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NPCがわたしを"推す"! VRMMO (あれ? 推してるのわたし!?)  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【2章:【 】】
372/396

ありが——————

短いです。

 ◇◇◇◇◇◆


 1時間以内にインペリアル・アペクス号は【サングリエ】の港に停泊する。

 私とアシリアは閉会式の会場にいた。


「行ってきます!」


「行ってらっしゃい!」


 ステージへ移動するアシリア。私は壇上外。来賓者に見えないように隠れている。

 歓声と拍手が聞こえる。深々と礼をする。辺りは静まりかえった。誰もがアシリアを見ていた。


「本日は皆様、パーティーにご出席して頂き、誠にありが——————」


 アシリアの頭が飛ぶ。アシリアの首が、切り落とされた。鮮血に似たポリゴンが宙に流れる。私の前まで転がる頭。


「......え」


 何が起こったのか頭が追いつかずにいた。アシリアの頭を拾うとしたが、ポリゴン状に砕け散り、この世を去った。


 男は軽快に笑い出す。


『やったゾ♪。やったぁぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!!』


 切断にしようした剣を振り回す。狂喜の青年。NPCのアイコン。名はジャーク。アニモシティ家の下っ端組員。小心者の彼は、一人逃げ隠れていた。イガグリ頭の男の首筋に太い注射痕が付いていた。穴から不気味な液体が流れる。口から涎が垂れていた。


「ヒャハハハッ!」


 目は焦点が合っていない。乱心。剣を再度振り回す。


「オレに力をくれぇ!!!!!!!」


 誰かに向けての言葉。ふざけた口調。



 頭が真っ白になる。視界がぐらつく。


 アシリアのちぎれた身体は前に倒れ込み、頭同様、数秒で崩れた。


 聖女アシリアが死んだ。この事実を理解するのに時間がかかっていた。ようやく現実に戻り、事態の深刻さに気付き始める。騒然とする会場。人々は逃げ惑う。


「あー」


 ふらふらと歩く。アシリアが立っていた場所で膝をつく。


「ああああああああああああっ..................!!!」


 絶叫と慟哭が木霊する。世界に静寂は戻らない。








 ステージの奥で出来事を見る影が二つ。人間の服を着た蜂女。昆蟲種(インセクター)蜂族(ビー)のワスピィ。彼女の毒針は刺された対象を意のままに操る能力がある。


『わタしの勝チ!』


 先に人間と接触を果たしたワスピィとマンテラー。ひと足さきに人間狩りを開始していた。ゲーム途中でマンテラーが消滅したのを肌感覚で理解した。所詮世界など、強い者が勝ち、弱者が淘汰される。マンテラーが亡くなってもワスピィの行動に支障はない。見つけた家畜(ニンゲン)。自分一人では何も出来ない気弱でバカな家畜(ニンゲン)。使えると思った。自分が直接手を下さなくても道具(ニンゲン)を使えば......自分が手に入れた力は使わない。己が初めから持つ能力だけで人間を、道具(ニンゲン)に変えた。後、少しの助言も与えた。


 人間を多く殺せば、悪魔と契約させてあげる、と———

 力が手に入る、と———

 もう、貴方をバカにする存在はいなくなる、と———


 調教は終わった。道具(ニンゲン)は使われる。使用者の目的の為に。

 人の命をなんとも思わない。自分が、自分の族が一番にすることしか考えていない。


「わタしの、道具(ニンゲン)。ヒトを狩レ!!」


 影は静かに消えた。


アシリア死亡はアナウンスされている。なので、全プレイヤーに知れ渡ってる。


でも......? 何処かに......?


15.エリゴス→→契約済:昆蟲種(インセクター)蜂族(ビー)


次話、悪魔の囁き



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