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NPCがわたしを"推す"! VRMMO (あれ? 推してるのわたし!?)  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【間章】
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義姉妹、恋人デート その1

前編です

 玄関で白陽姫ちゃんを待っていた。私と白陽姫ちゃんは今日、デートする事になっている。ゲームでお嬢様学校での約束を今日、実行しようと昨日の夜に白陽姫ちゃんに言われた。正直ありがたい気持ちの自分がいる。少しだけログインするのを躊躇っている。


 ニットミニワンピースに、黒のシアータイツ。白陽姫ちゃんと並んで歩く為に厚底ロングブーツをチョイスした。階段から誰かが降りてくる気配を感じた。振り向くと———


 マニッシュテイストの白陽姫ちゃんだった。黒のジャケットにハイネックトップス、デニムパンツという出で立ち。

 ここまでカッコいい服装を着こなせるのはかすみちゃんだけかもしれない。


 ドキドキが止まらない......! 


「待った?」


「ぜんぜ〜ん!」


「最後まで迷ってね。可愛い系かカッコいい系か」


「あ、えっと〜」


 言葉に詰まった。気付いたのか、少し頬を赤くする白陽姫ちゃん。


「似合わなかった?」


「ち、違うよ!!? 凄く似合ってるよ!!」


「ふぅ〜 第一関門クリアだ。せつなも可愛いよ」


 くっ、ナチュラルに”可愛い”と言えるのか......我が恋人ながら強敵だ。


「あ、ありがとう......嬉しい」


 靴を履き終えた白陽姫ちゃん。私の前に手を出す。


「行こう!」


 手を取る。なんか妙に緊張する......


 家を出て、歩き出す私たち。目的地は水族館。今日は快晴。太陽が眩しい。


「曇りだって予報だったけど、晴れて良かったね」


「てるてる坊主の効果は伊達じゃない」


「えっ!? 白陽姫ちゃんてるてる坊主吊るしたの?」


「せっかくのデート日に雨じゃ、気分が落ちるでしょう」


「た、確かに......」


 白陽姫ちゃんのデートに対する本気度、意気込みが垣間見えた気がした。


 不意に白陽姫ちゃんが微笑んだ。


「どうしたの?」


「せつなが元気で良かったな、と」


 私は察した。


「あ、その......ゴメン」


「謝らなくてもいいよ」


 2日前に()()()()が終わってから、元気が無かったは自分でも気付いていた。


「アレはしょうがない。誰も咎めないよ」


「ありがとう......」


 目的地の水族館は地元にない。電車で移動しないといけなかった。

 最寄りの駅に到着。電車に揺れること30分。


「......凄い綺麗」


「カッコいい、モデルさんかな?」


 車内では、好奇な視線が注がれていた。良いだろう、私の恋人だぞ(謎のマウント)。いやぁ〜、最高にカッコいい恋人を独り占めしてしまって、非常に申し訳ない、って気分になっている。


 注目こそあるが、人を寄せ付けない美女オーラが放出されてる白陽姫ちゃん。誰も近づくことも声をかける勇気も無かった。


 ポツリと呟いた。


「なんか......全然緊張している気がない?」


 白陽姫ちゃんの顔を覗いたが、本人は至って普通。通常モード全開だった。


「人の目には慣れている。小さい頃からね」


「確か......財閥の」


「6歳までね。両親亡き後、梨子(お母さん)の養子になったのは知っているね」


 小さく頷く。


「お母さんの仕事関係で、ちょっとだけモデルの仕事をしたことがあってね」


「そ、それは初耳!?」


「大した事はしてないよ。ただ、当時のインパクトが凄すぎて、今でもオファーが絶えないんだ。噂だと当時のファッション誌の桁がおかしいレベルの値段らしい」


「白陽姫ちゃんなら、直ぐにトップモデルとかなれそう」


 恋人繋ぎ状態の手を強く握る。


「ま、白陽姫ちゃんの一番は私だけど」


 不機嫌っぽく言ったためか、微笑んだ白陽姫ちゃん。


「そうだね。私も、せつなが一番だよ。安心してもいい。私自身も芸能界に興味はないし、お母さんも私の意見を尊重してくれている」






 目的地に到着。まさか、乗り換えでモノレールに乗るとは思わなかった。海の上、意外に怖かった......


「ヘェ〜 商業施設が隣接してるんだ」


 駅から直通の路。まっすぐ行けば水族館。右のルートに進めばショッピングモールがあったり、アミューズメントパークがありと、ずっと居ても飽きない場所だろう。


「時間があったら、ショッピングもしよう」


「そんなに水族館広い?」


「いろんな魚がいるんだ!」


 サンシャイン水族館。世界中に生息してる魚を可能限り集められているらしい。水槽は水族館内部に多く存在。魚に囲まれて海を移動してるような感覚を味わえる。


 暗がりと海の世界がマッチしている空間。入場してから私たちは館内を満喫していた。


「神秘的〜」


 金魚鉢を眺める白陽姫ちゃん。


「金魚か。まじかで見るのは初めてだ」


「こっちはメダカだね。可愛い!」


 内部通路を進む。


「ここでも振り返るね、みんな」


「私よりも魚を見る方が有意義な時間を過ごせるのに」


「綺麗なお魚にも劣らない白陽姫ちゃんか〜 なんか......複雑。あ、イルカの大群!!」


「私の外見は母様と父様によるもの。私だけの力ではない。クジラだけの空間か......ガラスの強度を心配するよ」


「割れて水没しても、白陽姫ちゃんは絶対に生き残れる確信がある」


「満面の笑みで言われると、反応に困るんだけど」


 座りながら鑑賞できるエリアで様々な魚が泳いでいる。

 白陽姫ちゃんの肩に頭を置く格好で超大型の水槽を眺めた。


「落ち着くな」


「目の前の風景が?」


「含めて、今のこの状態が一番落ち着くの」


 振動。白陽姫ちゃんはポケットから携帯端末を取る。


「ふ〜ん」


 画面を私に見せてきた。


「見てもいいの?」


「せつなには過ぎた事」


 白陽姫ちゃんの友人が悪魔契約を成功した内容だった。


「えっと......おめでとう」


「う〜ん。どうやらアクスタらしいんだ」


「あ、なるほど。知らないのか......が、頑張れ」


「そう伝える。『契約成功はフィギュアだ。マヌケ』っと」


「白陽姫ちゃん......人をバカにする術も一流だね」


「褒めても、せつなを抱きしめる事しか出来ないぞ」


「キスは?」


 苦笑する白陽姫。耳打ちする。


「せつな。欲求不満?」


 顔が紅潮しているのが分かる。


「ち、違う!?!?! ご、誤解......わ、私は......ただ............雰囲気の良い場所で恋人とキスって、記憶に残る出来事だし、一生忘れない......と思って」


 白陽姫ちゃんの指が私の唇にそっと触れた。白陽姫は微笑み。


「それはとても魅力的な提案だ。でも生憎、最愛の人のキス顔を他人に見せるのは私が嫌でね」


「......その顔は反則」


「君にしか見せない顔だよ。プレミアってやつだ」


「それなら......今はこれで我慢する」


後編へ続く〜

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