隠していた事が気付かれた
扉が開く。
『ママ!』
研究室に入ってきたのはアリス。頭からのダイビング。アリスを抱きしめた。
「もうぉ〜 危ないでしょう」
「ママに会いたかった」
くぅ〜 可愛い子。流石我が子。嬉し涙が溢れてくる......っ!
「ユミナ様。申し訳ございません」
謝罪したのはアリス専属のメイド。黒エルフのマチルダさん。
「良いよ、マチルダ。迷惑かけてごめんね」
「ママ! 最近、アリスがんばってるよ!」
「偉いね、アリス。ごめんね、ラボから出してあげれなくて」
「すこーぴおんが言ってた。”今頑張れば、ずっとママとお外で遊べる”って!!」
マチルダと手を繋ぎ、アリスは部屋を去った。
「アリスちゃんの身体が徐々に良くなっているわ、安心して」
アリスは既に死んでいる。兄のフォンラス・アーテン博士の手で復活を果たした。でも、かなり無茶な人体改造が施されていた。初めてスコーピオンやキャンサーの診せたら、いつ死んでもおかしくない状態だと告げられた。でも、しっかりと身体の循環が改善されれば、普通の子どもと同じに生活できると言われた。暫くアリスは治療最優先となっている。
案内された場所。集中治療室のエリア。ガラス越しに病室が見える。私に気づいたアシリア。読書を止めて、手を振っていた。
「アシリアちゃんは問題ないわ。でも、念の為、後2日は入院ね」
別の部屋の前で足を止めた。寝ているアリエスが見える。
「アリエスは......大丈夫?」
「五分五分かしら。日常生活レベルまでは回復したけど、いつ倒れるか分からない。魔法やスキルは当然使っちゃダメ。ましてや戦闘なんてもってのほか」
「治るよね......」
「ハッキリ言うね。絶望的よ。それだけ【呪いの救護】は危険な代物。どうしてアリエスに刻まれたのか原因は未だに不明。言い方が悪いけど、【呪いの救護】を持っていたから星霊に成れて、ユミナちゃんと出逢えた」
「私が呪いを解く」
「当ては?」
答えれなかった。当てなんてない。でも、このまま黙って時間だけが過ぎるのは耐えれない。何かしないと......
「ユミナちゃんは数々の奇跡を起こした。或いは......」
廊下を歩くと広い空間に辿り着いた。
「ねぇ......」
指を指す。
「まぁ、呆れるのも当然ね」
ドランが寛いでいた。何やってるんだ、アイツ。
「ドランは身体中が破壊されてね。修理は終わったけど、居座りを決め込んだのよ。『ここは何て快適な場所なんだぁ!!!』って」
「いつもなら、説教するけど......私のせいだし」
「ヴァルゴのバカのせいで『稀代の女王』も使用不可になったしね」
『稀代の女王』は見事にぶっ壊れ、修理に時間が掛かるとタウロスに言われた。タウロスレベルの鍛冶師でも時間を有するのは、相当損傷が激しいと言うこと。『稀代の女王』だけじゃなくて私の装備類は船での一件で耐久値が減り続けて、あと一歩で全損状態となっていた。
修理が終わるまでは『稀代の女王』は使えない。ま、仮に『稀代の女王』が再装着可能になっても、呼び出すためのドランが召喚に応じないから、戦闘の戦略的に支障はない。『稀代の女王』は使えれば良いやのレベルです..................戦闘か......
身体を伸ばすスコーピオン。
「そろそろ寝ようかしら。ユミナちゃんの部屋で良い?」
「うん。私はOK」
アシリアの病室の扉が勢いよく開く。いつの間にか新しい寝巻きを着ていた。
「私も一緒に寝たい」
「アシリアちゃん......う〜ん。特別よ」
「やった!」
ボルス城に戻ってきた私たち。
「月が出てる......回復させなくて良いの?」
「大丈夫......暫く星刻の錫杖を使いたくない」
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・星刻の錫杖Lv.10:【ENERGY MOON】44/500
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最近の天候は曇りが多かったから、月チャージは出来ずにいた。今日の夜は月が出ていた。三日月の形だけど、星刻の錫杖はどんな月の形でもチャージが可能になった。でも、【EM】を回復したら......また
「これは......酷い」
先に私の寝室の扉を開けていたスコーピオン。釣られて私とアシリアも覗き込む。案の定と言いますか、分かりきっていた事実と言えば良いのか。ベットには女性たちが既に就寝していた。
「相変わらず人気ね、ユミナちゃんのベット......ハァ〜」
「ベットが人気と言うよりも、私と一緒に寝たいから先に場所取りしているだけでしょう」
「これ......寝られるスペースありますかね」
見た感じ、空いている場所は無さそう......いや、1箇所空いてる。これ見よがしに”貴女の為に空けました”と私を誘っているかのような配置。
「謎の空間に私が入ったら、どうなるのかな」
「雁字搦めね」
「逃げることを許さず、四肢を掴む者たちに身体を弄ばれます」
「だね! 自由を失うかぁ......振り解くのに別の力を消費しそう」
「どうします。私の寝室で3人で寝ますか」
「それが妥当かな。スコーピオンも......? どうしたの?」
振り返ると、スコーピオンが目を見開いていた。何かを閃いた目のようだった。
「私は......大バカだ」
「最高の科学者だと思うけど?」
「どうしてこんな簡単な事に気づかなかったのよ。疑わなかったわ。クラスの記憶改善が解かれて、歴代の星霜の女王は誰も【自我が消滅した静かなる殺戮者】を制御出来ていなかった。いや、わざと気付かせないために......」
何やらブツブツ独り言を始めたスコーピオン。私とアシリアは首を傾げるしか出来なかった。
「ユミナちゃん!!」
スコーピオンの手が私の肩に。勢い良く振り下がったから両肩が痛い......っ!
興奮冷めず、私の身体をそのまま前後で揺らす。気持ち悪い......
「有るわ!」
「な、何が......??」
急に大声を出さないでよ。心臓が飛び出すじゃん。
「【自我が消滅した静かなる殺戮者】を制御する方法」
「えぇ!?」
【自我が消滅した静かなる殺戮者】を制御?
何かヒントを得た様子だけど......私はサッパリです。
スコーピオンは何に気付いたんだろう......
スコーピオンの気付きとは......?




