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NPCがわたしを"推す"! VRMMO (あれ? 推してるのわたし!?)  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【3章:再起の女王】
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越えたくない壁

 強く抱きしめられた。


「だから、休む! 良いわね」


「ありがとう......」


 後ろに声をかけるヴァルゴ。


「いつまで、隠れてる」


 恐る恐る木の裏から現れたのはアシリアだった。


「もう歩けるの?」


「スコーピオンに言って、軽めの散歩を」


 ヴァルゴの隣に座り込むアシリア。


「それに、私何処も異常はありません」


 オフィの指輪の効果で復活を果たしたアシリア。本来なら、いつも通りの生活を過ごすはずなんだけど、念のため、自宅療養を言い渡された(私含め、全員から)。


 スコーピオンの検査でも、元気100%の診断結果は出ている。でも、まだアシリアをスラカイト大陸に戻すのは反対。


「私、一度死んだんだね。カトレアに心配かけちゃった」


「守れなくて......ゴメン」


「ユミナが謝ることないよ。不運な事故。私はそう、決めた」


 アシリアの手を握った。


「ずっと、ボルス城だけで生活してよ。お願いだから」


 首を横に振るアシリア。


「まだ聖女の仕事が残ってる。引退後の新しい仕事もありますし」


「もうすぐ次の聖女が決まる。アシリアが前に出る必要はない」


「聖女様が復活された事実が拡散されて、もっと仕事が増えたの。一目私を見ようとたくさんの人が———」


「私は!!!」


 強めの口調でアシリアの言葉を止めた。


「アシリアを......失いたくない」


 私に抱きつくアシリア。


「大丈夫です。こう見えて強運の持ち主なので」


 アシリアの顔が眩しかった。今の私には辛い......


「強いね。でも、私は......」


「時間はかかります。なので、待ってます。()()()()()()()が戻ってくることを」


「......そこもクイーンと同じだよ」


 私の言葉に3人で笑い、抱きしめ合った。離れたくなかった。ずっとこのままがいい。今の私には小さな一歩も遥か巨大な壁。乗り越えたいとは思わない。だって私の選択で更に人が死ぬなら、今のままで大丈夫。






 ◆◆◆◆◆◆


 スコーピオンの研究室に入る。白を基調とした部屋。機械類、薬品類など区画が出来ている。病院の診察室に備え付けられているテーブルの上は、6画面PCモニターが置かれていた。メインで使っているテーブルの隣には、別の机がある。何かのアイテム製作中なのか工具類は勿論、私が渡した素材や自分が初めから持っていたかもしれないアイテム類が部品として散乱している。


 半田ごてとか実物、初めて見た......


「はい。コーヒー」


 スコーピオンが持ってきたコーヒー。何故か理科の実験で使用するビーカーに入っているけど、気にしないことにした。


「で、話って〜」


 椅子に座るスコーピオン。


「私......女王を続けて良いのかな」


「良いんじゃない。私とは状況が違うし〜」


「そんな適当な」


「じゃあ、辞めたいの?」


「えぇ!? わ、私は......」


「ユミナちゃんが女王に......王様にならない選択を取るなら、私は否定しない」


「どうして......みんなは」


「ユミナちゃんが王様だから付き従っていないわ。ユミナちゃんだから付き従っているのよ。私も、みんなも......今から、いろんな人に聞いても同じ回答が返ってくるわ。ま、諦めることね〜」


「こんな不甲斐ない主......」


「ま、大抵は”残念”とか”見損なった”や”期待はずれ”、色々マイナスな評価を言われるよね。でもね、私たちは今までのユミナちゃんをしっかり見てる。一度の失敗で見切りを付けるはずがないわ」

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