ニンゲン ハッケン タタカエ
「お嬢様、行きます!」
私よりも先に行動を起こす。瞬く間に先制攻撃を仕掛けた。
「............弱い」
彼岸の星剣の一閃。薙ぎ払われる。10名のプレイヤーは切り裂かれた。上半身と下半身が分離。攻撃を交わす隙すら無かった。その場で消滅した。
剣の間合い外にいた魔法系プレイヤーたち。慌ててヴァルゴに魔法弾を発射。ヴァルゴは表情を変えず、回避行動を取ろうとしたが、中断。空へ跳んだ。
「『輝を射抜け、真なる青よ』」
先に発射された魔法弾を飲み込み、発動者を、周囲も巻き込む青々とした光を有する大質量の極大柱。
『輝を射抜け、真なる青よ』に当たったプレイヤーは全員、焼き尽くされた。
「せめて一言、掛けてください」
着地と同時に二人のプレイヤーを彼岸の星剣で、赫岸の星劍で切り裂く。一撃受けて全損。二振りの剣の能力でプレイヤーは血を奪われた。赤く禍々しく煌る。
「避ける、と確信してるから!」
「まったく貴女は......ふふん!」
彼岸の星剣を一人に投擲。胴体を刺されたまま倒れ込む。アバターが消滅する前に、駆ける。柄に足を置き、飛翔。左膝で一人は顔面を、右足で重なってる二人を飛び蹴りを喰らわせた。
赫岸の星劍も投げる。正確無比。4人まとめて胴体を刺される。追い討ちを掛けるように赫岸の星劍の柄を蹴る。深く抉るように刺さる大剣。反撃できず散る。
彼岸の星剣を回収。が、前に大柄の男。肉薄し、回し蹴りを入れた。吹っ飛んだ大柄のプレイヤーに下敷きになる複数のプレイヤー。全員大ダメージを受けた。彼岸の星剣と赫岸の星劍を取る。振り返る。ヴァルゴの目には一切の躊躇いも慈悲もないことを物語っていた。
「何故、普通の蹴りで......」
私なんて強化してもラッキー・アニモシティを蹴っても、倒れるの無理だったのに。訳が分からない。
「『ゼロ・グラビティ』」
船首全体が揺れる。地震を発生させる広範囲魔法。大勢のプレイヤーを捕捉。
「『ソーンウィップ』」
杖の先端から黒い茨が大量に放たれる。一直線に標的に向かう茨。ターゲットにされたプレイヤーは逃げるが視界を赤い薔薇が吹き荒れる。逃げる時間がなくなり、茨攻撃を喰らう。
「『ハイドロ・カノウン』」
高水圧の水流が撃ち出された。プレイヤーは一斉に激流に巻き込まれた。
「......お嬢様、私にも限度があるのですが」
ヴァルゴは剣を上の壁に刺して固定。ぶら下がった状態で水魔法『ハイドロ・カノウン』から難の逃れていた。
「ごめんね♡」
「許します!」
「ヴァルゴの担当分は?」
『ハイドロ・カノウン』に巻き込まれたのかな?
「全員排除しました。数を揃えても質が悪ければ、烏合の衆。血を奪えたのだけ収穫ですね」
「じゃあ、残るは」
「リーダーと数名くらいですね」
「それじゃあ、行きますか!」
「うわぁ! な、なんだよコイツ」
「「「あ、あああっ!!!!!!」」」
デッキと室内を結ぶ出入り口が騒がしい。闘争の音が上がる。何人かの声が一斉に聞こえなくなった。
私たちは出入り口に注目する。誰かの足音。一つだ。船内から塊が飛び込んできた。人間だったモノだ。
「この人......」
「先ほどのサタン、という旅人さんですね」
あっさり虐殺されたPKギルドのリーダー。でも、誰だ?
「ニンゲン、ヨワイ。コレホド、カ......」
人語に聞こえるが、言い慣れていない感じの発音だった。辿々しい声。
「カマキリよね」
船首に現れた人物は、昆虫は2足歩行している蟷螂だった。
あっさり死んだね、プレイヤーさん
ヴァルゴの言ったアイツとは...?
次話、昆虫怪人ナンバーワンは狩った人間数で決まる




