試合に勝っても勝負に負けた気分
「分離できるとは言え、戦闘中に何が起きるか未知数。くれぐれも気をつけて」
ヒメノは離れる。上空には丁度、黄金の邪悪龍が飛んでいる。屋根に4人いる。バルバトルの姿が見えないけど、アクイローネが何かしたな、きっと。
脚に力を込めて、跳んだ!
「ほへぇ!?」
刹那。雲をすり抜けた。誰もいない空の領域。
くっ! そうか、力が制御されていない。ちょっとした跳躍でも、ドラゴン基準の跳躍になるんだ。完全に私の理解の外側だった。くっ! コントロールが難しい。身体に重力が襲いかかる。落下の一途。ドラゴンの翼を広げても、動かせない。稀代の女王とは根本的に動かし方が違う。稀代の女王は外付けの翼。ある程度、自動で空を飛び、訓練次第で自由に操れる。でも、私の背中に生えているドラゴンの翼は、生きている。人間は翼を持たない種族。翼を与えられても、元々ない器官を動かすにはイメージが必要。自分の筋肉で翼を操るイメージを......
「即興で出来ないよぉおおおお!!!!!!」
雲目掛けて落下。体勢を変え、雲を脱出。見える景色は黄金の国。
『仕方がない』
空中で浮いてる。翼が上手く機能している証拠。
「ドラン?」
『我の担当は、この身体を動かすこと。翼を操るなんぞ造作もない』
「ありがとう!」
『回避は我がやる。ユミナは攻撃に集中しろ』
「OK!」
宙を蹴る。目では追えない速度。目指すは黄金の邪悪龍。迎え撃つ黄金の邪悪龍。拳と拳のぶつかり合い。だが、せめぎ合いも一瞬の事。押し負けたのは黄金の邪悪龍。一直線に地面に激突。
「すごっ!?」
『我が邪龍程度と同類な訳あるか』
「自信たっぷりで羨ましい」
『所でユミナ。この形態の名称どうする?』
「何よ、突然?」
『お前の事だ。名を決めないと、やる気が起きんだろう。我の名のように』
「............じゃあ、【暗黒面の醜聞】で」
『ふ〜ん。で、意味は』
「【暗黒物質】。今の私の気持ち。声だけが良いおじさんが私の身体に入り込んでいる。私の心は暗黒に沈んでいるわ。黒歴史よ、暴かれたくない秘密〜」
『お前なぁ〜 要は闇に関する単語って訳か。良いのか、この身体で【ダークマター】なる言葉で命名すると』
「”すると”?」
「”コイツ、アホだな”とか思われるぞ。白と黒。相容れない色同士だぞ。お前は唯でさえ、人の視線や言葉に敏感な小娘なのに」
くっ......鋭いわね。ま、ドランの言う通りかも。私情は捨てないと。
「じゃあ、【焔妃の白桜神】」
「ほぉ〜」
どうやら気に入ったみたいだ。この限定フォームの名称は【焔妃の白桜神】に決定!
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PN:【ユミナ】:【龍神化-焔妃の白桜神】
職業:①:【魔導龍王】
②:【魔導剣士】
〜装備欄〜
頭:【焔妃の白桜神】:【ドラゴンヘルム】
上半身:【焔妃の白桜神】:【ドラゴンスケイル】
下半身:【焔妃の白桜神】:【ドラゴンテイル】
足:【焔妃の白桜神】:【ドラゴンレッグ】
右武器:【焔妃の白桜神】:【ドラゴンアーム】
左武器:【焔妃の白桜神】:【ドラゴンアーム】
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黄金の瓦礫を退かす黄金の邪悪龍。飛翔。黄金の邪悪龍が真正面から突進してきた。最大火力のドラゴンブレス。ドランの操作で黄金の邪悪龍の攻撃を回避。
「ハハハ!」
私の回避地点に待ち構えていた黄金の邪悪龍。黄金の邪悪龍は、最上級のパンチを繰り出した。
『ふん!』
「なっ!?」
黄金の邪悪龍の攻撃が私の身体をすり抜け、空を切る。黄金の邪悪龍の攻撃は私に当たらない。動揺を見せる黄金の邪悪龍。対照的に笑うドラン。
『この身体全体は我も操れる』
ドランに回避を任せていたお陰で、超高速で動いたんだ。黄金の邪悪龍の攻撃が私に当たる瞬間に残像に切り替えた。私単体じゃ、まだこんな挙動の回避は出来ない。
『我の攻撃だ!』
勝手に動く腕、翼。黄金の邪悪龍に肉薄し、胴体目掛けて右ストレートパンチ。
渾身の攻撃を喰らった黄金の邪悪龍は仰け反り、後退する。
「......ぐぐっ」
思いの外の大ダメージで、黄金の邪悪龍は苦しむだしていた。ドランが練った力は黄金の邪悪龍の耐久を超えた質量の攻撃だったんだ。
ってか、何しれっと主導権奪っているのよ、ドラン!?
『最後は一緒にキメるぞ』
「はいはい......行きますか!」
右拳にドラゴンのオーラが収束する。龍族は内に秘めるオーラを攻防で扱うのに長けている。
左拳には見知ったオーラ。密度の高い魔力だ。私は一応、魔法使いの職もやってる。渦巻く異様な煙は、魔力が外で可視化されているエフェクト。両手を前へ突き出す。異なる二種のオーラが溶け合う。一つに融合し、純白色の魔力が球体となって両拳に纏う。
黄金の邪悪龍も自身を纏う圧倒的な龍のオーラ。黄金の邪悪龍の身体を優に超えた龍の塊。
お互い身構え、足を動かした。敵の存在との距離が詰まる。
「『はああああああああああああっ!!!!!!』」
両拳を突き出し、極大のドラゴンの塊とぶつかる。
身体の残っている力が全て攻撃に変換されていく。強烈で膨大な質量。
黄金の邪悪龍のドラゴンの鎧は消え去る。勢いのまま、黄金の邪悪龍にパンチが炸裂。黄金城に激突した黄金の邪悪龍。大爆発を引き起こした。爆音、爆風が周囲を包み込み、衝撃となって広がり続ける。
『名付けて、ハイパーダブルドラゴンナックル』
「究極に......だ、ダサい」
口を動かすのもやっと。身体が非常に重い。倦怠感が襲う。ステータスを見ると、スタミナが0、MPも0。HPなんて......ジリ貧だよ。私はゆっくり降下した。地面に着地し、座り込んでしまった。同時に【龍神化】が解けた。前に伏せる。ぐったりとしているドランと疲れMAXの私の誕生。
変なウィンドウが表示された。えぇっとー 『一定時間、硬直状態が続きます』、か。か、身体......動かない。た、助けて〜 今の私は尻を突き出してる状態......発情モンスターどもに見つかったら、どんな目に遭うのか、想像したくない......身体、動かない
前方の爆煙の中から、人影が視認できた。
「どんだけタフなのよ」
黄金の邪悪龍だった。私たち以上に全身がボロボロの状態。
「ねぇ、ユミナちゃん」
黄金の邪悪龍の身体に亀裂が生じる。もう長くない証だった。
「臥怒れ邪悪龍は......暴れてた?」
「え、アイツは己の欲求に忠実だったよ」
ま、トドメを刺したのはキレたフェーネさんだけど。この状況で言うのは野暮だね。
黄金の邪悪龍は満足した顔を浮かべる。
「あー楽しかった! そっちは」
黄金の邪悪龍は瓦礫を壁にもたれ掛かる。
「少し思い出した......ありがとう」
高笑いする黄金の邪悪龍。
「あははっ! 敵に感謝って。ユミナちゃん、その感触、忘れないでよ♡」
黄金の邪悪龍の身体に広がる亀裂。
「........................ユミナちゃんなら、私の力を正しい方向に使ってくれそう」
「”正しい方向”って......邪龍に似合わないセリフ」
「ふん。こちら側に足を踏み込むのは、いつでもウェルカムだ、か............ら」
喜びに満ちた黄金の邪悪龍は綺麗に消滅した。刹那、《ユニーククエスト:《黄金の邪悪龍》の討伐》》が完了した。ファンファーレの音楽と共に黄金の邪悪龍の素材が大量に落ちた。
「何よ......私の負けじゃん」
黄金の邪悪龍は自身の幸せを満たした。満足して消滅したから、黄金の邪悪龍にとっては本望。試合に勝っても勝負に負けた気分。黄金の邪悪龍は最後まで龍の矜持に準じていた。
「『その感触、忘れないでよ』、か......」
心のざわつき。マイナスじゃなくてプラスの感情。その最終地点は私が再び”女王”として歩み続けることかもしれない。王を目指した理由、なんだっけ............




