主を返してもらおうか
遅れて飛び出したレオは観客席まで飛ばされ、なんとかその場に残ることが出来た。
「レオ。大丈夫!!?」
アリエスとピスケスが駆け寄る。
「最悪だ......」
曇らせた表情を浮かべるレオ。アリエス、ピスケスも同様だった。
禍々しいオーラは星刻の錫杖を中心に放出されていく。爆発的に拡大し続けるオーラは巻き戻し機能が発動したかのように星刻の錫杖へ戻っていく。放出された凶悪なオーラは全てユミナの身体を覆う。オーラはユミナの身体に吸収され、浸透していった。
「戦うしかないのですか......」
「躊躇ったら俺たちが終わる。それにユミナと約束したろ」
レオの言葉に二人は頷く。
「レオ」
クイーンがレオを呼んだ。クイーンの後ろには彼女のギルドメンバーが多くいた。
「私たちもユミナを止める」
「帰れ」
高圧的な態度と言動。
「オマエらが居ても足手纏いだ」
「で、でも......ユミナは私の」
レオはクイーンの胸ぐらを掴む。
「付き合いは短いが、お前とユミナが特別な関係は知ってる。助けたい気持ちも分かる。だがな、今のお前にユミナは救えない。俺たちがやらないといけねぇんだ」
クイーンを離すレオ。
「出来るだけ遠くへ逃げろ。今のユミナは周りにいる全ての生命体を殺す。クイーン、お前も例外じゃない。お前の声すら届かない。もう......遅いんだ、何もかも」
悲しい顔のレオを見て、クイーンとギルドメンバーは歩き出した。自分には何も出来ない悔しさを胸に秘めながら......
両腕を後頭部に掛けるピスケス。
「な〜にぃ、カッコつけてるんだよ」
「そうですよ、レオ......」
アリエスはレオの身体にコツンと拳を当てる。
「あ〜でも言わないと、犠牲が増えるだろ」
「優しいんだ。ボクは正直、ユミナ様以外の人間に魅力を感じないけど」
「いずれ......わかりますよ、ピスケス」
「うんじゃ、やるか」
段差階段を降りるレオ・アリエス・ピスケス。
【ユミナ】は足音に耳を傾け、首を振る。
自分に迫る強者。が、今の【ユミナ】には興味がない。己が命を狩る者たちではなかったから。下にいる。自分が殺す者たちは。それ以外に時間を割くことはしない。満たされない渇きを満たすには、他者を葬ること。
時間がない。近道。
裁紅の短剣の剣先を下へ。牢獄に向けて無発音で魔魂封醒:撃朱の剣を発動し—————————?
正確。裁紅の短剣は【ユミナ】の手から溢れる。転がる裁紅の短剣。
「無視か」
声のする方へ。先ほど観測した敵。だが、まだ敵認定しただけで狩るには順番は後。最優先事項ではない。
目障りなのも事実。少し痛い目を合わせるしかない。
床に刺さってる星刻の錫杖。一人でに動く。杖を敵3に向ける。
宣告無しの『輝を射抜け、真なる青よ』が放たれた。煙が立ちこむ。
【自我が消滅した静かなる殺戮者】に乗っ取られた身体が習得してる魔法やスキル。特殊技などは【自我が消滅した静かなる殺戮者】は自在に操れる。威力は持ち主以上が発揮される。無駄な詠唱も発音も必要としない。起動モーションも簡略化。ただ標的を亡き者にするための手段。いちいち敵に余裕を与えないために編み出した【自我が消滅した静かなる殺戮者】の執念。
「アタシたちの目を見なさい!」
光の壁。
生きてる。敵3誰一人欠けていない。無傷だった。彼女たちの眼。自分を狩る本気の目。
「何度も受けてるので、簡単です」
高貴な修道服を着てる少女はうすら笑みを出す。
【ユミナ】は動く。が、反応が遅かった。
後ろに吹っ飛ぶ。自分の両腕が噛まれているのに気付いたのは壁に磔になった時。手首を噛む魚。
「ダメだよ!」
【ユミナ】の手首を噛む魚は形を変える。有機物から無機物へ。ボルトで作られた手枷。振り解こうにもびくともしない頑丈さ。
「その身体でこれ以上、殺人を犯さない」
ようやく理解した。自分の邪魔する者。厄介だ、面倒だ。なら——————
手枷を破壊。床に着地。
予定変更。時間を1分使う。問題ない。任務を遂行する。ニヤリと醜悪な笑みを出す【ユミナ】。
婥約水月剣を装備。全身に【パンドラ】の腕を生やす。
コイツらを狩るっ!!!
映画わたなれ、最高
この言葉に尽きる




