表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NPCがわたしを"推す"! VRMMO (あれ? 推してるのわたし!?)  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【2章:【 】】
380/396

正体と指輪と復活

 ヴァルゴの足取りは重かった。爆風と衝撃波に晒され、遥か後方まで飛んでいた。意識を取り戻し、会場に戻っていた。


「こんなに傷つくのは何千ぶりかな」


 彼岸の星剣(ノヴァ・ブラッド)を杖代わりで歩く。身体中に血。腹部には木が突き刺さっていた。右足は折れている。左手は無かった。


「邪魔だ」


 前方。聖女候補の少女たちと契約した悪魔5人。


「お前......その傷で行くのか」


 アガレスが言った。


「お嬢様と約束したからな。”私がお嬢様を殺す”。それだけだ」


 ヴァルゴの気迫に負け、道を譲る。


「お前の主は......何者だ」


 止まるヴァルゴ。振り返る。


「”愛”だ」







 会場にたどり着いたヴァルゴ。中は物が散乱しており、人の姿はなかった。


『随分、辛そうね』


 視線を変える。足を組み、椅子に座っていたのはリリス。


「リリス様......どうして」


 薄く笑うリリス。


 ヴァルゴに近づき、手を出す。

 温かい緑色の光。ヴァルゴの傷はなくなり、欠損していた部位も完治していた。


「貴女に死なれては困るの〜」


「...ありがとうございます」


 再び椅子に座るリリス。


「観に来た。それだけ」


「私は止めれませんでした......初めての友を失い、最愛の主の行動を......」


「これも運命よ」


「一つ質問してもいいですか?」


「何かしら?」


 彼岸の星剣(ノヴァ・ブラッド)をリリスに向けるヴァルゴ。



「貴様、誰だ」



 殺意の眼。常人なら息も出来ない圧。


「アハハッハハハハハハハァ!!!」


 笑っていた。ヴァルゴの威圧をモノともしない飄々とした面構え。


「凄いわね! ()()()()()()()()なのに、違いが判るのね!」


 首を傾げ、考える仕草。わざとらしい行動だった。


「『貴様、誰だ』......か。悩むわね。ワタシ、色々な名前を持ってるし。リリスじゃダメみたいだし......貴女が理解できる名称か〜〜」


 一拍。閃いた表情。


「ワタシは......()()()()()()()()()()()と言えば良いのかしら!」





 リリスから告げられた言葉。数歩後ずさる。動揺。彼岸の星剣(ノヴァ・ブラッド)を落とした。


「あ、あり得ない。デタラメを言うなっ!!」


「そっか! 貴女は知ってるんだっけ」


 怯えるヴァルゴ。


「少女は特殊な力の持ち主だった。神は気まぐれで少女と戯れた。少女は人間だった。寿命は短い。でも、ずっと神と一緒に居たかった、永遠に。神に恋をしたから。少女は自身の力を遺憾なく発揮した。結果、神と今でも共に居る。片時も離れる事はない永遠の存在と化した」


 リリスは本を取り出した。名は『灯の園(アカリ)』。この地含め全ての世界の出来事が記載されている。出来事の中には過去・現在・未来もあらゆる可能性として記されている。


「少女は自身の力で、一冊の本になった、とさぁ〜」


「そうだ。あの子がこの世に生を持っていない。だから、リリス様は」


「輪廻転生の処理をしなかった、かしら〜 私が別に誕生したら、『灯の園(アカリ)』は必要なくなる。それでは、少女の覚悟を蔑ろにする」


「だから、お前があの少女なわけが無い」


 彼岸の星剣(ノヴァ・ブラッド)を拾い、飛び出す。


 時間が止まる。

 沈黙。口を開いたのはリリスだった。


「う〜ん。やっぱりダメだったか。まぁ、想定内だし、計画を修正する必要はない」


 首筋に彼岸の星剣(ノヴァ・ブラッド)の切先が当たる寸前。


「何訳のわからないことを———」


 ヴァルゴは倒れる。起き上がることは困難だった。


「流石ね! 普通なら身体を動かすのも無理。でも貴女は少しだけでも動ける。良い傾向だ」


 しゃがむポーズを取るリリス。


「ワタシが本気で闘う訳ないじゃん!! つまらないし〜 でも残念ね。星霊の中でも一番強い貴女が、この弱さか......。まぁ、リリスは許しているみたいだけど............. ワタシが欲しいのはお前たちの真名だけ。それ以外には興味もない」


「ま、真名だと......」


「真名を教えた乙女座と山羊座。この2体は進化し続けている。このまま進めば、もっと強くなるわよ! 残り10体、暫くは眺めているだけにするよ」


 立ち上がり、階段を降りる。


「言い忘れていたけど、あの子に【自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)】を勧めたのはワタシよ」


 怒りを見せるヴァルゴ。が、身体は動かない。見ていることだけしかできない。


「開発中や実践投入じゃ、満足する戦闘結果は出なかったのよね〜 で〜も〜 今、この瞬間に()()()()()の【自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)】を発現できる。利用しない手はないじゃん〜 良い見せ物をありがとう!!」


 ステージに上がるリリス。


「そろそろね!」


 眩い光。光は消え、中から人影は現れた。目を見開くヴァルゴ。身体が動く。急いでステージへ向かう。


「......アシリア」


 人影の正体。殺されたはずの聖女、アシリアだった。息はあった。


「お前が復活させたのか」


「いや、違うよ」


 キッパリ断るリリス。指を指す


「ユミナちゃん、自分が行った行動を忘れるとわね!」


 アシリアの指に嵌っている指輪。


「......お、オフィの指輪!?」


「この指輪のお陰でアシリアちゃんは復活できた。でも......」


 指輪に亀裂。弾かれ砕かれた。完全に消滅した。


「復活回数を超えたから、役目を終えたのね」


 アシリアを抱きしめるヴァルゴ。


「良かった。本当に......良かった」


「ワタシの実験はこの瞬間で終わり。さっさと最愛の人を助けたら」


 指パッチン。アシリアの周りを囲むドーム上の膜。


「お礼に絶対に破けない結界を用意したわ。え〜っと、なんだっけ〜 そうだったわ、【星なる領域(スターリースカイ)】の原型よ、これは。無制限の結界。誰もアシリアちゃんを攻撃することは出来ない。ワタシが保証しよう」


「一応、礼を言う。だが、お前を許してはいない」


「別に良いわよ。ワタシは興味ないし。それじゃあ、本物のリリスによろしく〜」


 手を降り、リリスは消えた。


「アシリア。待ってて。お嬢様を救いますので」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ