺めている影が一つ。正体はユミナである。
「今から船を調達して、戦場に赴くのは時間的余裕はない」
見渡す限り、海にいるのはあの機械生命体1体だけ。残り3体。全てリリクロス大陸にいるとは考えにくいけど、少なくても陸地にはいる。ウルウルに指示して、次なるエリアへ駆けた。
「早くしないと......大変な事態になる」
仰々しく言ったが、私の命が危ないんだ。今回は従者全員には申し訳ないけど、私が総勝ちさせてもらう。
自分が一位にならないと...子どもイベントに突入するから、命懸けなのよ




