いざ、天使の中枢施設へ
天門を潜った先、豪奢な装飾が施されている石造りの柱や石畳の白い道。木々は生命力に満ちていた。ずらりと並ぶ石造りの建物も白かった。所々に浮かぶ小さき島にも建造物が建っていた。
数は違えど、背中に生やす純白の翼を持つ天使たちが行き交っていた。天界だけど天国をイメージしたかのような壮厳な景色。まさに天上の楽土。召された気分に陥った。
自分の身体を見た。若干青味が掛かった霧に包まれていた。
私含め全員が同じ霧に覆われていた。
ラファエルが答えてくれた。
「その霧は、皆様が天界で過ごす上で護る霧です」
「”護る霧”??」
「天界の住民は、下界に住む生命体よりも俗世に耐性がございません」
「逆に皆様は天界の聖なる力に当てられると、身体に倦怠感がのしかかってくる。それを防ぐ霧だ」
私たちを覆う霧は私たちの身体を護ると同時に、天使族をも護る霧だったのか。特に問題ないから、時間が経てば慣れるでしょうね。
「こちらへ。トップがお待ちです」
誘導されているかのように道が光って見える。
すれ違う天使や遠くで私たちを眺めている天使がいた。もの珍しそうに視線を送っていた。半天使は見慣れているけど、純粋な人間や個性的な生物は初めてらしい。
「彼らは天使になって間もない。なので、皆様の事を興味の対象にしております。天界城に住む天使たちの中には、星霊が活躍していた生き証人も存在しまう」
「3人もずっと生きているなら......カプリコーンよりも年上か」
3人の大天使に落雷が衝突したような音が鳴る。儚げな表情に変わっていた。あれ......不味かった。
非常にご満悦のカプリコーンさん。うわぁ〜 酷い笑顔......
ほくそ笑むカプリコーン。
「そうですね、ご主人様。ウフフ......ッ! 3人は見た目は美しくても、私よりも遥かに年上の歴としたおばさんですから。くっくっくっ......ッ!」
振り返るウリエル・ラファエル・ガブリエル。全員涙を溜めながらカプリコーンに突っかかる。
「アンタに何がわかるのよ!?!?!?」
「僕らがどれだけ肌のケアに命をかけているかぁ!!!!!!!!」
「最近、部下から歩くスピード落ちましたか、って言われたわたしの気持ちわかりますか!!!!!」
「お、落ち着きなさい。大天使の威厳はどうしたのですか」
「「「うるさいッ!!! ムッツリボケミカエル!!!!!」」」
絡まれるカプリコーン。本当に綺麗だな〜 3天使のみなさん。シルクのような顔、柔らかそうな肌。さらさらとした髪で仕事人で激務っぽいな。カプリコーンからしてハードワークしている傾向があるから、同じ大天使も同じ量をこなしているに違いない。天使が他種族と戦争など、戦闘しているかは分からないけど、戦闘中は気にする余裕はないと思う。多少の肌荒れも覚悟しているかも。
「ま、天使たちの言っている事はわかるわ。一生懸命毎日ケアしないと直ぐダメになるからね〜」
「そういうもの?」
「イモナちゃん......まだ若いからって疎かにすると、今に痛い目に遭うわ」
アクエリアスがウラニアの指輪から取り出したのは保湿クリーム、乳液、化粧水だった。
「はい、上げる」
「じゃあ、貰う」
アバターにスキンケアアイテムを塗っても効果ないと思うけど......
3人から天界の様々な施設の説明を聞きながら歩く。観光めいた気分で見ている。アリエスの事が無事に終わったら、天界を冒険するのも良いのかもしれない。
「大きい......後、大丈夫......カプリコーン」
天使の本拠地とも言える巨大な神殿に到着した。私の隣にはなんか異様に疲れているカプリコーンもいる。
「アイツら......3人で1人を襲うとは、性根が腐っているな......早く堕天すればいいのに」
「うん? ”堕天”?」
「お嬢様、簡単に言いますと、エロに目覚めた天使のことです」
「なるほど、理解した(棒読み)」
「変な誤解を招く言い方をしないでくれませんか」
「事実かと。俗世に触れてしまい、堕ちた天使とは何度も対峙してきました。”堕天使”は悪魔でも手を焼く種族ですので」
「ふ〜ん。いつか堕天使にも会いたいかな〜」
勝手なイメージだけど、堕天使ってメチャクチャフェロモンムンムンのお姉さんとか居そうだし。一度会ってみるのも一興かな〜って思うよ。
私の言葉にウリエル・ラファエル・ガブリエルは何かを言いたげな儚い表情をした後、黙って中に入っていった。
最初に潜った門よりも大きい門が現れる。巨大すぎる門がゆっくりと開く。通り抜けた先にウリエル・ラファエル・ガブリエルと恐らく彼女らの部下の天使が待っていてくれた。
私を筆頭に順番に門を通過する。
「うん?」
「えぇ!?」
ヴァルゴとアリエスだけ床から生えた結界に隔離された。




