断罪の刃
———宇宙———
「始まった!!!」
惑星オニキスを外から眺めている女性。
嬉しさと狂気に満ちた表情が全面に出していた。
「そうよ。それで良いのよ♪ しっかりとワタシに観せて!!!!!!!!」
大ぶりの動き。身体全体で悦びを、狂気を表現している。
「調整した外来種。歴代最強の星霊たちが育て、ワタシが力を授けたサイコーォオオオ!!!!!!!!! の実験体。さぁ、【自我が消滅した静かなる殺戮者】。その器は壊れないわ!!!!!!! 存分に暴れなさい、君の想いのままに」
言い切った後、リリスの表情・態度は先ほどと180度変わっていた。
『灯の園』を開く。儚げな声だった。
「ユミナちゃん......君なら救えるわ———【自我が消滅した静かなる殺戮者】を。だから負けないで............ワタシのミライ」
———ヴィクトール大図書館———
「ハァ〜」
深いため息。超弩級のアホが自分は出来ると思い込み、結果大損害を与え、落胆するしかない上司のような表情のオフィがいた。
「どうしたんじゃ、オフィよ」
「別に〜 なんでも無いわ〜 カレッタちゃん、ページめくって」
カレッタはオフィが読んでいる本を1枚捲る。
「お前さんがため息とは、大事件じゃな。あーカレッタよ。捲っておくれ」
「はい。先生!!」
「子孫を顎で使っているご先祖様か......泣けてくるわね」
「お前さんが涙を流すことが今度あるのかの〜 で、本当に何かあっただわさ???」
「別に〜 大したことじゃ無いわ。ただ......世の中にはあり得ないレベルのバカがいるんだなって〜」
「......ふ〜ん。ま、そういうことにしておくだわさ」
オフィは窓から見える景色を眺める。
(本当に大馬鹿野郎がいたもんだ。ユミナちゃんに......当代の星霜の女王に最悪の状態の【自我が消滅した静かなる殺戮者】を使わせるなんて)
———叫棺の洋館:ロンドン・ヒル———
カップが落ちる。砕け、使い物にならない。
落とした人物も、目撃した二人もしばし硬直していた。
我に返り、慌てて破片を拾い上げる双子座の星霊、片割れのジェミニ。主のアリエス・イニティウム・シルヴァ・ティマンドラ・ルーナにラグーンの名を頂いた。
「申し訳ございません、アイリス様」
「気にせんでいい。珍しいな、ラグーンがカップを割るとは」
もう一人のメイド、同じジェミニでもあるベイも割れたカップを集める。二人に名を与えたが、ジェミニにはちゃんとした真名がある。そろそろアイリスに教えるべきだろうと、二人で話し合っている。
「お姉。大丈夫?」
「ごめん、心配かけて......でも、」
「うん。分かる......【自我が消滅した静かなる殺戮者】が最悪の状態で発動した」
ラグーンとベイはユミナのいる方角を見る。
(ユミナ様............)
◆◆◆◆◆◆
沈黙。ユミナは黙って立っていた。
流石の男もユミナの状態に恐怖する。逃げようにも足がすくみ動かない。
「じょ、上等だぁああ!!!!」
アシリアの首を切断した剣。構える男。攻撃を仕掛けた。
「えぇ????」
視界にいたユミナが消えていた。同時に自分の身体に違和感を覚える。口は動く、目は開き、閉じることも出来る。腕の感覚もある。足の感覚も当然ある。それでも違和感があった。
髪を掴まれていた。掴んだのはユミナ。いつの間に背後に現れたのは男には理解が出来なかった。
「あー」
何かが前に倒れる音。視線が音の方へ吸い寄せられる。男の胴体だった。首から上が無い男性の胴体。1秒後、男性の胴体は細長く千切りに切り刻まれていた。肉塊ですらない人間の胴体。完全に消滅した。
首だけ生きている男。しかしそれも長くは持たない。
男の呂律が回らない。自分の身に起きた出来事が遅れてやってくる。首から流れる血を思わせるポリゴン。止まることを知らない血の滝。
「た......す.........け..................」
掴んでいた髪を離す。床に触れた頭部。崩れ、輪切りにされ、この世を去った。
無感情、無感動で淡々と人を殺した。そこにユミナの意志は反映されていない。身体が動いた、それだけだ。
標的を倒したユミナは下を向く。次のターゲットは牢屋にいる者たちだ。
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【自我が消滅した静かなる殺戮者】起動中
残り時間:09:55
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音もなく縮地。斬られたと認識出来ないくらいのスピードで首を切断。
ショック死
因果応報......




