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NPCがわたしを"推す"! VRMMO (あれ? 推してるのわたし!?)  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【2章:【 】】
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八つ当たり

 全員の完治を見て、満足したような表情でアリエスは前へ倒れ伏せた。


 真っ先に駆け寄るのはスコーピオン。抱き抱えたアリエスに迫る病魔。眠っているが危機的状況。このままでは呪いに身体を支配されてしまう。


「死なせない」


 走り出すスコーピオン。目的地の前にいたのは奇しくも【ユミナ】。

 攻撃の構えを見せる。


「お前の相手はオレだ」


 レオが【ユミナ】の攻撃を防いだ。


「早く行け!」


【ユミナ】を狙う正確な狙撃。レオを押して回避された。


「行きなさいッ!!」


 遠方からサジタリウスが吼える。


 スコーピオンが向かっている先、最上階。ユミナとアシリアの部屋。ボルス城内部と直結している扉がある。自分の研究所ならアリエスの呪いの進行を抑えるかもしれない。


 みんなの援護のおかげでスコーピオンは船内に行くことが出来た。



「面倒だな......」


 星霊と【ユミナ】との間。【ユミナ】が召喚した無数の悪魔の兵士。敵のスタミナを削る作戦......だった。


 横一閃。兵士全員が真っ二つに、身体が分離した。元に戻る事はなく、そのまま崩れ落ちた。


【ユミナ】が振り返る。


『今、機嫌が悪いんです』


【ユミナ】へ歩みを止めないヴァルゴ。


 デッキが大きく揺れ、黒いオーラを発している。危険。触れた者は死に絶える気。


 床を蹴り、ヴァルゴに迫る【ユミナ】。


【ユミナ】の攻撃は、直撃しなかった。【ユミナ】の顔面を殴ったヴァルゴの速さが優ったから。吹っ飛ばされても直ぐに体勢を整え、縦横無尽に動く。が、すべての攻撃を、剣2本で弾いた。


【ユミナ】は恐怖しなかった。むしろ、狂喜した。今まで居なかったタイプの敵だったから。

 時間が限られている自分がもどかしい。もっとコイツと闘いたい。初めての......感情。


「......龍の門?」


【ユミナ】の背。龍の刻印が刻まれた門。


『おい。ユミナッ! 今我は忙しい......!?』


 門を潜ってきたドラゴン。ユミナと契約している龍———ドラン。

 契約者に呼ばれれば、応えるのが普通。が、このドランは9割呼んでも『忙しい』の一点張りでちっとも活躍しない。


 今日もユミナに呼ばれて、ため息を吐き、めんどくさそうに顔を下に向ける。


「貴様......ッ!!」


 だらしないドラゴンはいない。怒りに満ち、迎撃体制に入っているドラゴンがそこにいた。


「その身体から消えろ。目障りだ!!」


 ドランの口が大きく開く。口内の奥からレーザーのような発射口が出るタイミングで、【ユミナ】が跳ぶ。


「......ッ!!?」


 ドランの口に無理やり何かを突っ込んだ。倒れ込んだと同時にドランの身体が光り輝く。


【ユミナ】の頭上に龍と魔法の刻印が刻まれた陣が出現。【ユミナ】の身体が魔法陣を通過した。陣は消え、【ユミナ】の装いも変化していた。


「『稀代の女王(イカロス)』......ですか」


 桃色の髪はなくなり、鮮やかな青紫色の髪。全身は黒のパイロットスーツ。背には、ドランと同じ巨大な翼型の装甲が装着されていた。ドランに五冊の魔術本を喰わす事で使用できる装備。それが特殊強化外装:稀代の女王(イカロス)


 役目を終えた。ドランからの迎撃をさせない為に、身体を壊した。ボロボロのドランを放り投げた【ユミナ】。海に沈むドランを救出に向かうアクエリアスとピスケス。


 背部のスラスターが噴射。飛翔した。背の翼を放射状に広角展開。


 薄く笑うヴァルゴ。


「来なさい!」


 青い炎が噴き上がり、全力で飛び出す【ユミナ】。


 高速でヴァルゴとの距離を詰めるが、ヴァルゴも瞬時に消え去る。音だけの視えない攻防戦。


 デッキの一部が崩れる。クレーターが形成されていた。中央には【ユミナ】が蹲っていた。稀代の女王(イカロス)は破損具合が激しい。翼型の装甲の端々は電撃と亀裂が走り、破壊されていた。


 星刻の錫杖は自動で最適解を導き出す。【ユミナ】の前に黒色の大きな渦が出現。【無限と夢幻(ブラックホール)】だった。


 無限と夢幻(ブラックホール)空間を退出した【ユミナ】。稀代の女王(イカロス)は損傷が無い無傷の状態に変わっていた。

次話、2章エピローグです。

よろしくお願いします!

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