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NPCがわたしを"推す"! VRMMO (あれ? 推してるのわたし!?)  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【間章】
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義姉妹、恋人デート その2

後編でーす

 


 白陽姫ちゃんがお手洗い行っている間、私はショップ付近で待っていた。


 携帯端末をいじっていると私の方に向かってくる影が迫ってきた。


 顔を上げると私より少し年上の二人組の男性が声をかけてきた。


「ねぇー、ねぇー 君、暇?」


 二人とも髪を染めていたり、ピアスをしていたりと派手な服装だった。


 これって、俗に言うナンパね? 私、初めてされた......。


「ごめんなさい。人を待っているので......」


「まぁまぁ、言わずにさ~ 一緒に遊ぼうよ!!」


 中々、強引な人達らしく、腕を掴んできそうになった。みんな(星霊)から護身術を学んでいる。VRで身に付けた技術が現実で披露できるのか不安だけど、背に腹はかえられない。


 あれ? 動かない......腕が震えてる?


 蘇る記憶。オニキス・オンラインで私が引き起こした”例の事件”。自分が何をしたのか。

 恐怖が募る。私がここでこの人たちに何かをすれば......()()............


 男の腕を掴む手が見えた。


「ごめんなさいね!! 彼女は私の連れなの」


 そこに居たのは白陽姫ちゃんだった。


 白陽姫は男の腕を掴みつつ、足を引っかけて転ばせた。間髪いれず、倒れた男の顔面に鋭い蹴りをした。


「まだ、やりますか??」


 ニコニコしながら男に質問した白陽姫の背中が少し危険なオーラが出ているみたいだった。


「すみませんでしたぁぁぁ」

「ごめんなさいぃぃぃぃ」


 男達は震えながら退散していった。


「怪我はない?」


 頷いた。安堵の顔を出す白陽姫。


「ここは人目につく。移動しよう......」


 二人が居なくなったエリアは少し騒然としていた。群衆に紛れ、走り去る女性二人を見守る一つの影。


『まったく、こっちの私は危なっかしいわ』



 外のベンチに座る。

 白陽姫ちゃんが買ってきた水を受け取る。


「ありがとう......」


「本当に何もない?」


「私......ね。もしかしたら......動けたと......思う」


 辿々しく言った。


 白陽姫は黙ってせつなの話を聞いた。


「でも......私」


 両手を見つめ、顔を隠した。苦しい......吐きそう


「また、誰かを殺すかもしれない」


 私の頭を白陽姫ちゃんが優しく撫で始めた。


「あれはせつなのせいじゃない。身体を乗っ取られていたんだろ」


「でも......私がした事に変わりない」


「少し辛辣な言葉を言う。良い?」


「......うん」


 冷や汗をかく。


「ゲームはゲーム。現実は現実。混同するのはやめろ」


「......白陽姫ちゃん」


「あの時、せつなは必要だったからキルした。もしも、しんどいなら暫くゲームにログインするのは辞めることを勧める。ゲームはキツい時にやるものじゃない......楽しむもの!」


 私の手を握る白陽姫ちゃん。あ、温かい!


 勢いよく引っ張られた。歩き出す白陽姫ちゃん。駅とは真逆の道。


「何処に行くの?」


「せつなと見たい”木”があるんだ」


「えっ!? ”木”」





 歩く事5分。広々とした森林公園にたどり着いた。黙って着いて行き、白陽姫ちゃんの足が止まる。


「あれを見せたくてね」


「で、デカい......!」


 一本だけ聳え立つ巨大な大樹。周りは草原なので、一際目立つ。


「一度だけ見にきたことがあるんだ」


「一人で?」


「お母さんと......まだ両親が亡くなったのを受け入れられない時に」


 言葉が出なかった。


「この大樹は、ここまで成長するのに時間が掛かる」


「そうだね......結構な年月が必要」


「他にも色んな要素が苦悩や試練などが経験となって、大樹という成功を成し遂げる。せつな、少しずつ歩めば良い。多少寄り道をしても良い。乗り越えなさい」



「......白陽姫ちゃん」


 涙が頬を伝う。抱きしめられた。


「私は待ってるよ。また、せつなが楽しんでゲーム内を闊歩する姿を」




『クシュッ!』



 女性のくしゃみ。私たちは驚いた。大樹の裏から出てきた女性。私たちの方へ歩いてきた。


「えっ!?」


 何故、こんな思いをしたのか今でも分からない。スーツ姿の女性は白陽姫ちゃんを彷彿とさせる見た目だった。完全に同じという訳ではない。でも、白陽姫ちゃんが大人になったら、こんな美人になるだろうと思わせる感じだった。


 お互い微妙な空気。会釈して通過する美人さん。


「あ、あの!」


 私は無意識に口を開いていた。

 足取りを止める美人さん。


「何処かで、お会いしましたか?」


 振り向き、私を見て微笑む美人さん。


「ふふ、素敵な彼女さんが居るのにナンパですか」


 身体が震えた。恥ずかしさから出るものだった。


「あっ!? そういう意味で言った訳じゃなくて」


「冗談よ。貴女の質問の答えか......生憎、貴女に出会ったのは今日が初めてよ」


「そ、そうですか......」


「デートの邪魔してゴメンね!」


 手を降り、去っていく美人さん。


「......綺麗な人だったな」


 ボソリと言った。はっ!? し、しまった......っ!


「せつな」


 作り笑顔。終わった......


「今から帰るが、覚悟しておきなさい」


「............はい」


 今日の夜は、体力がゼロになるのは避けられないんですね。



 ◆◆◆


 せつなと白陽姫が出会った女性は歩いていた。ポケットが震える。彼女の携帯端末が鳴っていた。

 電話だった。


「もしも〜し♪」


『なんか、嬉しそうね』


「そういう白陽姫ちゃんは怒りに満ちた声なんだけど」


『ちょっと、ナンパ野郎二人を締め終えた所』


『白陽姫様。我々はコレで』


『あとはお願い。二人の処分は任せました』


『了解しました!!!!!!!』


 電話の向こうで大声で叫ぶ大勢の男性の声が聞こえる。


「白陽姫ちゃんが青奈ちゃんと黄ちゃんの生みの親なの、今理解した。男死すべしってね!」


青奈(せな)よりは、優しいけど。それとお生憎様、黄華(こうか)みたいに腕っぷしには自信はありません』


「で、何でナンパを撃退?」


『この世界の私がナンパを撃退してね』


「どの世界でも白陽姫ちゃんは怖いね......」


『大丈夫だろうけど、私は31人を守ると決めてるわ。報復されないように部下を使いました』


「アハハ......ナンパさんたち、ご愁傷様」


 悪魔が弱肉強食の世界の住人。屈強な筋肉男達が部下にいる。アイツら、筋肉で詰まっている身体の癖に、頭脳はインテリなんだよね〜

 どうせ直属の部下。筋肉モリモリな上に黒サングラス、黒スーツ姿で、ナンパ数名を取り囲んだでしょうね。うわぁ〜 想像しただけで気分悪くなる地獄絵図。


『うん? そういう灯は何処に居るのよ?』


「えっ!? 青奈ちゃんと黄ちゃんの墓参り」


『......ごめんなさい』


「初手謝罪はやめてよ!? 地球が変わっても、命日は今日だから。消える前に三人で見つけた大樹。お墓としてはもってこいだもん! 白陽姫ちゃん......今更だけど、先日はゴメン」


『私も灯を分かってあげれなかった。私の方こそ、ゴメン』


「そうだ! この世界の白陽姫ちゃんと......弓永せつなに会ったよ、たった今」


『はぁ!?』


「良い雰囲気だったよ。着実に恋人道を歩んでるって感じ〜」


『何よ、恋人道って』


 灯はソドールマガジンを2本取り出す。”55”と”56”の番号のストレージ。


「今、()()ってこと」


『............そっか』


「白陽姫ちゃん自身は、この世界の白陽姫ちゃんに会えない。会ったら、この世界に巌瀬(いわせ)白陽姫(かすみ)が二人存在する事になる。タイムパラドックスに似た矛盾が生じる。最悪、地球が滅亡する」


『灯が会って無事なのは、元は私の人格だからだね』


「そう! ”天織(あまおり)(あかり)”は作られた存在。あらゆる世界に存在しない人間......今は悪魔だったね。私は干渉を受けない」


『ま、最終的にクロが何とかしてくれるでしょうね』


「そうだね。クロの本来の力は全部、戻った訳だし」


 駅が見えてきた。


「じゃあ、切るね。今日の食事当番、私だから、早く帰ってきなよ」


『わかったわ、楽しみ!』


次話、シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【3章:再起の女王】



『私が、王に成ったのは......ジョブだからじゃない。本当の動機は―――』


『お前の悪夢は、私に出会ったことよ!』


『行くよ、みんな!!』

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