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NPCがわたしを"推す"! VRMMO (あれ? 推してるのわたし!?)  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【2章:【 】】
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ご褒美のキス!

 未来予知があるのに、私の攻撃を回避行動ではなく、弾いた。自分(マンテラー)(ユミナ)の攻撃を弾くと能力が発動できる。


 1回弾いた分、数秒後の未来を先取り出来ると思う。で、これは仮説だけど、敵の攻撃を自分が弾いた手段、ストック可能かもしれない。理由はある。


 私との戦闘中に発動した未来予知。()()()()()()。恐らく私と戦う前、【断抹魔(だんまつま)】のPKプレイヤーと戦闘していたから、そこで少し()()行動を取って回数を得ている。


 先ほど、私の攻撃を()()()のは、ストック分が無くなったから補充した証拠。【殺戮刀(カーリー)】は、武器威力上昇とウィークポイントにヒットすれば、ダメージ量が増加し、【出血】の状態異常を付着させる効果。【殺戮妃(ドゥルガー)】はHP消費に応じて斬撃数が変わる。四方八方に斬撃を放てる効果。斬撃を受けた敵は【恐怖】の状態異常を付与させる効果もある。


 濃藍の矛(トライブ)で1回。鉄藍の刀(アイルタ)だと恐らく5回は弾いていた。合計6回の未来予知が可能になったか......マンテラーは。これを好機と呼ぶのか絶望と呼べるのかは私の心次第......ね。


 回避されるなら回避させればいい。自由に未来を変えれるなら変えさせる。永続ではないなら私に勝機がある。

 後はタイミングね。私がマンテラーの能力のカラクリを見破ったと勘付かれないように行動しないと......


「くっ......」


 私の視界を覆う怪人。跳躍し、一気に攻めてきた。鎌を横薙ぎに動かしていた。斬撃。濃藍の矛(トライブ)でギリギリ防いだ。成功はした。が、愉悦に浸っている場合でじゃない。右側から迫るカマキリのカマ。鉄藍の刀(アイルタ)で防御———!?


 鉄藍の刀(アイルタ)の刀身をすり抜ける。いや、鎌の軌道を少しズラしたんだ。


「刺サラナイ」


 自分の鎌。鋭利さはある。敵の腹部に深くグサリッと刺さっているはず。服の前で止まる。先に進まない。

 先端をせき止めている箇所。色が剥がれる。きらりと光沢のある銀色だった。自分の鎌では破砕できない。


「策は常に仕込んでる」


 マンテラーは後退する。後ろへ蹴り出し攻撃を回避していた。マンテラーがいた場所。振り下ろされた銀色の剛腕が触れた。力加減は調整されちる。船首の床が抜けることはなかった。


「っち」


 背中から伸ばした銀色の剛腕(【パンドラ】)を引っ込める。着地したマンテラー。すかさず私に向けて、前へ飛び出す。鎌を振りかぶった。


 金属音が響く。マンテラーの両腕を防いだのは大盾。【パンドラ】の扇形の盾。


 重い。全体重が乗った一撃。踏ん張っていた私の身体。圧力に耐えれなくなり、滑る。身体が崩れる。このままではマンテラーが上を支配する。転倒を避けるには背中に無数の【パンドラ】の手を生やした。


 盾にしようした分の【パンドラ】量以外全ての【パンドラ】を背中に集中させた。私の身体を、私にのしかかるマンテラーに押し潰されない様に【パンドラ】が耐えてくれる。左に持つ鉄藍の刀(アイルタ)を投げる。


 時間もない。いくら【パンドラ】でもこのままだと破壊されてしまう。そうなれば液体金属(【パンドラ】)量がゼロで星王の創造(ステラ)は使用できなくなる。チャージはタウロスに預けないといけない。


 投げられた鉄藍の刀(アイルタ)は宙で回転。主の元へ帰ることはなく、床に転がっていく。

 残った濃藍の矛(トライブ)濃藍の矛(トライブ)の持ち手に設置されている引鉄を引く。

 離れている鉄藍の刀(アイルタ)が自動的に稼働。濃藍の矛(トライブ)の方へ全速力で飛んでいく。


 マンテラーは攻撃をキャンセル。鉄藍の刀(アイルタ)はマンテラーを直撃出来ず、濃藍の矛(トライブ)と合体。私は重きがなくなり、体勢を整えた。液体金属(【パンドラ】)を全て引っ込めた。賊藍御前(ティア・マ・タル)を構える。


 マンテラーの鎌捌きを賊藍御前(ティア・マ・タル)でいなす。人声は辿々しいけど、戦闘能力は確か。賊藍御前(ティア・マ・タル)を大振りモーションを取る。遠心力が加わる。同時に鉄藍の刀(アイルタ)の柄のトリガーを引く。発射された濃藍の矛(トライブ)は大砲の如くマンテラーへ一直線。


 切り離された濃藍の矛(トライブ)鉄藍の刀(アイルタ)の動きに連動。空中で移動を繰り返す。通常の回避と未来予知による回避に明確な見分けが付かない。でも、予測不可能な賊藍御前(ティア・マ・タル)の飛び回る攻撃。数回は使用している。


 賊藍御前(ティア・マ・タル)を回し、横薙ぎを一振り。真横から弧を描いて飛来する鉄藍の刀(アイルタ)。マンテラーは鎌で防ぐしかなかった。強く打ち据え、凄まじい衝撃が襲った。


(あれはパリィ判定ではない!)


 鉄藍の刀(アイルタ)も攻撃を防いだと思うが、推し負けて足が少し後退していた。

 僅かな隙。【加速スキル】......【勝利翔(ニケ)】、【宵明星(イシュタル)】、【嫦娥(じょうが)】を発動。視認できない速度で走り続ける。マンテラーのカマは上へ広げられている。仰け反っている。胴体がガラ空き。左手で鉄藍の刀(アイルタ)を持つ。


「【血海(アナト)】」


 マンテラーの胴体が切り裂かれる。上から斜めへ深い切り傷。攻撃がヒットし、付属効果も発動。無数の血の矢が刺さる。

 食いしばった歯。荒い動き。点々と浮かぶ胴体。【血海(アナト)】の効果で血液エフェクトが刻まれている。

血海(アナト)】を解除。鉄藍の刀(アイルタ)濃藍の矛(トライブ)を構える。


「【海女神(テティス)】」


 無数の剣撃を四方八方から受けるマンテラー。攻撃を喰らい、激しく吹き飛ぶ。背中は船首のデッキの壁へもたれかかるように打ち付けられた。


 歩む。大ダメージを至近距離から受けた。速攻で立ち直す余力はない。


「キサマ、名ハ」


「ユミナよ!」


「ナカナカに 楽シメタ」


 亀裂が生じる。


「サラバだ」


 マンテラーの身体は砕け散る。カマキリの戦利品(ドロップ)が落ちた。


「ふぅ〜」


 突然の昆蟲種(インセクター)の襲来。船がリリクロス近辺にいたから発生したイベント。悪魔の能力を得たMob。未来予知能力なんて、熟練の戦闘経験者なら私は立ち向かうことが出来なかった。あ、でも......ヴァルゴも予測できるんだっけ。訓練で取り入れて貰おう。


昆蟲種(インセクター)か......」


「ユミナ......」


 振り返る。アシリアだった。


「アシリア!」


 私に抱きついてきた。少し気恥ずかしい。


「......ダメでした?」


「いや、全然!」


 アシリアがかかとを上げる。私の唇と、アシリアの唇が重なる。

 アシリアは笑顔で首を可愛く傾げながら言った。


「妻からのご褒美です!」


 無事に脅威から救えて良かった!!!


次話、注入された人を自分の意のままに操る。『力を与える代わりに人間を殺して♡』





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