戸惑い
この裁紅の短剣。面白い機能が付いている。自分を生み出した神。傍らにいた少女が持っていたはずの短剣。少女が居なくなってから短剣を改造していた記憶がある。この面白い機能は改造に寄るもの。
先ほど発動しようと試みたが、邪魔者によって使えず仕舞だった。運の良いことに発動前だったので、いつでも使用可能。
闇と同化したケモノを倒す邪魔者ども。一人一人、持っている才は違う。でも、一つだけ共通している点がある。それは”力”。圧倒的な力。不思議なのは、本来の力を出し尽くしていないこと。何かに縛られているのか、はたまた出すのに時間が必要か、定かではない。
一斉に挑む邪魔者ども。冷静に状況を分析。
やはり、か。
先ほど感じた違和感。自分の直感は間違えではない。
邪魔者どもは自分を殺す気で掛かっている。でも、自分に近づけば近づくほど腕が鈍っている。自分の活動時間を減らす策と考えた時期もあった。だが、こうしてマジかで分析し、判断を下す。
少女を殺したくない、これだ。
少女を取り戻す方法。限られた時間が過ぎる・器諸共自分を殺す。この2点のみ。
面白いことに少女の身体が改造されている。自分を生み出した神と所業だと理解した。少女が死んでも、生き返る構築な成されている。非常に興味深いが、恐らく一回死んだ器に自分は残らない。再び、星刻の錫杖に封印されるはず。
上へ高く飛ぶ。
それほどまでに少女が大事なら。少女の手で葬られては本望だろう。
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※魔魂封醒:撃朱の剣が発動されました※
発動者:ユミナ
対象者:星霊との距離、15メートル
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本来なら、起動コードが必要。だが、時間を惜しいため省略化。成功。
突きの構えは必要な動きのため、行動しないといけない。
放たれた極大の真紅。撃ち出された光球は船全体を呑み込んだ。
音速を超える紅き閃光は美しかった。目で楽しませ、肌を高揚させる。最後に映るのは死から生まれた芸術作品。
耳に関しては煩わしいのはご愛嬌だな。轟音と衝撃波は観客を身震いさせた。
一発のみの一撃必殺の技。使えば、灰色状態になる。数度の戦闘でその短剣を気に入った。使い勝手は最高だったので少し残念だ。別の面白い武器を使うしかない。
下を向く。
感心。巻き込まれた船は一切に傷が付いていない。摩訶不思議な現象。船が大破すれば何処かに隠れている多くの生命体まで死亡する。散るのが楽しみだったが、どうやら実現は難しい。
着地する【ユミナ】。
船は無傷。対照的に邪魔者ども......星霊とか言ったか。星霊は無傷ではなかったようだ。
間に合わなかったのか、間に合っても大量破壊兵器の威力に負けたかのどっちかだろう。
死んでもおかしくない攻撃。10名全員が生存し、息をしている事に不思議と驚く。身に纏っている衣服はボロボロ。他には身体の部位が欠損していた。両足がない星霊。片腕がない星霊。顔が半分欠けているなど様々なダメージを負っている星霊。
全員身体を動かすが、最初の勢いはない。仕事中だが、ここまで楽しめた事への敬意を称して、自分が殺ろう。
一人立ち上がる。確か、ステージで出会った星霊。同じく一緒に自分と戦闘をしていた2体の星霊の言葉から名はアリエスだったか......純白で上質な修道服はボロボロ。持っている杖にしがみ付きながら立っているのがやっとの状態。軽く押せば、二度と起き上がれないだろう。
コイツは何故、欠損していないのか。そんな些細な事はどうでもいい。最初はお前に決めた。”征服者の冥剣”を構え歩く。
呼吸が荒いアリエス。
「ハァ......ハァハァハァ............!」
ありたっけの防御魔法を使ったにも関わらず、撃朱の剣を防ぐことは叶わなかった。石化から解かれ数ヶ月。アリエスのステータスは徐々に戻りつつある。でも、星霊として活躍していた全盛期までに戻るにはまだ時間がかかる。他の星霊も同じ。
アリエスは周りを見る。その後、向かってくる【ユミナ】を見た。
「みんな......後はお願いします」




