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NPCがわたしを"推す"! VRMMO (あれ? 推してるのわたし!?)  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【間章】
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メビウス社とは

 

 ———メビウス社———


 社内を歩く一人の女性。その足取りは早かった。普段の彼女を知っているからこそ、形相に驚いた。

 白髪の女性は、目的地に到着した。場所は社長室。


 ノックはしない。それだけ彼女が慌てている証拠だ。


「クロぉおおおお......っ!!!」


 声を荒げる。仕事中では絶対に呼ばない名。自分が付けた名を無意識に叫んでいた。

 英和新聞を広げ、くつろぎながら呼んでいた女社長。突然、名を叫ばれ、珍しく動揺していた。


「経理部の(おさ)様が黒咲濡羽(くろさきぬれは)さんに何かご用かしら——————白陽姫(かすみ)?」


 社長机を叩く。振動で机に亀裂が走る。嘆声を吐く黒咲。


「貴女たち二人は、地球を救ってから力の調整(コントロール)を怠っているわね。図体だけデカくなって〜」


「そんなことはどうだっていい!!!」


 携帯端末をポケットから取り出す白陽姫。画面の内容はゲームデータのログ。とあるスキルが起動した時のが記録されていた。


「どうして、最悪の状態の【自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)】が発動しているのよ」


 呼吸が荒い。動揺を隠しきれていない。不安定な心。


「そりゃあ、スキルなんだから所有者が使うのは自然的だと、思うけど」


「ユニークNPCでもある聖女死亡が引き金となっているのも”自然的”だと」


「プレイヤーとは違ってあの世界ではNPCはちゃんと生きてる。一つの命しか無いのよ」


「唆したのは”リリス”よ」


 目を見開く黒咲。


「リリスが全て仕組んだ。聖女死亡の筋書きも【自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)】を最悪の状態で使用させるようにプレイヤー......ユミナに勧めていた」


 悲しい顔をする黒咲。既に状況を察していた。


「そっか......」


「リリスにそんな行動をさせない様に璃子(りこ)さんがプログラムを組んだじゃない」


「ま、元はワタシの情報をデータ化して、『オニキス・オンライン』で神様の位置付けにしたのよね〜 ワタシの考えそうな事だよ」


「その邪悪な部分のデータは一切組み込んでいない......だから」


「でも、別の方法は用意したでしょう」


「......リリス(クロ)は入っていないの」


「ワタシはこれでも、社長なのよ。リリスという限定的なアカウントに入って、ゲームを遊ぶ時間はないわ」


「クロじゃないなら......」


「宇宙神”リリス”を操作できる条件は、同じリリスの遺伝子を持つ者だけ」


 黒咲(リリス)は3本の指を立てる。


「一人はワタシ。オリジナルのリリス様で〜す」


「自分に”様”を付けるのね」


「ぶぅ〜 これでもワタシは偉いんだぞ。神様連中もワタシにかしづくわ」


 頬を膨らませながら一本指を折る。


「二人目は。白陽姫、貴女よ。ワタシとの悪魔契約で叶えた願い。”リリスの力が欲しい”」


 袖を掴む白陽姫。背けたくなる事実。


「人間の身で、ワタシの力を注入すれば、身体が耐えれない。だから徐々に、少しずつ身体に馴染むように計画を実行した。思考や精神などの内面部分は白陽姫が担当。で、悪魔の力に耐え得る身体に成長させる為の外面担当は——————」


 社長室の扉が開く。入ってきたのは肩までのショートカットにした黒髪の女性。本来なら会社の品性を損なわない上品で控えめなスタイルを着用するのが常。でも、彼女は紅いスーツでも完璧に仕事をこなす社長秘書だ。


 秘書はタブレットを操作。今日のスケジュールを言う。


「社長。10時から防衛大臣との会談。14時に中国の外務大臣と会食。17時にアメリカに移動。大統領との直接会談。その後......」


 一通り予定を伝えた。秘書はため息を吐く。


「一応、私たちゲーム会社の人間なんだけどな〜」


 呆れ顔。秘書にあるまじき素行だが、部屋にいた二人は特に咎める気はない。


「クロ。ブラックでいい?」


 秘書は扉付近の電子テンキーを操作。壁が回転。社長室に備え付けられているキッチンが露わになった。


「海外から取り寄せたんだ〜」


 紙袋の中身。外国語が記載されているコーヒーパック。パッケージからも高級感が漂ってくる。


「いつもは豆から挽いているけど、偶にはね〜」


 お湯が沸く。


「上流階級御用達のお高めなコーヒーパックでね。クロも気に入るんじゃないかな〜 あ、でも......コーヒーを人間界に広めたのクロだし......どうかな〜」


 テーブルにコーヒーカップを置く秘書。


「じゃあ、私は用事があるから。帰って来るまでに支度、終わらせてよ」


 そそくさと、社長室を出ようとする秘書。明らかに白陽姫を見ない素振りをしていた。


(あかり)なの......」


 身体が停止した秘書。白陽姫の発言によるもの。


「ハァ〜 やっぱり白陽姫ちゃんにはバレバレか。白陽姫ちゃんは私だし、私は白陽姫ちゃんだから......」


「ってか、消去法で分かるでしょう」


 頬杖して呆れ顔で灯を見るクロ。

 振り向き、諦め降参のポーズを見せた灯。


「はい。その通りです〜! スーパーアカウント”リリス”を操作していたのは私です!! 隠し通せると踏んでいたんだけど」


「灯といい、白陽姫といい、もっと精神の調整を磨いて欲しいんだけど。旧世界ではちゃんと出来ていたのに......ハニトラにかからないかワタシが心配になるよ」


 灯はクロに近づき、了承得ずに唇を交わした。


「ワタシが......クロ以外に懐柔されるとでも」


「いいえ♡ 散々教え込んだし、問題ないか...... で、」


「昔、白陽姫ちゃんが私にした事を、私もやってみたくなった」


 灯の言葉の影響で、身体を震わす白陽姫。後悔と罪悪感がのしかかっている雰囲気だった。


「ゴメン。言いすぎたよ............旧世界で白陽姫ちゃんが取った選択の数々。当時の白陽姫ちゃんには最前の手だってことは私が一番、理解してる。私という人格を生み出した事も、青奈(せな)ちゃんや(こう)ちゃんを消す選択を取ったのも全て、皆を守るためだって......」


 悲しい表情を見せる灯。手には携帯端末に似た装置。外装は白色、各所に青みがかった明るい緑色と重厚な赤みに透明で輝く黄色の宝石が随所にあしらわれていた。


「わ、私は......灯に恨まれても仕方がないと思ってる」


「その話は、前の地球で終わった事じゃん。ちゃんと仲直りして、今があるでしょう」


 小さく頷く白陽姫。


「【自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)】を使いこなせない様じゃ、プレイヤーが【裏の世界】を解放してからが、更に、大変になる。起きるであろう未来、星霊による【真名】イベントの弊害にもなり得る。だから、少し刺激を与えたのよ......前に進ませるために」


「ヘェ〜 優しいんだ、灯〜」


「私の目的は星霊の【真名】だけ。至って貰わないと困るのよ〜」


「どうして......焦る必要があるの?」


「焦る? 私が??」


「そうでしょう。態々リリスを操作してまで、プレイヤーに干渉した。まだ星霊は10人残ってる。灯の計画は長い期間が必要だって、ゲームを作る前に分かっていた事でしょう......」


 灯が懐から取り出した金属製の物。銃に装填するマガジン・カートリッジに似ており、一つ一つに番号が彫られ、色取り取りが塗られていた。


「前の地球で発生した出来事を”なかった”事にするために、ワタシが地球ともう一つの地球を融合させて別の地球を創造した、身に付けたリリスの力、でね。ワタシたちが今、住んでる新しい地球では”あの忌まわしい出来事”は決して起きない。平和そのものよ......でも、私はまだ............」


 決意の目。何を犠牲にしても、成し遂げなければいけない。


「私は一刻も早く、皆を解放したい。白陽姫ちゃんも想ってるでしょう。ソドールマガジンを60個完璧な浄化を施さないといけない」


「事態を早める、イコール正しいとは限らない。私が一番、分かってる......」


「だから、【星刻の錫杖】を持つプレイヤー、ユミナを傍観してろ、と。マガジンに封印されている”弓永せつな”や他の29人を蔑ろにしろって!!」


「私はそんな事......大体、灯が」


「はい。ストップ、二人とも」


 棒状に丸まった新聞紙で頭を叩かれた灯と白陽姫。

 可愛く綺麗な女性二人が不毛なやりとりを繰り広げているのがクロには我慢出来ず、手を上げてしまった。


「大の大人が子どものケンカおっ始めてて、観てられないわ。これじゃあ、何のために主人格の人間と別人格の人間を分離させて、一人一人の者として確立させたのか分からないじゃない!! 少しは頭を冷やすこと!」


 我に返る二人。


「ごめんなさい......」


「ゴメン......」


「灯の焦りも、白陽姫の保守的な行動も正しい。でもね、ワタシたち3人長い生なんだから、もっと肩の荷を下さないと。悪魔が生き急いでも良いことないわ〜」


「わ、分かってる......」


「灯。計画は順調。それで良いじゃない。気に入らないなら、ワタシから提案が一つ」


「『提案』?」


「今日から一ヶ月。星霊の【真名】が更に一つも解放されなければ、灯の強行策を実行してもいい。”無理矢理”星霊から【真名】を喋らす策。仮に一つでも【真名】が解放されれば、白陽姫の案が採用される。プレイヤーを見守る案に。人間の可能性は無限大! ちゃんと観てあげなさい」


「............了解。クロの提案に乗る」


「私も異論はないです」


「はい。決まり!! さぁ〜二人とも、真面目に仕事しなさい。減給させるわよ」


「クロのあっかんベェ〜だ。労基にチクってやる」


「不当な扱い。証拠を集める。転職もアリ」


「本っ当に困った子たちだわ......ハァ〜」



オニキス・オンラインは、悪魔が作ったVRゲームである。


・天織灯のあくまな怪盗生活の完全なるネタバレだな〜 

(作者が後の展開を想像して、心が憔悴した結果、書けなくなったのが、全ての始まりだけど......)


オニキス・オンラインのリリス様のオリジナルが現実世界のリリスこと黒咲濡羽(くろさきぬれは)(現在の仮の名前)。

秘書、天織(あまおり)(あかり)。(※白陽姫の別人格)リリスです。

経理部のトップ、巌瀬(いわせ)白陽姫(かすみ)。(※灯の主人格)リリスです。

リリスの下僕でもある大魔王ルシファーの力で、二人は別々の肉体を得て生活してる。



弓永せつなの義姉、弓永白陽姫とは同一人物。別の地球の白陽姫。

”巻波”は梨子の苗字で、両親が亡くなり養子として巻波の姓を名乗っている白陽姫。本来の名前は、巌瀬(いわせ)白陽姫(かすみ)です。


【天織灯のあくまな怪盗生活】の地球が①

本作の地球を②とします。リリスの力を完全に習得した灯(白陽姫)はラスボスを倒した後、①で起きた惨状が起こらなかった地球を創造。①の情報を元に新しい地球②が誕生。この②がユミナちゃんの物語で登場する地球。①が消滅したので、3人は②の地球で生活。とある目的でメビウス社を創設。オニキス・オンラインを制作した。②の地球にいる人間に触れることで①の地球の記憶が蘇る。


因みにメビウス社の社員は全員悪魔です(一部例外あり)。普段は人間の容姿で働いています。メビウス社に入社したい人間は多いけど、社長のリリスが認めた悪魔限定なので、募集すらしていない。度々入社条件などを聞かれる場面では、”完全企業秘密”で押し通っているとか


ソドールマガジンは、ソドールと呼ばれる怪人の魂が内包されているカートリッジ。怪人ソドールが持つ能力を扱える代物。全部で60本。

ソドールとは、人間と超えた人間を造るために生まれた失敗作品。31人の子どもが悪魔因子と選りすぐりの動植物の遺伝子を混ぜ込んで出来た。人体実験で人間体は消滅、醜い怪人と化した。ただ負荷が大きく、怪人は消え、魂が分離、2体の人形が誕生した。人形が二つに分離したのは、本来の自分と怪人の自分の人格形成によるもの。ソドール人形は全部で60個。人形が今を生きる人間と同化することで、怪人ソドールとして悪さをする。何故、今を生きる人間の元に人形が現れるのか。何故自分たちが10年も人体実験をさせられなくてはいけなかったのかと憎悪が募り、自分たち以外の人間は幸せな生活をしているのが許せない。だからお前らを呪ってやる、な意味合い。


ソドール人形は全てマガジンとして姿を変えた。だが、内包されている魂がなくなった訳ではない。今もマガジンの中でソドールは生きている。


早々、①の地球では弓永せつなは故人です。誘拐された31人の内の一人で怪物。人体実験で最後まで人間の姿を保っていたのは巌瀬(いわせ)白陽姫(かすみ)、ただ一人。


実は①と②の地球で違うのは一つだけ。とある人間が生きているか死んでいるかで、世界線が異なる。

生きていたら①。死んでたら②の地球。


弓永せつながユミナとしてVRゲームをしている以上、安心して生活出来ている証拠。

登場キャラだと、新藤(しんどう)真凪(まな)、風見瑞穂、日柳京、楠木(くすのき)みはる、九条(くじょう)(かなで)は弓永せつな同様、故人でした。

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